新開発の非加熱・非加圧濃縮膜システムをペプチスター社の原薬製造施設に導入
中分子医薬品原薬製造施設でGMP製造を見据えた新規膜システムを運用開始
2026-06-25T11:00:00
旭化成株式会社
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旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)は、非加熱・非加圧で液体を濃縮可能な新規膜システム(以下「本膜システム」)を開発し、このたび、医薬CDMOのペプチスター株式会社(以下「ペプチスター社」)のペプチド・核酸など中分子医薬品※1の原薬製造施設に導入しました。これにより、同施設においてGMP製造※2を見据えた製造スケールでの運用を開始したことをお知らせいたします。

本膜システムは、中分子医薬品の原薬を非加熱・非加圧で濃縮できます。既存の濃縮技術で課題となる熱変性や析出※3を抑制しつつ、精密に液組成をコントロールしながら高度濃縮が可能です。非加熱濃縮により、凍結乾燥工程時間やエネルギー負荷を低減します。また、シンプルな膜システムであるため、原薬の高い回収率も期待できます。

ペプチスター社のペプチド・核酸医薬品原薬製造施設に導入した非加熱・非加圧濃縮膜システム

近年、ペプチド医薬品や核酸医薬品などの中分子医薬品の需要が増加しており、それらを効率的に製造する技術が求められています。一方で、熱に弱い中分子医薬品に対応するため、その製造工程では多大な時間やエネルギーを要する凍結乾燥が用いられており、製造コストが高くなる課題があります。
凍結乾燥前に原料液を濃縮し、凍結乾燥工程に持ち込まれる液量を少なくすることで凍結乾燥工程の負荷を低減できますが、従来の減圧蒸留による濃縮では、加熱に伴う品質劣化や、濃縮中の組成変化による析出の懸念があります。加えて原料液中の水/溶媒の組成制御をすることは困難です。また、Tangential Flow Filtration(TFF)※4による濃縮では、加圧が必要であることから、ファウリング※5や漏れによる濃縮効率や回収率の低下リスクがあります。

こうした課題を解決するため、当社は、ウイルス除去膜や水処理膜などのサプライヤーとして蓄積してきた独自の中空糸膜技術を活かし、FO(Forward Osmosis:正浸透)膜およびMD(Membrane Distillation:膜蒸留)膜の開発を進めてきました※6
FO膜は浸透圧差※7を利用して原料液から水分を除去でき、MD膜は蒸気圧差※8を活用してアセトニトリルやアルコール、アンモニアなどの揮発性成分を室温以下で除去できます。例えば、FO膜を用いると、非加圧運転の特長が活きて核酸医薬品製造プロセスで使用されているTFFで達成できない高度濃縮が可能です。一方で、MD膜を用いると、核酸医薬品製造プロセスにおいて加水することなくアンモニアを除去し後工程に適した組成へと調整できます。
さらに、透過原理の異なるFO膜とMD膜を組み合わせたFO-MDシステムとすることで、ペプチド医薬品の製造プロセスにおける凍結乾燥工程へ持ち込まれるアセトニトリルやアルコールといった溶剤と水の組成制御と濃縮を同時に達成できます。

このたび当社は、FO-MDシステムをペプチスター社へ導入し、製造スケールでの運用を開始しました。本膜システムは最大100Lの原料液の非加熱濃縮に対応いたします。また、GMP基準に準拠した運用が可能な設計となっており、GMP運用開始に向けた準備を着実に進めてまいります。

非加熱・非加圧濃縮膜システムの概要図

本膜システムは数年以内の販売開始を目指しています。当社は、今後もGMP運用に準拠した膜システムの提供を進めるとともに、当社独自の中空糸膜技術を活かし、医薬品製造産業における課題解決に貢献してまいります。

  1. 中分子医薬品:低分子医薬品(一般的な化学合成薬)と抗体医薬品などの高分子医薬品の中間サイズにあたる医薬品群のこと。ペプチド医薬品や核酸医薬品などが代表例。低分子医薬品のように細胞内の標的にも作用し、化学合成可能であることに加え、抗体医薬品のような標的への高い特異性を有することから、次世代の医薬品として期待されている。
  2. GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造管理および品質管理の基準のこと。原材料の受け入れから出荷までの製造管理や品質管理の基準が定められている。
  3. 析出:溶液中の成分が溶けきれず、固体として出てくること(沈殿・結晶化など)
  4. Tangential Flow Filtration(TFF):液体を膜に沿って循環させ、膜を通過する成分と残る成分を分けて濃縮・精製するろ過技術
  5. ファウリング:膜の表面や内部に、原料液中の成分が付着・堆積し、膜の目詰まりや性能低下を引き起こす現象のこと。
  6. 関連リリース
    ・2018/11/30:「非加熱・非加圧で液体を高度濃縮できる新規の膜システムを開発」
    ・2023/12/13:「有機溶媒を非加熱・非加圧で脱水できる新規の脱水膜システムを開発
  7. 浸透圧差:溶液の組成によって決まる圧力(浸透圧)の差。浸透圧差があると、水は浸透圧の低い方から高い方へ、FO膜を透過して移動する。
  8. 蒸気圧差:物質が気体になろうとする性質を示す圧力(蒸気圧)の差。蒸気圧差があると、物質は蒸気圧の高い側から低い側へ、MD膜の細孔を蒸気として移動する。
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以上

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