100 Stories1950 憧れの日比谷

2018年、旭化成の本社が東京ミッドタウンの日比谷三井タワーに移転。それを記念して、旭化成を支えたOBが招待され、元副社長の都筑馨太(つづき けいた)が初めて日比谷に移転した時のことを回想した。

「昔、旭化成が日本橋から初めて日比谷に来て三信ビルに移転した時のことを思い出す。日比谷はパーッと明るくて憧れだったな。田舎会社が、一流の会社になった気がして本当に嬉しかった。それが今度はこんな立派なビルに入れるようになるまで成長したんだね。頑張ったもんだ」

三信ビルは、1929年に竣工、鉄骨鉄筋コンクリート造の地下2階、地上8階建で、2階から8階は事務所となっていた。大手芸能事務所の渡辺プロダクションも入居していたこともある。旭化成はその後1960年に日比谷三井ビルに移転している。日比谷地区の再開発により、2018年、隣接する両ビルはミッドタウン日比谷として生まれ変わった。

旭化成も半世紀前は決して一流企業と言えるほどの規模があったわけではない。今こそ、会社を愛する先達の挑戦の繰り返しがあって今があることを、再認識する時なのかもしれない。

都筑は、この時杖をつき一息には長い距離を歩くことが難しい体調の中、「それでもどうしても見ておきたい」と言って来社している。こういったOBの熱い想いに触れる機会は現役の社員にとっても貴重な体験となっただろう。

現役の社員達は次の100年を担う一員として、これまでOB達が築き上げてきたものを、さらに積み上げて次の世代へと繋いでいく。
(都筑さんは2021年5月17日にお亡くなりになりました。享年98才)

  • 「三信ビルディング」は、1929年の竣工時モダン都市を象徴する建物だった。