100 Stories2013 SL200プロジェクト—500億円超のコスト削減

旭化成グループは、2013年度に、今後の環境変化に備えた体質強化を進め、競争力のある収益基盤の構築を図ることを目的とした「SL200プロジェクト(Stream-line / Step to Launch<飛躍へのステップ>)」(以下SL200)をスタートさせた。

社長の藤原健嗣をプロジェクト長、取締役兼常務執行役員の小堀秀毅が推進責任者を務め、2013年4月にSL200プロジェクト推進室を設置。
事業会社および持株会社の各機能それぞれが事業軸(縦軸)・機能軸(横軸)の2軸でコスト削減を推進するもので、2015年度に2012年度比200億円のコスト削減することを目標とする一大全社プロジェクトであった。

事業軸では、各事業会社が施策等を検討し、コスト削減目標額を設定。
削減の取り組みについては、事業にトップダウンで強要するのではなく、各事業会社の進捗状況を発表する場を設けるなどして、数字や取り組みを「見える化」することも行われた。取り組みへの意識を高めてもらうという目的で行われたが、ケミカルズなどでは、コストダウンができた部署を表彰するイベントを開催するなど、目標数字の達成に向けて積極的に取り組みを推進してくれる事業会社も現れた。

機能軸では、購買、エネルギーなど8つの機能部会を設置。
購買部会では、これまで手を付けられていなかった間接材(設備資材や原料等の直接材、人件費等を除いた、社外から調達しているあらゆるモノ・サービス)のコストダウンに取り組んだ。各部場が個別に購入し、価格や取引先がばらばらのモノ・サービスの調達に関して、「相場比較」のメスを入れつつ、仕様や調達手法を統一することで全社の「スケールメリット」を活かした。会計データを分析して社内ヒアリングを実施、間接材コストの見える化、削減案件の抽出・削減ポテンシャルの数値化をした結果、コピー費、印刷代、車両リース代、引越し代、事務所賃料、社外払いから業務内製化への切替え、などが取り組むべき優先事項としてピックアップされた。

エネルギー部会では、支社、製造所等で使用される電気、蒸気、原燃料のコストダウンに需要と供給の両面から取り組んだ。需要面では使用量の「見える化」を進めることで削減を推進し、供給面では原燃料購入費や用役の効率化による設備費用削減等を実施した。

機能部会では、特に間接材とエネルギーのコスト削減が進み、効果的であった。当時はコピー機などの調達は拠点ごとに判断を任せている状態だったが、SL200を経て取りまとめた結果、コピー費用を従来の1/3以下に低減することに成功した。また、事業会社毎のカラーコピーや片面印刷の比率などを横並びで示すことで、比率の高い事業会社のコスト意識を喚起させる取り組みも行った。

各事業会社、IT、経理、人事、総務などが連携した、事業軸と機能軸の双方による自主的で懸命な取り組みは実を結び、SL200は当初の目標金額の200億円を大幅に超える約500億円の収益構造改善に成功することになる。

また、SL200が残した功績はコストダウンだけではない。社内の横のつながり、コネクトの活性化にも大いに貢献したといえる。定例会と会議後の懇親会の実施は、各事業の企画管理部長同士のコミュニケーション促進につながるよい機会になっていたようである。