100 Stories1935 昭和天皇 延岡ご視察の映像発見!

天皇陛下がご視察に来られた。1935年11月15日、陸軍特別大演習の帰途に延岡工場をご訪問されたのだ。

この記録は、50年の時を経て映像として発見され一般公開するなど注目を集めることになる。当時撮影された映像は、50年後の1986年に発見されるまで社内でもその存在に気づかれることなく時が流れていたのだ。

この貴重な映像の発見を知った地元の住民からは、公開の要望が殺到。検討の結果、延岡市の旭化成展示センターにて一般公開が決定した。

そのタイトルは「聖上陛下を迎え奉る〜旭ベンベルグ絹糸株式会社延岡工場」。16ミリフィルム一巻で上映時間は11分20秒だ。フィルムの原本は非常に貴重なものとなるので、公開用はビデオのダビングとした。

内容は三つに分かれており、最初の7分間は天皇陛下がベンベルグ工場をご視察されるシーンだ。雨の中にもかかわらず女子社員が正座して迎え入れ、社長の野口遵を筆頭とした会社幹部が整列してお迎えする様子が残されている。当時を知る社員は、この時を振り返ってこのように語っている。

「当日は雨で傘をさして工場正門前でお出迎えしました。お車で出入りされる陛下に最敬礼しながらチラッと拝謁したことを覚えています」

当時の天皇陛下のご様子が映っているだけでも大変貴重なフィルムだが、実は創業者の野口社長の姿も映っており、さらに貴重なものとなった。

第二部は、従業員の生活ぶりを3分20秒にわたって紹介した。完成後間もない女子宿舎「報徳寮」で、生花や裁縫、体操などに励む女子従業員の様子などが映し出され、当時の生活が垣間見える映像だった。

映像に映る若手社員も、一般公開された1986年には最も若くても70歳近くとなっていたが、観覧に来て青春時代を懐かしむ方も見受けられた。

最後は、当時人口5万人の新興都市であった延岡市の風景などが、約1分間映し出される。今山八幡祭での芸者をのせた神輿や山車を担いだ行列、市中の賑わいと往来の見物人などの様子が収められていた。

天皇陛下のご視察から50年後に、工場倉庫内で偶然発見された一巻のフィルム。スチール製のケースに入ったフィルムはほとんど無傷で、誰がどんな目的で撮影したかも不明だ。しかも、当時の天皇陛下のご様子が記録されているだけでなく、史料としても大変貴重なものであることは間違いないものであった。