100 Stories1947 社内報 受けつがれる旭化成スピリット

グーグルにツイッター、インスタグラム、フェイスブックなど、様々なデジタルサービスが隆盛を極める2020年代。2019年時点で、国民の89%がインターネットを利用しているという数値も出ている。

インターネットの登場により、遠隔地にいる人たちとのコミュニケーションも容易になった。コロナ禍でも出社をせずに事業がまわるのは、ZOOMやTeamsなどのデジタルツールの賜物だ。目の前にいない相手と顔をあわせてコミュニケーションがとれることは、遠隔地の人との関係性を構築するうえでも重要だ。

しかし、インターネット普及以前の時代においても、ビジネスにおいては、その場にいない人とのコミュニケーションは大事な要素だった。旭化成では、どのような手法で社員の結束を高めていたのだろうか。

その一つの要素として、旭化成では、社内報が戦後間もない頃から従業員のコミュニケーションツールとして大きな役割を果たしていた。事業が拡大するにつれて難しくなってくる経営陣との考えの共有や、職場の活性化など、社内報がもたらす効果は想像以上に大きかった。

旭化成の社内報の歴史は古い。延岡工場の復興半ばであった1947年1月に、従業員のための工場新聞として「延岡あさひ」が発刊。これが社内報第1号となった。

気になる中身は、工場長の挨拶に始まり、第3代社長となる濱田茂亨、さらには当時の宮崎県知事からの祝辞も掲載されるなど豪華なラインナップだった。その後「社報あさひ」と変えて全社新聞となり、1990年代終わりころまで発刊を続けていく。

また、現在の旭化成の基盤となった中期経営計画「ISHIN2000」の発表とともに、1999年から「社報あさひ」は「A-Spirit」にリニューアルされて現在まで途切れることなく情報を発信している。

これまでの社報あさひは「質の高い経営情報を極力多く伝達すること」を特徴として長年愛されてきた。しかし、世の中も大きな転換期を迎えた2000年という世紀をまたぐ節目に、歴史ある社内報の刷新を決意した。

これは新時代に向けた旭化成の決意表明でもあった。「A-Spirit」とはすなわち「旭化成魂」を意味している。今こそ旭化成魂を発揮すべき時であるとの意思表示だった。

リニューアルされたA-Spiritは、経営陣からの情報だけでなく双方向のコミュニケーションを目指すという、まさに新時代の考え方が取り入れられている。わかりにくい経営用語ではなく経営陣の肉声を引き出し、読者参加型企画で従業員側からのアプローチも可能になった。デザインも一新し、読みやすく、親しみやすい社内報への変革を遂げた。

そして2022年、様々な変遷を経て愛されてきた旭化成の社内報は、100周年を節目にさらなる進化を遂げ生まれ変わる。

より社員同士の絆を深めるため、従業員の想いにフォーカスしたドキュメンタリーの新企画に加え、即時性のあるリアルタイムな情報を扱うWEBサイトを新たに立ち上げて発信している。
始まりは延岡の工場新聞であった社内報だが、日本国内の社内コミュニケーション誌へ、またデジタルを活用して英語版の配信、中国国内SNS版なども発行され、今では世界で働く従業員の懸け橋になっている。

  • 延岡あさひ第1号(1947年1月1日)
  • A-Spirit第1号(1999年4月号)