100 Stories1999 次世代育成と企業の新たな形を提供した「出前授業」

旭化成では、社会貢献のテーマとして、「教育・次世代育成」をあげており、その活動のひとつとして、1999年より延岡地区の各工場拠点で地域の中学生に対して「出前授業」を行っている。これは従業員が先生となって、理科や化学の授業を行うものだ。

教育現場で叫ばれている「理科離れ」を解決するために、地域の教育委員会や学校と提携して行った。当時、企業の社会貢献活動としては先進的なものとして、日経新聞の記事にも取り上げられるなど各方面から大いに注目を集めた。

高評価を得た出前授業は、延岡を皮切りに守山、富士、東京、水島など各地で実施されることとなった。

富士市では、中学3年生を対象に職場体験学習が行われた。内容は「膜」の原理についての説明と実験。さらには「ホール素子」の原理を学んだ。中学生にとって難しい数式が出てくる課題だったが、実験になると専門の器具を使いこなし熱心にデータを取る姿が印象的だった。

水島製造所がある倉敷市では小学校6年生を対象に、環境をテーマとした出前授業を開催。この小学校は、太陽光発電やビオトープなどを持つ環境に配慮した小学校として倉敷市のモデル校にもなっている。この時は、温暖化をテーマにしたディスカッションや発泡スチロールを使用した実験などを製造所のグラウンドも提供して開校された。

こうして次々に活動を企画・実施していく中で、「教育・次世代育成」は、旭化成の社会貢献活動の最重要テーマの一つとなった。出前授業で培ったノウハウをもとに、日本化学工業協会の「夢・化学-21」への出展や、本社地区で開催する「オープン・オフィス・デイ」などでも実験教室を実施した。

旭化成では、出前授業に代表される「教育・次世代育成」に加え、「環境との共生」「文化・芸術・スポーツ振興」という3つを社会貢献活動のテーマとして掲げており、2020年度(2020.4~2021.3)の社会貢献活動費は11億4,300万円にのぼっている。

  • 延岡(2006年2月)
  • 富士(2007年11月)