100 Stories2009 セージの始まり 自動車内装材メーカー セージ社買収

自動車産業で頂点を目指す—。2018年7月20日の日本経済新聞にも大きく取り上げられた。

世界ラリー選手権に素材メーカーとして初のスポンサーとなり、グローバルで自動車産業に社名を認知させる。フロントガラスやコース中ののぼりなどで、旭化成のロゴを目にした人も多いはずだ。

自動車用シートファブリック市場でグローバルNo.1のシェアを持つ、アメリカのセージ社を買収。実はセージ社はスエード調人工皮革「ラムース」の販売先であった。

オートモーティブ事業では、セージ社の買収とラリーカーのスポンサーとを合わせて一気に攻勢を仕掛けた。

そのセージ社の買収会見で社長の小堀秀毅は「変化を待つのではなく変化を起こし、ビジネスチャンスとして取り込む」と、自動車業界が迎えている大きな変化を商機と捉えての積極攻勢であることを語っている。

自動車業界は「CASE:Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)」と略される新たなビジネスの奔流を形成し、100年に一度と言われる大きな転換期だった。

旭化成はそれを危機ではなく商機と捉え、2025年度の自動車関連売上高を2015年度比3倍の3,000億円にすると発表した。この計画の鍵を握るセージ社とはどんな企業なのだろうか。その始まりは2009年に遡る。

2009年、繊維メーカー、米ミリケン社(Milliken & Company)は、自動車事業をスピンオフすることになり、それがセージ社誕生のきっかけとなった。

ミリケン社は、1865年創業で、特殊化学品、床材、保護繊維材料、ヘルスケアなど幅広い分野で活躍する老舗メーカーだ。自動車部門をスピンオフしたマネジメントチームは、早速グローバルに拡大するための新しいビジョンを考えた。

新しいキャンペーン、新しいブランド名、新しいブランドイメージの作成に取り掛かり、自動車用インテリアファブリックの新会社では、より現代的で革新的なイメージを伝えるブランドを追求した。

そうして発表となったブランド名は「セージ・オートモーティブ・インテリアーズ(Sage Automotive Interiors)」。ギリシャ語で知恵を意味する社名「セージ」は、顧客の問題に対するアドバイス力を、またコーポレートカラーに採用した緑は持続可能性の推進力を表している。

発表後すぐにPR展開に取り組んだセージ社は、瞬く間に業界を席巻。設立時には無名であったが、たった10年足らずで自動車内装材の世界一にまで躍進した。

それまで旭化成はセージ社に対し「ラムース」を供給する立場であったが、買収を機に自動車資材のデザインから製造まで行えるようになり、完成車メーカーとの関係もより深まる見通しだ。

「川上から川中に入っていきたい」と小堀が語ったように、旭化成は自動車産業の真ん中に大きく足を踏み入れた。今後もセージ社と力を合わせ、邁進していく。

http://www.sageautomotiveinteriors.jpn.com/locations