100 Stories2015 インド市場を拡大 ダラミック社グジャラート工場

「インドでのビジネスは難しい」こんな言葉が聞かれて久しいが、インド市場を拡大した旭化成事業がある。2015年に旭化成が買収したポリポア・インターナショナル社のセパレータ事業の一つである「ダラミック」だ。

旭化成はスマートフォンやタブレット向けの電池セパレータを展開しているが、自動車向けのセパレータに強いポリポア社を傘下に収めることにより市場拡大を狙った。ポリポア社のセパレータ事業では、リチウムイオン電池に使用する「セルガード」と鉛電池用の「ダラミック」の2つのブランドを展開。セルガードはアメリカと中国に拠点を持ち、ダラミックは欧米、中国、インド、タイに拠点を持つ。

ダラミックの市場拡大に向けて、中国やタイではなく、低コストかつ熟練の労働力が確保できるという利点からインドの製造工場設立を検討するが、懸念点も少なくない。インドは「ビジネスのしやすさ」という点において他国よりもポイントが低いとされていた。

それはインドの税制が国内で統一されておらず、州によって違うことや、産業構造が非効率的で家族経営が中心であることから文化慣習も地域ごとに異なるなど、日本人が容易に理解できない複雑な市場であることがその要因の一つだ。

また、中国では上海・北京・広州の3都市を足場に内陸に攻めるという定石があるが、インドは主要都市が広い国土に散らばっており、攻め手が見出しにくいという特徴もある。

こういった不利な条件にも関わらず、旭化成はインドの可能性を信じグジャラートに製造施設の設立を決断。インドが世界の売上高の約20%に貢献していることも決断を後押しした。

世間の見方からすれば逆張りともいえる決断の成否には大きな注目が集まったが、グジャラートはその期待に見事に応えてみせた。14ヶ月で販売可能な製品の生産を達成し、操業から6ヶ月以内に産業用と自動車用のセパレータプロファイルを安定させた。

その製造能力は着実に認められ、旭化成はインドの生産能力を倍増させるための資金を用意する。グジャラートはダラミックのグローバルチームによって開発された全ての新製品を生産する能力を備えたベンチマーク工場となった。

これにより、インドで本格的な操業を開始するさらなる機会がもたらされ、ついに2017年にインドで本格的な製造事業が開始された。2021年時点での計画では、東京ディズニーランド約141個分に相当する7,200万m2の量をインド市場に供給する計画が立てられている。

  • インドの西部に位置するグジャラート州