100 Stories2020 COVID-19 中国武漢でのいのちを救う取組み

2020年、世界中を未曽有の危機にさらしたCOVID-19。中国の旭化成現地法人にも、感染拡大の当初から仲間のため、会社のため、そして社会のために奮闘したメンバーがいた。

感染が急拡大した2月初め、武漢では、わずか14日間で感染者を隔離治療するための大型病院が建造され、世界でも大きなニュースとなった。実はこの病院に装備された血液浄化装置(急性腎不全などの治療にも使える装置)は、旭化成メディカルが中国政府から指定された緊急調達品だった。

政府から指定されるということはたいへん名誉なことであった。しかし、医療機器は納品するだけでは終わらない。現地に赴き設置と装置の使い方について指導を行う必要がある。当時はまだ罹患した場合の治療方法もはっきりしていない状況であったが、旭化成医療機器(杭州)の社員3名が、重症患者の治療に役立つのなら、と現地入りに手を挙げた。

旭化成医療機器(杭州)社長の芦立鉄郎と旭化成メディカル社長の住吉修吾は、医療機器メーカーとしての社会的、人道的責務を鑑み、熟慮を重ね、苦渋の決断で出張命令を出した。
武漢へは上海から車で10時間、3人は交替で休むことなく運転し現地を目指した。到着後、3人は状況がめまぐるしく変化する中、代理店や病院のスタッフと協力しながら、短期間で装置を設置し、病院スタッフへの教育を行った。

メンバーのひとりは、「感染拡大地域で自分にできることをして力になりたいという気持ちが強かった。しかし家族に心配をかけないよう、出発するときは親には言わず、武漢到着後に知らせた」という。最終的には両親も理解を示し、応援してくれたという。完了後は直ちに上海へ車で戻り、そのまま政府指定のホテルで2週間の隔離期間を過ごした。

医療機器(杭州)だけでなく、中国の各社でも地域や医療機関へのマスクの寄贈や赤十字への義援金の寄付、また従業員向けにはリモートワーク対応への環境・インフラ整備など、地域社会と共生できる活動を実施している。2022年5月現在、上海では1か月以上ロックダウンが続き、COVID-19の封じ込めに向けた規制措置が再び強化されている。

  • 装置の仕様説明を行う旭化成医療機器のスタッフ