100 Stories2018 住宅事業の海外展開とエリクソン社買収

旭化成ホームズの海外事業展開の中心的役割を果たしたのがエリクソン社買収だ。2017年にオーストラリアの住宅会社マクドナルド・ジョーンズ社と資本提携し、ホームズの特徴や強みを活かした事業をさらに推進するために、北米での展開を目的にエリクソン社の買収にも乗り出した。

1975年に設立されたエリクソン社は、アメリカにおいて木造戸建住宅の壁や屋根をパネル化し、製造・販売・施工する部材サプライヤーである。戸建てビルダーへの供給を年間3,000棟相当以上行う企業だった。

アメリカの住宅建築においては、現場で木材を組み立てることが多く、工場で作り現場で組み立てるという工業化、つまりプレハブ化が進んでいなかった。プレハブ住宅で培った工業化ノウハウにより、コストダウンと製造力・施工力の強化が実現可能と考えての進出である。

エリクソン社は、ホームズの日本での業界革新の実績と、職場の安全性を優先した企業であること、コミュニティや従業員への配慮を重視していることなどから買収を歓迎、2018年11月に買収を完了した。アメリカで強力な建設システムを構築し、長らく変化のなかった業界に前向きな変化をもたらす方法について共通のビジョンを持っての合併となった。

慢性的な職人不足と資材価格の上昇による建設費の高騰によって、コスト削減と建築現場合理化のニーズが高まるばかりであったアメリカにおいて、旭化成の工業化のノウハウとエリクソン社の製造・施工のさらなる合理化の実現で、新たな価値の創出を狙う。

2020年には、北米で住宅事業を行うための持株会社であるシナゴス社を設立。シナゴス社は、戸建住宅の住宅用電気設備・基礎工事・空調設備工事を行うオースティン社の買収に伴い、増大する建設関連事業の監督及び管理をするために設立したものだ。

「シナゴス」とは、「一緒に働く」ことを意味するギリシア語が語源となっており旭化成の価値観を表している。さらに住宅用電気設備・基礎工事・空調設備工事を行うオースティン社を買収後、エリクソン社も統合するなどシナジーを追求し続けている。

これまで国内を中心とした事業を展開してきたホームズ。2017年のマクドナルド・ジョーンズ社買収を皮切りに海外事業に乗り出し、今までにない海外における合理化と質の高い建物の提供を目指している。旭化成の中・長期経営目標では2018年度の売上高6000億円から1兆円へと拡大させることとなり、旭化成ホームズとしては既存請負事業やストック事業とともに柱の一つとして海外事業を伸ばしていく計画だ。