100 Stories1984 旭化成の歴史を彩る紫綬褒章受章者たち

旭化成100年の歴史には、偉大な功績を遺した人物も多い。創業者の野口遵や中興の祖と呼ばれる宮崎輝に代表される著名人を多数輩出しているほか、近年では、旭日大綬章を与えられた山口信夫やノーベル賞を獲得した吉野彰など、日本のみならず世界からも評価をされている。

今回はその中でも、紫綬褒章受章者に焦点を当ててみたい。紫綬褒章は「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた者」が対象になっている。

旭化成は、数々のオリンピック代表選手を送り出すなど、スポーツ分野での実績は有名だ。しかし何より、科学技術分野での紫綬褒章の受賞は、メーカーとしてのプライドや実績がダイレクトに表彰されたものである。

実際に、これまで1984年の世古真臣の受賞を皮切りに、2020年永原肇まで8名が科学技術分野において紫綬褒章を受章している。

旭化成最初の受章者となった世古真臣は、副社長を務めていた1984年に受章。「イオン交換膜法食塩電解技術の開発」が受章理由となっている。これは人類を水銀公害・アスベスト公害から守る技術として、さらには省エネの観点からも大きな貢献を果たした技術だ。

1988年に、当時副社長の読谷山昭が2人目の快挙を達成した。「電解二量化によるアジポニトリルの製造方法の開発」など工場技術の研究開発の第一人者である。それに加えて、様々な技術分野で要職を務めるなど、広く発展に尽くした功績も評価されての受章だった。

2000年代になると受章ラッシュが始まる。2003年の柴﨑一郎の「高感度薄膜ホール素子の開発」、翌年には後にノーベル化学賞を受賞した吉野彰が「リチウムイオン二次電池の開発」で授与された。

さらに2006年に正本順三が「ポリアセタール樹脂の新製造法の開発」、2008年に福岡伸典が「CO2を原料とする非ホスゲン法ポリカーボネート製法の開発」で受章。

ポリカーボネートとは、携帯電話やカメラのボディー、自動車の素材としても使われている素材だ。福岡の開発により、地球温暖化の原因物質の一つであるCO2を原料の一つとし、猛毒であるホスゲンを使用しないで製造できるようになった。地球に優しいこの技術は、まさに世界中の人々の「いのちとくらし」に貢献するものだった。

2015年には、スマホの地図アプリ等に欠かせない「電子コンパス」を開発した山下昌哉が「電子コンパスとオフセット自動調整方法の開発」で受章。電子コンパスは旭化成を代表する技術の一つとして、世界トップシェアを維持し続けている。

そして2020年には永原肇が「ナイロン原料用シクロヘキセンの製造技術の開発」で受章。近年、環境・エネルギーの視点から自動車軽量化ニーズが高まり、ナイロンの世界市場が拡大している。その中で、省資源・省エネ・廃棄物ゼロを実現し、より安全でCO2排出量を30%削減できるこの技術が高く評価された。

紫綬褒章受章の歴史は、旭化成の開発の歴史ともいえるが、従業員の力を結集しての成果ともいえる。新しいことへの挑戦、これまでになかったものを生み出す開発など、「努力と知恵の結晶」が、紫綬褒章の受章にまでつながっている。

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