100 Stories2000 オタワ条約と対人地雷処理

「対人地雷の使用、貯蔵、生産並びに廃棄に関する条約」(オタワ条約)が1997年に結ばれた。2020年12月時点で世界164カ国が加盟している国際条約だ。

オタワ条約では、使用や生産、移譲など対人地雷に関するあらゆる行為が禁止され、また、地雷の除去や地雷の被害者の支援を進めることなどが決められている。条約が発効した1999年に世界で約1億6000万個あった対人地雷が、2017年には約5000万個まで減少。しかしアメリカ、ロシア、中国といった大国が不参加であることなど課題は少なくない。

条約に署名した日本は、保有する約100万個の対人地雷を4年以内に破棄する義務が生じた。このため防衛庁は、対人地雷の破壊・破棄作業の指名入札を行い、旭化成は日本油脂、日本工機とともに受注した。

化薬事業部は火薬の爆発力によって異なる金属を接合する「爆発圧着」の事業を手がけるなど、長年にわたる火薬類の製造・取扱技術が評価された形だ。この対人地雷の廃棄処理は国際的な平和活動であり、旭化成がこの一端を担うことは意義深い。

こうして開始される地雷の爆破処理に先立ち、2000年1月17日に「対人地雷廃棄の公開・説明」のセレモニーが、あいばの試験所に隣接する航空自衛隊饗庭野(あいばの)分屯基地(滋賀県新旭町)にて開催。約1000個の対人地雷を爆破処理する様子を会場に設置された大スクリーン2台にリアルタイム中継し、時の内閣総理大臣・小渕恵三氏が出席するなど、大々的なものであった。

これにより、旭化成の技術力と火薬事業部の安全・安心に対する考え方、また旭化成と防衛庁の情報公開の姿勢が高く評価された。

約3年の年月が経ち、いよいよ完了となる頃に「地雷廃棄完了セレモニー」が開催される。そこには小泉純一郎首相も参加し、大きな盛り上がりをみせた。

セレモニー後には、“地雷をなくそう”のスローガンのもと「全国子供サミット」が行われるなど、活動の輪は小・中学生にまで広がっている。この活動を通して大分工場長を勤めていた佐久間信彰は「今回の地雷破棄処理は、まさに人々の"いのち"と"くらし"に貢献するという企業理念を実践したことだと思います」と語っている。