100 Stories1974 韓国東西石油化学

「石油に頼るな。」という印象的なフレーズは、「昨日まで世界になかったものを。」のCMでアクリロニトリル(AN)が取り上げられた時のものだ。ANとは主にアクリル繊維や自動車・電気製品等の部品に使われる樹脂の原料である。

旭化成では1974年に、韓国の東西石油化学株式会社(東西石化)に資本参加したことで、韓国でのANの製造が実現した。その背景は、当時の韓国ではアクリル繊維の売れ行きが好調な反面、その原料となるANの供給が不安視されているところにあった。旭化成は以前から韓国の韓一合繊社とアクリル繊維で提携関係にあったことから、韓一合繊社とアメリカのスケーリー・オイル社との合弁会社だった東西石化に対し、スケーリー社の株式を譲受する形で資本参加し、韓国でのアクリル繊維の一環生産体制の確立、増産に協力することとなったのだ。

東西石化の李均鐵社長は、旭化成との歴史を振り返りこのように語っている。
「東西石化の歴史を旭化成との協力という観点から振り返れば、まず1972年の当社の第1AN工場の稼働開始時からです。旭化成からプロピレンを購入したことが始まりでした。1998年からは旭化成が100%株主となり、旭化成の一員として韓国国内販売体制からグローバル市場へ展開していくことになったのです」

これは2003年のAN40周年を祝したコメントの一部で、東西石化も翌年に35周年を控えている時のものだった。

そして東西石化の主力であるANの大きな転換点が2007年に訪れる。世界初のプロパンから直接ANを製造する技術「プロパン法アクリロニトリル」の実証および商業運転を東西石化で開始したのだ。旭化成グループとしても、中期経営計画「Growth Action-2010」においてANを戦略的大事業と位置づけ、需要拡大が見込まれるアジア市場を中心としたグローバル市場において積極的に拡大していく方針となった。

この東西石化では、2008年から地域貢献活動として「キムチ祭り(キムジャン)」を行っている。キムジャンは毎年11月下旬から12月上旬に東西石化の社員やその家族たち、ボランティアが協力してキムチを作り、地域の住民と分け合うものだ。

この日ばかりは毎年、年齢も役職も関係なく、皆が肩を並べボランティアと共にキムチと向き合う。その場にいる全員がまさに家族のようになる一体感は、この現場だけでしか味わえない特別な楽しみとなっており、昔を知らない世代にも地域との繋がりの大切さを伝える機会となっている。

  • キムチ祭り

2011年、東西石化は合成樹脂、合成繊維の原料として使用される世界最大規模のアクリロニトリルモノマー工場の増設に着手。これにあたり東西石化の許社長は「今回増設する工場が稼働する2013年には売上1兆ウォン時代を開き“規模の経済”実現により、一人当たりの生産性が世界最高のANリーディングカンパニーに生まれ変わるだろう」と述べた。

元社長の藤原健嗣(ふじわら たけつぐ)も「1998年に東西石化を旭化成が引き受けた後、困難を克服して成功企業となったことに感慨無量であり、AN第4工場は旭化成が世界市場に躍進拡張するにあたり、大きな役割を果たせるように惜しみなく支援する」と明らかにした。

2013年には、ANを製造するために副産物として得られるアセトニトリルの精製工場、2019年に第4工場、2020年には第3工場の能力を増強し、名実ともにAN事業の背骨となる生産拠点となっている。

  • 東西石化の第4工場