100 Stories2011 液状化被害を防ぐACCSパイル

2011年3月11日、東北地方を中心に関東地方まで広大なエリアで甚大な被害を及ぼした東日本大震災。地震による建物の倒壊などに加えて、津波などの二次被害によっても大きな傷痕を残した。

二次被害には、ライフライン分断、土砂崩れなど様々な種類があるが、この時大きな話題となったのが地盤の液状化だ。関東地方でも液状化が起きたが、京葉線新浦安駅付近をその被害から救ったのがACCSパイル*と呼ばれる旭化成の杭だった。

建材の杭事業は、1968年にAHSパイルを開発したことでスタートした。当時主流だったPCパイルより高強度であるなど品質の良さに加えて、好景気や公共事業の拡大もあり、急成長を遂げる。

しかし、AHSパイルの特製である許容荷重を上回るPCパイルが他社に開発されてしまい、杭事業の成長は一時的に停滞を見せた。そんな窮地を救ったのが、液状化にも強いACCSパイルだ。

強度が高いだけでなく生産工程の人員・コストが大幅にカットできるなど、生産プロセスの面でも優れた製品だ。業界最後発であった旭化成の杭事業が、シェアトップに上り詰める原動力となった。

そのACCSパイルが新浦安駅に打設されたのは1978年のことだった。当時建設中の上越新幹線と東北新幹線で使用してもらうための比較試験に合格していたが、国鉄のルールではまず在来線で使用することが義務付けられていた。そこで白羽の矢が立ったのが京葉線浦安付近の液状化地帯だ。

軟弱な地盤に必要な杭の長さが50メートル。杭打ち機械が多数配置されたと新聞にも取り上げられるほどの大工事になった。

それから30年以上の時を経て発生した東日本大震災。浦安付近の住宅はほぼ全て液状化被害を受けて傾き、酷い所では容易に歩くことさえできないほどだった。東京駅から20分という好立地で発展していた高級住宅街が見るも無残な状況になり、高騰していた地価も急降下した。そんな中でもACCSパイルを使用した京葉線の高架橋は全くの無被害で残った。

地震大国と言われる日本では、また大きな地震がいつ来るともわからない。「これまで起こらなかったから大丈夫だろう」という安易な発想は、東日本大震災(2011年3月11日)を経験した私たちにはもう通じない。災害に備え生きていくためには、技術の進歩は欠かせないものである。

*「ACCS」パイルは、Autoclaved Concrete Composite Steelパイルの頭文字による略称で、特殊膨張混和材を配合したコンクリートをオートクレーブ(高温高圧蒸気窯)養生することにより、外殻鋼管とコンクリートを完全に一体化させた複合パイル。AHS同様に、ACCSパイルも我が国第1号認定の高耐震鋼管コンクリートパイル。

  • ACCSパイル