100 Stories1960 「サランラップ」誕生!

「旭化成といえばサランラップ!」いつからかそんな言葉も耳にするようになった。市場規模500億円と言われる家庭用食品保存用ラップフィルム業界で50%近いシェアを誇る、言わずと知れた旭化成の看板商品だ。

1952年にアメリカで生産が開始されたサランラップは、元々は戦場で銃弾や火薬などを湿気から守るために開発されたものだった。戦後、ダウ・ケミカル社の技術者がピクニックに行った際にレタスを包んで持っていったことがきっかけで、食品の保湿・保管としての用途が注目された。その後に正式に食品用のラップとして販売されることとなり、技術者の妻である「サラ」と「アン」の名前にちなんで生まれた商品名がサランラップだ。

日本では旭化成とダウ・ケミカル社が提携し旭ダウ株式会社が設立され、1960年に販売が開始された。

今でこそ圧倒的なシェアを誇るサランラップだが、当時は苦戦を強いられていた。冷蔵庫が一般的になっていたアメリカでは、サランラップの用途や利便性への理解が早かった。しかし当時の日本では冷蔵庫の普及率は10%程度。「何に使うものなのかわからない」というのが大半の反応であった。

そこで、テレビCMや売り場でサランラップの用途や使い方を説明するところから開始。5年余りも地道な努力が続けられた。すると、徐々にその成果が出始める。追い風となったのは冷蔵庫の普及率で、当時50%近くになっていた。

地道な啓発活動も功を奏し、「ニオイ移りしない」「水分を逃さない」など、サランラップの特性が伝わり、売れ行きは右肩上がりに。この時期にはパッケージも黄色を採用している。メインカラーの黄色は、デザイン変更を繰り返しながらも、50年余り変わらないサランラップの定番カラーとなった。

さらに時代の流れはサランラップを後押しする。1970年代後半には電子レンジの普及が広がり、サランラップの需要が急拡大。新たな用途を得たサランラップは、急成長を遂げた。

2010年には発売50周年を記念して、大々的なプロモーションを開催した。このプロモーションに込めたのは、「これまでの感謝」と「未来へのメッセージ」だった。

「ピッとピッタリ、明日もおいしく」のキャッチコピーで、人気アイドルグループV6の岡田准一さんを起用した参加型キャンペーンや、年三回にわたる販促活動のほか、代理店向けの「サランラップ発売50周年感謝の会」を開催するなどの施策により、旭化成ホームプロダクツは過去最高売上、利益を更新した。

また、サランラップと親和性の高い「食」への取り組みの新プログラム「Farmingプロジェクト」を未来へのメッセージとして打ち出した。

サランラップが大切にしてきたのは、「食材の鮮度を守り、無駄なくおいしく食べること」だ。スクールファーミングのノウハウを提供し、野菜の魅力や性質を直に感じることで、「サランラップ」の理念も感じてもらえれば、という願いが込められていた。

50周年時には様々な取り組みを行った「サランラップ」だが、現在では60周年を超えて、今なお国民的商品として進化を続けている。「食材の鮮度を守り、無駄なくおいしく食べること」は、どんなに時代が変化しても変わらないテーマであり、発売当初からのサランラップ事業の変わることないテーマである。

URL(日本語ページのみ)
https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/saranwrap/

  • 1960年に発売された初代のサランラップ