100 Stories1976 大規模な都市再開発となったサンシティ

1976年、当時民間企業が行う最大規模の都市再開発となった「サンシティ」の販売が開始された。サンシティとは、住宅事業部が三井不動産と共同で、東京都板橋区にあった志村の技術研究所跡地を利用して開発を進めてきた大規模ニュータウンだ。

総事業費約400億円、約4年にわたって計画・販売が行われたこの街は、国内でほぼ前例のない23階建てという高層住宅でもあった。ビッグプロジェクトとなったサンシティは、その後の旭化成の都市開発事業の先駆けだった。

自然や広場を重視した街づくりとなっており、敷地内には小学校をはじめ、ショッピングセンターや銀行、スーパーマーケット、専門店、診療所、カルチャーセンターなどを設置。その敷地は約13万㎡の広さで、収容人数は5,800人に及ぶなど、文字通りニュータウンが形成されている。

都営地下鉄6号線(現・三田線)で日比谷まで約25分という好立地も合わさって、販売も順調に推移し抽選となる住戸もあった。旭化成社員も数十戸購入するなど、社内での評判も上々だった。

1976年から建設を進めていたサンシティは、順次販売・入居者の受け入れを行いながら1980年に全てが完成。同年9月9日に竣工式が行われた。

竣工式には、当時の旭化成社長の宮崎輝、副社長の高田哲男と都筑馨太、常務の山口信夫など経営陣が出席。三井不動産、三井建設、鹿島建設など、サンシティに関係した会社の幹部も出席するなど豪華なメンバーが顔を揃えた。

席上で宮崎は「各位のご協力によって完成したサンシティは、一民間企業の住宅事業として成功したにとどまらず、国の住宅政策にいささかでも貢献できたことを各位とともに喜びたい」と挨拶した。

都市部への人口集中による住宅需給のひっ迫と、それに伴う家賃高騰や土地不足から住居の遠隔化による通勤難など、高度経済成長を遂げる日本の住宅問題は山積状態であった。事業自体の成功とともに住宅問題にも貢献できたことに宮崎も満足感を表した形だ。

「優良な周辺環境」とお祭りやクラブ活動など「良好な住宅コミュニティ」、5万本に及ぶ植栽がされた「都内有数の豊かな緑」を特徴として形成されたサンシティは、現在も色あせることなく愛され続けている。

それを表しているのが、2013年の「第33回 緑の都市賞」内閣総理大臣賞受賞である。完成から30年以上が過ぎての受賞となった。

近年、都市再開発事業やマンション建て替え事業を全国で展開し、特にマンション建て替え事業では先駆け的なポジションを築いている。また、「グッドデザイン賞」を複数受賞するなど、サンシティから得た学びも多く含んでおり、その礎となっている。

  • 「サンシティ」(東京 板橋 1979年)