100 Stories1987 どこからでも切れるマジックカット

お弁当についてくる醤油やワサビなどの調味料袋にみられる「こちら側のどこからでも切れます」という表記。切り口を入れるのではなく、袋の端がどこからでも切れるようになっているものを「マジックカット」という。調味料だけでなく、詰め替え用のシャンプーなど、その用途は日常生活の様々なシーンで活躍している。

このマジックカットは、1962年に設立された旭化成ポリフレックス(現 旭化成パックス)が製造販売しており、同社はインスタントラーメンやお菓子などの包装材の製造や、サランラップの最終加工なども行っている。

後に大ヒット商品となるマジックカットを開発するきっかけは、社員の何気ない一言だった。出張帰りの新幹線の中で、おつまみパックの切り口が見つからず、「どこからでも簡単に破ける袋があればなぁ」と考えたことが、その始まりだ。

その開発は難航を極めた。袋に化学薬品を塗る案は食品にはNG、光線処理する案はコスト的に厳しい。端にたくさんの切り込みを入れる案は輸送中に破れてしまう恐れがあることで却下され、試行錯誤を繰り返す。

行き着いたのが切れ込みではなく「無数の小さな穴を開ける」ことだった。穴のサイズは1穴0.2~0.3ミリと、目で見ただけでは判別できないほど小さい。このオリジナルの発想がマジックカットの誕生につながった。1987年には特許を取得し、マジックカットは製品化された。

当時のポリフレックスの総務部長は、「今力を入れているのはマジックカットです。これは旭化成の開発技術とポリフレックスの製造技術の結晶ですよ」と社内報のインタビューで語っている。

しかし、製品化はしたものの認知が進まない状態が続き、自社だけでは限界がある。悩んだ末にライセンスを他社に出すように方針を転換する。

これが当たりに当たった。ライセンス契約をした企業は瞬く間に増加し、認知度は一気に高まっていく。特許取得後、10年余りが経過してのことだった。

現在、採用された商品は2000種類を超える。このうちの8~9割はライセンス商品だが、販売額は数百億円にものぼる大ヒットとなっている。

たとえばワサビの小袋の場合、1ミリ間隔にジグザグに穴があり、1辺に約50個×3列。これが表と裏あるので、ワサビの小袋1袋につき、全部で300個くらいの穴がある計算になる。

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