100 Stories1996 アメリカでのアサクリン事業

プラスチック成形機用洗浄剤「アサクリン」の販売を行う旭化成アサクリンアメリカ(AKAC)社は、1996年にサンプラステック社として設立された会社である。

「アサクリン」は、1990年の発売以来、成形機用洗浄剤(パージ剤)のパイオニアとして地位を確立し、今日では世界70か国以上の国と地域で販売、世界のトップブランドとなっている。

1990年代当時、日本国内では年間12億円程度の売り上げがあり、シェアはトップであった。アメリカでの輸出販売は、化学商社美浜の米国法人であるベレックス社が行っていたが、旭化成が営業権を取得。年商2億円程度に成長してきた事業に資源を投入し、2000年には5~6億円規模に拡大する計画を立てた。2002年には現地で委託生産を開始、2020年に旭化成アサクリンアメリカに社名変更している。

日本の「アサクリン」の研究開発部門と継続的に協力をして、業界でも大きな評価を得る製品としての地位を確立し、着実に地盤を固めてきた。

中でも大きな変革となったのは、2008年に起きたリーマンショックによる経済崩壊の時だった。自動車業界などは混乱状態ともいえる事態となっていたが、1人の従業員も解雇することなく、代わりに力強い回復を導くための成長に焦点を合わせた。

経営陣は早い段階で、成長加速するために押出成形およびブロー成形市場向けの製品ラインの増設の検討を開始、M&Aを模索するが、なかなか成功しなかった。

しかし諦めることなく迎えた2015年、ついに転機が訪れる。ノヴァケム社の買収に成功したのだ。これにより包括的な製品の提供が可能となり、製造プロセスや市場の両方において競合他社に対して優位性を持つこととなった。

さらにこれに満足することなく、プロセス、製品、サプライチェーンなどの調査、研究を進める。その一例として、旭化成のトップグレードの一つであるEXグレードの生産を日本からアメリカに移したことが挙げられる。大幅なコスト削減を実現し、サプライチェーンがより強固となってリードタイムが数ヶ月短縮されるなど大きな効果を発揮した。

その他にも、業界セグメントに基づく価格設定が、収益のカギを握っていることが判明、これを反映した価格設定戦略は、2020年のコロナウイルスによる厳しい状況下での収益性目標達成にも大きく貢献した。

世界中に大きな打撃を与えたコロナウイルスの猛威によって、AKACでもほとんどの顧客が3カ月もの間シャットダウンとなり、第一四半期の売上高はほぼ50%減少した。しかし市場の回復力と支出の抑制、信頼性の維持に焦点を当てることで徹底的に対策を講じ、2021年3月期には、利益目標を100%達成したのだった。

2008年のリーマンショック、2020年のコロナウイルスと2度にわたる未曾有の事態を乗り越えたAKAC。7年連続でプラスチックニュースの働きがいがある会社に選ばれ、2019年には1位を獲得するなど、業績だけでなく、「企業は人なり」を実践する会社となっている。

  • 「アサクリン」