社史編纂通信 vol.2 2019年7月20世紀にタイムスリップ、懐かしの製品たち

今回は、「昭和」の時代に活躍した製品をピックアップ!
80年史に掲載されている事業や製品のなかで、現在は事業を行っていない、または製造を中止した製品を取り上げます。

うまみ調味料「旭味」

「旭味」は1936(昭和11)年に発売したグルタミン酸ナトリウムのうまみ調味料です。グルタミン酸は昆布に含まれるうまみ成分で、1929年に鈴木商店(現、味の素株式会社)の「味の素」の特許が満了したために、化学・製薬メーカー各社で生産されるようになりました。当初、苛性ソーダの生産過程で副生される塩素を利用。その後、発酵法による生産に切り替えました。

1999年に食品事業(冷凍食品、調味料、ベーカリー、製パン原料など)および子会社(旭フーズなど8社)を日本たばこ産業に事業譲渡した際、調味料事業のひとつとして移管されました(現在は販売終了)。

  • 製造開発当初の「旭味」

アクリル繊維「カシミロン」

アクリル繊維はアクリロニトリルを主原材料にした合成繊維で、1959年(昭和34年)に生産・販売を開始。最高級毛織物である「カシミア」をヒントに、社内公募により「カシミロン」の名称(商標)が付けられました。原綿開発と品質改善などを重ね、1960年代半ば頃からニット製品、セーター、寝具類、ハマナカ手芸糸などの用途を中心に売り上げを伸ばしました。

旭化成で初めて製造の海外進出も行われ、1968年の台湾をはじめ、インドネシア、アイルランドなどに合弁会社を設立しましたが、1985年以降は価格競争が激化したため再編を繰り返し、2002年にアクリル繊維事業から撤収しました。

  • カシミロン毛布と素材ラベル

お燗機能付きカップ酒「燗番娘」

「燗番娘」は1985年、東洋醸造株式会社(1992年に旭化成と統合)から発売された、お燗機能付きの清酒です。いつでもどこでも燗酒が飲めるということで、スポーツ観戦、釣り、お花見などで人気となりました。

発売当時は、缶の底にある穴にピンを差し込むと発熱が始まるという仕組みでしたが、その後底のボタンを押す方式に変更されました。2003年に清酒・合成清酒事業および当時子会社だった富久娘酒造株式会社を合同酒精株式会社(現オエノンホールディングス株式会社)へ譲渡した際に「燗番娘」も譲渡、その後も販売は継続されましたが、2011年、容器メーカーがこの缶の製造を中止したため販売も終了しました。

  • 「燗番娘」

磁気共鳴断層撮影装置「MR-CT(magnetic resonance-computer tomography)」

MR-CTは、イギリスのアバディーン大学と技術提携し開発した磁気共鳴断層撮影装置です。CT(放射線を利用したコンピュータ断層撮影)に比べ、脳腫瘍や筋肉の疾患の評価に有用とされ、1984(昭和59)年に「旭Mark-J」として開発に成功、1985年より厚木で本格生産を開始しました。

1988年に独シーメンス社の日本子会社に事業を譲渡、シーメンス旭メディック株式会社(旭化成の持株比率10%)を設立し、1997年には300億円を超える売り上げを達成しました。同社は、2010年に独シーメンスの100%子会社となり、現在はシーメンスヘルスケア株式会社として画像診断機器の事業を行っています。

正式な名称はNMR-CT(nuclear magnetic resonance-computer tomography)で、日本語で「核磁気共鳴CT検査」としていましたが、病院内で「核」という文字を使用することに抵抗があったことから、MR-CTとなりました。現在ではMRI(magnetic resonance imaging)と一般的に呼ばれています。

  • MR-CT「旭Mark-J」