プレスリリース
二世帯住宅研究所 調査報告
30年暮らした家族による二世帯住宅の評価と継承の実態
~二世帯同居でよかったこと1位は「親の老後の世話」、 孫による住まい継承は5割に達すると予測~
2015年5月26日
旭化成ホームズ株式会社
旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:池田 英輔)の二世帯住宅研究所は、自社が供給した築30年前後の二世帯住宅を対象に調査を行い、その結果を「30年暮らした家族による二世帯住宅の評価と住まい継承の実態」として報告書にまとめましたのでお知らせいたします。
本調査は、築30年前後を経た二世帯住宅の約半数で親世帯(建設当時)が逝去するなど世代交代期を迎えていることから、親世帯の介護を経験した子世帯および祖父母同居で育った孫から見た二世帯住宅の評価や、住まい継承の実態を明らかにしています。
具体的には、子世帯による二世帯同居の総合満足度は90%以上と評価が高いこと、親世帯がともに逝去された子世帯の76%が親の介護を経験していること、二世帯同居でよかったことの1位に「親の老後の世話」が挙がるなど、多くの方が介護において二世帯住宅で何らかのメリットがあったことのほか、祖父母同居で育った孫自身も同居を高く評価したことなどをまとめています。建物評価では、全般的に水廻りを2つに分けたことに対する評価が高い一方、玄関に関しては1つであっても許容されやすいこと、建物分離度によって訪問介護の利用実態に差があることなど、30年の経験から学ぶべき興味深いデータが得られました。
また、親世帯がともに逝去した家族における既婚孫の住まい継承率は24%と非常に高く、その中でも兄弟姉妹など他の単身孫同居者がいない場合は、40%が住まいを継承していることがわかりました。さらに、現在子世帯と同居している単身孫の7割が今後の住まい継承意向を持つことを踏まえると、将来的には半数以上の二世帯住宅で孫による住まい継承が行われることが推測され、3世代で住むことができる二世帯住宅は孫世代に住み継がれ易い住宅であると考えることができます。
調査トピックス
- 世帯別に水廻りや玄関が2つある「二世帯住宅」という住まい方は、30年暮らした家族から高く評価されている。二世帯同居の総合満足度は9割超。よかったことの1位は「親の老後の世話」。
- キッチン/洗面台/洗濯機は、世帯別に計画することが望ましい。玄関は共用が許容されやすい。
- 二世帯同居の長期的メリットとして「介護」「子育て協力」とも評価。
- 訪問介護は建物がキッチンを共有する「融合型」だと利用されにくい。
- 親世帯逝去の二世帯住宅において、現在24%で孫世代へと住まい継がれて、将来的には半数以上になると予想される。
Ⅰ.調査の背景と目的
当社では、長男・長女の親子同居が当たり前という社会通念から、核家族化への流れが始まった40年前(1975年)に、「嫁・姑」問題に代表されるような、同居に伴う様々な課題を解決する新たな住まい方の提案として、「一つ屋根の下で暮らしを分ける」というコンセプトの「二世帯住宅」という商品を発売しました。その後、1980年には「二世帯住宅研究所」を設立し、3世代が暮らしを重ねることにより安心で豊かな生活を実現する住まい方として二世帯住宅の研究を継続的に行い、商品を上市してまいりました。
今回の調査の目的は、当社の二世帯住宅の認知度が高まり供給量が一定の量となった時期に建てられた築30年前後の二世帯住宅のストックが世代交代期を迎えていることに着目して、親世帯への介護経験や世代交代に伴う孫世代への住まい継承の実態などを明らかにすることで、当社の提案した「二世帯住宅」という住まい方の評価を行うことです。
「住まい方」に関する価値観が益々多様化するなか、核家族化や少子高齢化と相まって急速に進展する高齢単身世帯の増加などへの社会的対応が大きな課題となっています。当社では、今だからこそ、「二世帯住宅」という住まい方が、より注目されるべき重要な選択肢の1つであると考えています。今回の調査結果が、少しでも「二世帯住宅」という同居スタイルを選択する人の増加につながることを願っております。
Ⅱ.調査の概要
- 調査方法
- 郵送によるアンケートおよび訪問調査
- 実施期間
- 2014年11月
- 調査対象
- 築29~32年のヘーベルハウス二世帯住宅居住者
有効回答 建設時の子世帯:243件 建設時の孫:134件(単身・未婚者:109・既婚孫世帯:25)
Ⅲ.主な調査結果
1. 30年で生じた家族の変化
子世帯は建設当時の親世帯の平均年齢に、孫は当時の子世帯の平均年齢になっています。また、建設当時の二世帯同居人数は親世帯・子世帯(孫含む)合計で平均5.5人でしたが、30年を経て親世帯の5割が逝去したり、孫が独立するなどにより3.5人へと減少しました。一方で、孫が結婚し世帯を持って同居する「孫世帯継承」により、世代交代が進んでいる家族が既に全体の15%あり、親世帯が逝去した場合には24%で継承されていることがわかりました。また、晩婚化の影響から子世帯単独の世帯に30代の未婚孫がいる割合が比較的高いことや、孫世帯継承の中には、未婚の兄弟姉妹もともに暮らす「2.5世帯」の存在も明らかとなりました。(詳しくは報告書2章-2)
2. 30年暮らした子世帯による「二世帯住宅」の評価
- (1)「二世帯同居」に関する総評:9割が満足。よかったことの1位は「親の老後の世話」
“30年間を振り返っての二世帯同居の満足度合”は、建物分離度に関わらず高く、全体の『二世帯同居満足度』は91%でした。「同居は何かと安心」と考える人が96%にのぼるなど、同居の安心感に対する評価が影響していると推測されます。
二世帯同居でよかったことの1位は「親の老後の世話」であり、「安心して旅行や外出できる」「自分や家族の急病の時など心強い」が続きます。また、二世帯同居で配慮が必要なこととして、「ライフスタイルやプライバシーの尊重」や「生活空間の分離」が8割超と高く、改めて「空間や住まい方を分ける」ことの重要さが示されました。(詳細は3章2-1) - (2)「二世帯住宅」水廻り分離度の評価:玄関は共用でも許容され、洗濯機は許容されにくい傾向
子世帯と親世帯が最も交流していたころの二世帯の生活分離実態を聞いたところ、「すべて別でお隣さん感覚」と「すべて別だが交流が盛ん」など、多くは“二世帯の生活はすべて別”であったことがわかりました。
そのような生活における、水廻りの分離度の評価を詳細に把握するため、同居経験を踏まえての水廻りの数の希望と実際の建築時プランを確認した結果、キッチン・洗面で2つ設置の希望度が高いのはもちろん、「洗濯機」についても、1つで計画した方の約半数が「やはり2つ必要」と回答し、一方で、「玄関」については1つであっても許容されやすい傾向であるとわかりました。これらの結果は、30年の経験から学ぶ貴重なアドバイスであるといえます。(詳細は報告書3章1-1)
3. 二世帯住宅における、介護と子育て協力の実態と評価
- (1)「介護」の面での評価:親世帯の介護を経験した子世帯の98%が「二世帯同居にメリットがあった」
親世帯がともに逝去されている子世帯の76%は介護を経験していますが、そのうちの98%が介護にとって二世帯同居で何らかのメリットがあったと回答しています。その理由として「親の気配や様子が分かる(87%)」「すぐに親世帯に行ける(86%)」など、「二世帯住宅」で日常の生活は別々にしながらも、二世帯同居ならではの“距離”と“気配”が子世帯の介護にとって有効であることが分かりました。(詳しくは4章2-1) - (2)介護サービス利用と建物分離度の関係:「訪問介護」は建物が「融合二世帯」だと利用されにくい
介護時のサービス利用と建物分離度の相関を見ると、「デイサービス」は建物分離度に関わらず利用されている一方、「訪問介護」は「融合型(メインキッチンは1つで食事の空間を共有し、他方の世帯にサブキッチンを設けたプラン)」ではほとんど利用されていませんでした。これは、二世帯間で共用する空間が多くを占めるため、訪問介護者と家族が鉢合わせになる可能性が高く、訪問介護を受け入れづらいためと推察されます。介護サービスの利用を視野に入れると、建築時の建物分離度の選択は重要と考えられます。(詳しくは4章2-3) - (3)子育て面での評価:9割の孫が祖父母同居は「よかった」
娘夫婦同居では4割の親世帯が日常的に子育てを手伝っていましたが、具体的な交流としては「遊んでもらう」「誕生日のお祝いをする」などのほか、「食事の世話」「散歩や公園に出かける」まで多岐にわたっています。祖父母同居でよかった点では、子世帯・孫自身ともに「年配者と自然に話ができる」「高齢者に優しい子になる」など、主に情操教育の面が評価されました。また、子世帯の75%が「祖父母同居の孫へ与える悪い影響はなかった」と回答していますが、何より孫自身の祖父母同居に対する満足度が約9割であることから、改めて二世帯同居は子育ての面でも評価されたといえます。(詳しくは4章3-2)
4. 親世帯が逝去した家族における、住まいの孫世帯継承の実態と将来予想
- (1)孫世帯(既婚)継承の実態:孫世帯(既婚)の40%が同居を選択
親世帯が逝去した二世帯住宅において、結婚し世帯を持った孫(=孫世帯)が、同居し住まいを継承している割合を調査しました。その結果、24%もの孫世帯が同居していることがわかりました。特に、子世帯(自分の親)と同居している単身の兄弟姉妹がおらず同居しやすい状況にある既婚孫に限って見ると、実に40%にのぼります。つまり、二世帯住宅で育った孫が結婚し世帯を持った際、二世帯住宅の片世帯が空いていれば4割の人が同居しているという実態が明らかとなりました。また、そのような状況にある既婚孫が近居を選ぶ割合は、同居の半分程度(22%)にとどまっていることから、勤務地などの理由で遠居せざるをえない場合を除けば同居を選択することが多いと推察されます。
なお、今後同居を継続していきたいか、という問いに関しても、既に同居している孫世帯の約8割が継続を希望しており、孫世帯の継承意向の高さが確認出来ました。(詳しくは5章2-1) - (2)単身孫も高い住まい継承意向:7割が同居希望
単身孫(未婚)の将来的な住まい継承の意向を調査したところ、約7割と大変高いことがわかりました。その理由には「家や地域への愛着」が挙がり、利便性・経済性だけではない理由で、育った二世帯住宅への継承意向を持っていることが分かりました - (3)将来的な孫による住まい継承は5割に達すると予想
親世帯が逝去した二世帯住宅のうち、現状で孫世帯同居している数と、将来は同居したいと既に考えている子世帯の数を合わせると、約4割にのぼることが分かりました。さらに、将来の同居意向をまだ決めかねている子世帯の半数が今後同居志向すると仮定すれば、将来的な孫世帯による住まい継承は、5割程度まで達することが予想されます。前項でみたとおり、既に同居している孫世帯は今後も同居を希望していることや、未婚の単身孫も住まい継承の意向が高いことから推察すると、この予想は十分に現実的なものと考えます。(詳しくは5章3~5)
以上