労働安全衛生および健康経営

方針

企業の活動がグローバルに展開されるようになる一方、社会の構造は大きく変化しています。高齢化の進展や雇用や働き方における大きな変化などです。こうした変化の中では、従業員の一人ひとりが満足感を持って能力や可能性を最大限に発揮できるよう、安全で快適な職場環境を作る取り組みが必要です。
旭化成グループでは従業員をかけがえのない存在と考えており、職場や作業現場における安全衛生の維持管理について、「あらゆる事業活動において、健康、保安防災、労働安全衛生、品質保証および環境保全を、経営の最重要課題と認識し、開発から廃棄に至る製品ライフサイクルすべてにわたり配慮する」との会社方針のもと、労使協議会や安全衛生委員会を通じ労使が協働して、全社的な環境の整備に努めています。

労働災害防止活動

当社グループでは2020年度より、重篤労働災害の撲滅を図るため、「旭化成ライフセービング・アクション(LSA)」を定めて、グループ全体で展開を開始しました。守らないと命を失う恐れがある下記の4つの行動を「禁止行動」として制定し、事業活動のあらゆる局面で徹底して守ることを推進しています。

  • 可動部への近接作業の禁止 吊荷の下は立入禁止 安全帯なしでの高所作業は禁止 スピード違反禁止 運転中の携帯・スマホ禁止 シートベルト非着用での乗車禁止
    LSAの4つの禁止行動

また、従来の安全衛生活動※1にリスクアセスメント、PDCAマネジメントを導入した労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS※2)の運用により、労働災害防止活動を継続して推進しています。

  • ※1 従来の安全衛生活動 3S(整理・整頓・清掃)、HHK(ヒヤリ・ハット・気がかり)、危険予知、パトロール、事例検討等
  • ※2 OHSMS Occupational Health & Safety Management System

労働災害防止の進め方

1.潜在危険性の抽出

有効な労働災害防止対策を実施するには、職場の潜在危険性を漏れなく挙げることが必要です。そのためには、安全衛生活動に強制発想(トラブル想定)の視点を入れて、モノの不安全な状態(設備、有害物、騒音等物理的有害環境など)や人の不安全な作業行動、さらに、その組み合わせで発生する危険事象に対する災害想定を幅広く実施することが重要です。

2.リスク評価

抽出された職場の潜在危険性について、災害の重篤性と災害に遭遇する頻度との組み合わせから、リスク点数を算出し、優先順位を付けます。リスク点数の高い重大リスクから低減対策を実施します。

3.重大リスク低減対策

重大リスク低減対策としては、モノの不安全な状態を安全化する本質安全化(危険作業排除、自動化、トラブルゼロ化、安全な物質への転換など)と安全防護が極めて有効とされています。
当社グループでは特に重大な災害に至りやすい、機械への挟まれ・巻き込まれ型災害の対策として、機械設備等の本質安全化と安全防護(隔離と停止)による対策を重点的に推進しています。

モノの不安全な状態 人の不安全な行動 強制発想 トラブル想定 従来の安全活動 3S、HHK、危険予知、パトロール、事例検討等→潜在危険性の抽出(災害想定)→リスク評価(重篤性・頻度によるリスク算出と優先順位づけ)→重大リスク低減対策→本質安全化 安全防護→管理の手法 安全作業基準遵守活動労働災害防止の全体像

本質安全化・安全防護対策

安全対策構築の原則に則って、設備の新設・変更・既存設備見直し・事故発生時の対策等として本質安全化と安全防護による対策を推進しています。

安全作業基準遵守活動

当社グループでは、安全作業基準の遵守活動にて安全の確保に努めています。具体的には、日々の業務での安全作業基準遵守状況をチェックするなど、工夫して実行しています。また、設備等の改善が難しい作業に関しては、特別管理作業と位置づけて作業者の力量確保や計画に基づく事前許可など厳重な管理のもとに作業を行っています。

  • 安全作業基準個別作業ではなく類似した複数の作業に共通する基本的事項を定めた安全原則。例えば、機械への挟まれ・巻き込まれ防止対策として運転中の露出部には手を出さないなど

労働災害情報の共有と活用

労働災害が発生した事業所では原因究明と再発防止対策を行います。当社グループ内ではすべての労働災害情報をデータベース化して共有し、安全教育や事例検討、類似災害防止などに活用しています。

労働災害発生状況

2023年度は国内グループ従業員では20件の休業災害が発生しました。今後も重篤災害の発生を防止するためにライフセービング・アクションを軸に継続した安全衛生活動を進めていきます。

  • 休業災害20件 高温・低温の物との接触25% 転倒20% 墜落・転落20% 動作の反動・無理動作10% 有害物等との接触5% 挟まれ・巻き込まれ5% 破裂5% 交通事故(道路)5% 飛来・落下5%
    休業災害事故の型(2023年度 国内)
  • 休業災害173件 転倒31.8% 交通事故(道路)11.6% 動作の反動・無理動作10.4% 墜落・転落10.4% 高温・低温の物との接触9.8% 激突4.6% 機械挟まれ・巻き込まれ4.0% 有害物との接触4.0% 挟まれ・巻き込まれ2.9% 飛来・落下2.3% 交通事故(その他)1.2% その他の型2.9%  分類不能1.7% 火災・爆発1.2% 切れ・こすれ0.6% 激突され0.6%
    休業災害事故の型(2014~2023年度 国内)
  • 旭化成グループ ’14年度0.20、’15年度0.30、’16年度0.35、’17年度0.30、’18年度0.41、’19年度0.44、’20年度0.21、’21年度0.38、'22年度0.20、’23年度0.34 ※旭化成グループは年度 ※カバレッジ100%
    グループ休業度数率(%)※1
  • 旭化成グループ ’14年度0.005、’15年度0.005、’16年度0.024、’17年度0.005、’18年度0.008、’19年度0.074、’20年度0.006、’21年度0.133、’22年度0.016、’23年度0.003 ※旭化成グループは年度 ※2019年度は機械巻き込まれによる後遺症災害、2021年度は爆発に伴う死亡災害が各1件発生し、強度率が高くなった。※カバレッジ100%
    グループ強度率(%)※2
  • ※1 休業度数率 労働災害の発生率を表す安全指標の一つで、次の式で算出されます。[休業度数率=休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間]
    休業度数率0.1以下というのは、例えば、工場の従業員が100名であれば、50年間に1名しか休業災害を起こさないという、大変高い目標です。
  • ※2 強度率 労働災害の軽重を表す安全指標の一つで、次の式で算出されます。[強度率=労働損失日数÷延べ労働時間×1,000時間]

快適職場形成の改善活動

化学物質などの管理として、有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則・粉じん障害防止規則などが適用される単位作業場では、作業環境測定法に基づく測定を毎年実施しています。さらに、化学物質取り扱いにおけるリスクアセスメントも行い、化学物質に起因するリスクの把握と低減にも取り組んでいます。
2022年5月の労働安全衛生法令改正に伴い、化学物質に対しては事業者による自律的管理が要求されるなど大きな変化がありました。当社グループでも適切な対応を進めています。2023年度は、リスクアセスメント対象物製造事業場において選任が必要となった化学物質管理者を育成するための社内講習を開催し、グループ内で329名の化学物質管理者を育成しました。
また、騒音ならびに暑熱に関しては、作業環境測定データをベースに作業管理を行い、個人への負荷を下げる管理を実施しています。引き続き、設備改善対策や作業見直しなど快適な職場環境に向けた改善を進めています。

旭化成延岡支社の機械安全活動

1. 取り組みの背景

延岡支社では、「挟まれ・巻き込まれ労災の根絶」を目標に、10年以上にわたり内部監査や設備総点検、支社長指示など多くの取り組みを⾏ってきましたが、挟まれ・巻き込まれ労災を根絶することはできませんでした。

  • 活動 2012 内部監査:回転体技術基準に基づく点検(全工場) 2013 内部監査:自動化機械技術指針に基づく点検(全工場) 2014 全社機械リスクアセスメント導入 延岡支社『機械リスクアセスメント研修会』開催(2014年度~2017年度実施) 2015~2016 設備総点検(7工場) 2017 支社長指示:「挟まれ巻き込まれ災害の防止」対象:6工場、環安部長要請:「挟まれ巻き込まれ災害の防止」対象:上記以外の工場

2. 具体的な取り組み

あらためてこれまでの活動を見直し、加工組立系の6工場で2つの取り組みを開始しました。

  • 1)正しい機械リスクアセスメントができる人財育成のために4つの研修を創設
  • 2)既存設備の機械リスクアセスメント導入
    社内・社外専門家と連携
  • 機械安全を推進する人財の育成 4つの研修を創設 1.部課長層機械安全研修(機械安全を理解する) 2.機械安全キーマン研修(自工場の機械で機械RAが書けるようになる※機械RAに基づき、設備を改善する) 3.SSA資格取得(SSA受験、SSA基本コース、SSA受験対策講座) 4.機械安全実践研修※対象:工場長~オペレータ(機械安全モデル機を使って、①「危険源」を見つけられる②「機械安全指針類不適合箇所」を指摘できるようになる
    ※機械RA=機械リスクアセスメント

3. 機械安全キーマン研修

この研修の目的は、「研修のための研修ではなく、実際に生産に使用している設備で機械RAシートを完成させ、設備の実改善につなげるステップの一部とすること」です。対象者は、SSA資格保有者から選抜し、講師は外部の専門家にお願いしています。

  • 機械安全キーマン研修の様子
研修には、各工場のSSA資格保有者から設備の使い方や作業方法を熟知している製造課とその設備の仕様を熟知している設備技術課のメンバーをペアで選抜しています。
また、机上の研修ではなく、三現主義にもとづき、現場の設備を見ながら、機械安全専門家の講師が受講者を直接指導する形をとっていることが特徴です。実際の機械設備の機械リスクアセスメントを完成させる研修のため、研修期間は約5カ月間と長期になります。

4. 機械安全実践研修

この研修の目的は、「現場の設備で危険源を見つけられるようになること」と、「現場の設備の不適合を指摘できるようになること」です。対象者は、工場長を含む全階層の従業員です。
工場全体であるべき姿に向かっていくために、この研修が重要な役割を担っています。講師は、産機システム技術部を中心に、合計10名で行っています。
この研修の特徴は、実際に可動できる 「機械安全モデル機」を使った演習を⾏うことです。この設備は延岡支社の各工場にある生産設備の不適合箇所を取り込んで、産機システム技術部が設計しました。

  • 機械安全実践研修の様子
  • 機械安全モデル機

受講者は、危険箇所が満載のモデル機を使って演習を行い、研修で理解したことを現場に持ち帰って、改善に活用することができます。

5. 既存設備の機械安全活動の実績

キーマンにより同定された高リスク危険源は、各工場で作業性と安全性の両方を考えながら改善を進めています。
単に「カバーをつける」ということではなく、作業者全員が安全に作業するためにどうすれば良いかということを必死で考え、今までやっていた作業方法の変更にまで行きついた工場もあり、「機械安全が現場の作業者に受け入れられてきた」と考えています。

  • 改善前→改善後(作業性と安全性を両立させた改善)改善前→改善後(作業性を向上・安全性も向上)

6. 実績

人財育成

このような活動を通して延べ約3,000人の人財を育成しました。そのうち機械RAを書くことのできるキーマンは100名を超えました。

  • 延岡支社機械安全研修 延べ受講者数(累計) 機械安全キーマンは103名(1工場に約6名)
危険源同定

教育を受けた人財が正しく機械RAを行い、高リスク危険源を約1,500カ所同定しました。

  • 既存設備の高リスク危険源同定数推移 ※機会を触る/機械の近接作業は多くあったが、労働安全リスクアセスメントでは、2017年度まで高リスク作業として特定された作業はなかった。<参考>労働安全リスクアセスメントでは、高リスク作業をAランク及びBランクと表現している
設備改善

各工場では同定された危険源のリスク低減方策を進め、約63%の設備改善を完了しました。
ただ、改善の難易度が高く、安全装置をつけて本当に生産できるのか、苦労しながらテストを続けている工場もまだ多くあります。そのような設備は、技術が確立するまで、特別な管理を行いながら生産を続けています。

  • 対象設備種類数147種類 機械RA完了設備種類数、進捗率145種類99% 危険源同定RLⅤ156か所、RLⅣ1,379か所 リスク低減計画策定RLⅤ141か所、RLⅣ1,200か所、進捗率92% 設備改善完了RLⅤ118か所、RLⅣ845か所、進捗率63%

この活動は、2021年度から第2期として10工場で実施し、また2024年度から第3期として2工場へ拡大して、延岡支社一丸となって活動を推進しています。

7. 最後に

第1期工場の労災実績としては、2019年度までほぼ毎年挟まれ・巻き込まれ労災が発生していましたが、2020年度からは発生していません。しかし第2期工場は2022年度に機械RAを実施していない設備で後遺症労災が発生しており、まだリスクは残っています。これからも人財育成と「安全な設備作り」の両輪でこの活動を続けていきます。

  • 第1期工場 機械の挟まれ・巻き込まれ労災件数推移 第2期・第3期部場 機械に挟まれ・巻き込まれ労災件数推移

健康経営方針

企業価値を持続的に向上させていくには、「人財がすべて」であり、従業員が心身共に健康で活躍できる環境を、会社として整備することがますます重要になってきています。
そこで、当社グループでは、これまでの環境安全・品質保証活動における健康管理を発展させ、健康に関する取り組みを全社経営課題と位置づけ2020年10月には、グループの「健康経営宣言」を発表しました。そこで、同宣言において掲げた、「グループ健康経営ビジョン」に基づき、「健康経営」をさらに推進していきます。

今後は、健康経営の中期目標達成に向けた各施策のPDCAを実施する中で、最重要課題である「メンタルヘルス不調」の対策を一段と強化していきます。その中で、2022年より取締役の報酬制度の一つの指標として、「メンタルヘルス不調による休業者率」を採用しました。さらに健康経営を推進する上で解決したい経営上の課題に対して健康経営目標項目を設定し、健康経営施策の効果発現やパフォーマンス向上の実感を得ることによる心身の健康を追求します。さらに次のステップとしては、従業員が身体的、精神的、そして社会的にも良好で幸福な状態を目指す「Well-being経営」を推進していきます。

  • 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

【健康経営宣言】

旭化成グループは、私たちの強みである「多様性と変革力」を武器に「持続可能な社会」の実現に貢献し、「企業価値の持続的向上」を追求しています。この実現には、「人財」がすべてだと考えます。
従業員が心身共に健康で、皆が活躍できる環境を会社として整備することが今後、ますます重要になっていきます。これまで展開してきた健康保持・増進の取り組みをさらに発展させた「健康経営」を、「グループ健康経営ビジョン」を掲げて推進することを宣言します。

2020年10月 旭化成株式会社

【グループ健康経営ビジョン】

健康経営ビジョン

旭化成グループは、「一人ひとりの活躍・成長」と「グループの生産性向上・発展」を通じて、さらに「持続可能な社会」の実現に貢献します。そのため会社は、従業員と家族が心身共に健康で、従業員の働きがいと生きがいを高めていきます。

行動指針

  • 会社は、健康保険組合・労働組合と連携し、従業員一人ひとりへの継続的な支援のみならず、職場ごとの活動、旭化成グループ全体の環境整備や従業員を支える家族の健康保持・増進等、各種活動に取り組んでいきます。
  • また、一人ひとりが、それぞれの人生を豊かにするために、健康づくりの主体は自分自身であるという自覚をもつことも大事であり、そのための支援も実施します。

当面の目標(実現したいこと)と活動

人財の活躍・成長とグループ生産性向上・発展のため、当面は「①メンタルヘルス不調、②生活習慣病およびメタボリック症候群、③がん疾患、それぞれの減少」に加えて、従業員のワーク・エンゲージメントの向上に向けた各施策・活動と上記疾患の予防の基盤となる健康保持・増進に取り組んでいきます。

健康経営推進体制

2020年1月に健康経営推進室を設置し、2021年4月には国内9つの主要拠点の健康管理センターを本社の健康経営推進室の所属としました。これにより、健康に関わる業務の標準化、全体最適化、拠点間の連携の強化、グループ共通課題への迅速対応が可能となり、健康経営を一元的に推進する体制に移行しました。さらに、2022年4月からは、国内小規模事業所および関係会社においても、健康経営をスタートしました。

  • 社長、CHO、健康経営推進委員会/会議(全社方針、目標・KPIの決定/検討)、健康経営推進質(健康経営推進事務局、計画、実施・進捗管理)、各地区健康経営支援センター・健康管理室、健康経営関係者(環境安全関連部署、人事関連部署)、健康保険組合、労働組合
    健康経営推進体制

健康経営の目的

従業員とその家族の心身の健康保持・増進を基盤とし、「一人ひとりの活躍・成長」「働きがい・生きがい向上」「活気あふれる強い組織風土づくり」がシナジーを起こすことで、「従業員のWell-beingの実現」および「グループの生産性向上・発展」につなげ、“持続可能な社会への貢献” と “持続的な企業価値向上” の2つの「サステナビリティ」の好循環を実現することを目的としています。

  • 健康経営の全体像

健康経営戦略マップ

健康経営を推進する上で、解決したい経営上の課題に対して、健康経営の投資や施策により期待する効果や具体的な取り組みのつながりを把握し、健康経営を推進しています。これらの関係性を図解したものを整理しました。

健康経営目標(重点施策)

健康経営の目的達成のためには、「従業員の活躍・成長機会などの創出」「個人・組織活性化」が重要であると考えています。
「従業員の活躍・成長機会などの創出」のために、従業員の休業日数の削減を進めていきます。これに加えて、「個人・組織活性化」を進めていきます。
また、生産性向上の観点からプレゼンティーズムの多くを占めていると言われている「睡眠」の質・量の向上にも取り組みます。
このようなことから、当社グループでは、①従業員の活躍・成長機会などの創出(休業率の改善=メンタルヘルス不調、生活習慣病重症者、メタボリックシンドローム該当者、がん、喫煙への対策)、②個人・組織活性化(ワーク・エンゲージメントの向上)、③睡眠の質・量の向上を、主要な健康経営目標の項目に設定しました。

① 従業員の活躍・成長機会などの創出(休業率の改善)

項目 2019年度
実績
2020年度
実績
2021年度
実績
2022年度
実績
2023年度
実績
2024年度
目標※3
メンタルヘルス不調による休業者率(%)※1 0.91 0.98 1.00 1.07 1.16 0.64
生活習慣病重症者率(%)※2 11.0 11.0 10.7 10.7 9.9 7.7
メタボリックシンドローム該当者率(%) 11.1 11.4 11.1 10.7 10.8 7.8
がん1件あたりの休業日数(日) 79.2 68.1 87.5 88.6 67.3 67.3
喫煙率(%) 25.8 24.7 23.5 22.5 21.8 15.5
  • ※1年度内で連続30日以上休業している人数の割合
  • ※2自社基準に基づき選定
  • ※32020年時点の中期目標値

② 個人・組織活性化(ワーク・エンゲージメントの向上)

従業員自身のストレス状況について気づきを促し、メンタルヘルス不調のリスクを低減させる一次予防を目的とし、当社グループでは毎年7月にストレスチェックを実施しています。さらに、各職場のワーク・エンゲージメント「熱意」・「没頭」・「活力」を詳細に分析して可視化することができる「KSA(活力と成長アセスメント)」を2020年度に導入しました。KSAは、①上司部下関係・職場環境、②活力、③成長につながる行動の3つの指標に沿って、各職場の状態を定量的に可視化するものです。
現在、各職場では「ストレスチェック」と「KSA」の分析結果を総合的に活用し、これまで各職場で実施してきたマネジメントなどの取り組みを「見える化」し、各職場の従業員同士が対話を行うなど、さらなるワーク・エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

③ 睡眠の質・量の向上

睡眠の質・量が、メンタルヘルス不調に続くプレゼンティーズムの大きな原因と考えられており、その改善のための施策を推進していきます。
具体的には、①睡眠の評価方法の確立、②十分に睡眠が取れていない従業員への対応方法の検討、③睡眠リテラシー向上に向けた教育研修を進めています。
また、「睡眠で休養が十分取れていない者の割合の低減」を、2022年度から健康経営目標における睡眠のKPIとして新たに設定しました。

項目 2019年度
実績
2020年度
実績
2021年度
実績
2022年度
実績
2023年度
実績
2024年度
目標
睡眠KPI(%) 32.4 28.5 27.2 28.0 28.5 22.7
  • 2020年時点の中期目標値

具体的な取り組み

メンタルヘルスケアの推進

当社グループでは「メンタルヘルスケア・ガイドライン」に基づき、メンタルヘルスの「4つのケア」を充実させることにより、メンタルヘルス不調による休業者率低減に取り組んでいます。

① セルフケア

ストレスやメンタルヘルス不調への対処方法などへの理解を促すため、メンタルヘルスに関する研修を実施・強化しています。自身のストレスやメンタルヘルス不調に早く気づき、自分自身で対処可能とするため、2023年より毎年メンタルヘルスセルフケア教育を、グループ全従業員3万人を対象に実施しています。

② ラインによるケア

ラインによるケアの一環として、ストレスチェックの組織分析の結果の活用や研修の実施など、職場環境の改善につなげています。鈴鹿地区では、15年以上前よりいきいき職場づくり活動を進めてきており、メンタルヘルス不調による休業者率が低下傾向にあります。また、水島地区にて、人事部門、産業保健スタッフ、労働組合とも連携しながら、ストレスチェック結果とKSA結果を総合活用したワークショップを2020年度から継続して実施しています。

③ 産業保健スタッフなどによるケア

ストレスチェックにて、個人のストレス調査を行い、産業保健スタッフによるフォローを行っています。
環境の変化があった後の生活や仕事への適応状況を確認し、不調の兆候がある従業員に対して早期に対応することで、重症化を予防することを目的に、「異動者等フォローアップ」を実施しています。
異動者等フォローアップは、異動者および新入社員に対し、アンケートや面談により本人の健康状態、新しい業務や生活環境への適応状況を確認し、早期に介入しています。また、必要に応じて結果を職場にフィードバックすることでメンタル疾患の発症を防ぐ職場づくり支援にもつなげています。

④ 専門機関によるケア

メンタル疾患により休業した人が、その後円滑に職場復帰できるように「リハビリ勤務制度」を設置する中でリワークプログラムも活用しています。さらに、外部講師による研修やカウンセリングの導入などの「専門機関によるケア」の活動も実施しています。

⑤ その他メンタルヘルス不調休業者の直接要因および背景事象の分析

メンタルヘルス不調による休業者数の低減を目的に、休業に至った原因を産業保健スタッフの視点で、面談結果から直接の要因や背景について寄与割合をもとに、その傾向や特徴を地区ごとに分析しています。また、各地区の結果を全社で集計し、職種や職階など多様な視点で分析し、全社で共有し、対策を講じています。

生活習慣病重症者、メタボリックシンドローム該当者への取り組み

当社グループでは、従業員の健康保持・増進のため、生活習慣病の予防および対策を推進しています。

① 特定保健指導とスリムアップ事業

当社グループは特定保健指導に関する全社方針として、受診できない事由がある場合を除き原則として受診することとし、就業時間内に受診することを可能としています。
また、従来は対象としていなかった従業員へ範囲を広げて行う「スリムアップチャレンジ」を実施し、早期から生活習慣病予防に役立てています。

② 運動機会の創出

製造拠点ごとに、ウォーキングイベントを開催するほか、体力測定会を毎年開催し経年変化を確認するイベントも実施しています。また、誰でもどこでも簡単にできるエクササイズ動画を社内向けウェブサイトに掲載し、従業員の運動のきっかけづくりにしています。

拠点ごとの運動習慣の定着に向けた取り組み

生活習慣病重症者、メタボリックシンドローム該当者の低減に向け、運動習慣の定着を目的として、製造拠点ごとに、ウォーキングイベントを開催するほか、体力測定会を開催しています。
ウォーキングアプリを活用し、在宅勤務下においても、参加者の行動変容・健康意識の向上、コミュニケーションの活性化を促しています。一部地区ではレクリエーションとして「謎とき健幸ウォーク」を開催し、製造所の柵内でクイズを探して歩くクイズラリーを同時に実施し、楽しみながら歩数を増やす企画を行っています。

運動習慣定着のためのエクササイズ動画の作成

自宅や自席などどこでも手軽に取り組むことのできる簡単なエクササイズ動画を作成し、社内ウェブサイトに掲載しています。
旭化成柔道部と事務所地区健康経営とが協力し、デスクワークが続く従業員のリフレッシュや運動習慣の定着を目的に、仕事の合間に取り組める簡単なストレッチ動画を作成しました。柔道部の身体のメンテナンスのプロが考案したメニューを短い動画に編集し、個人でも職場でも活用しています。

旭化成柔道部作成のストレッチ動画

③ 産業保健スタッフから、職場ごとに従業員の心身の状態を集団として可視化し、部場長に報告

当社グループの主要製造拠点である延岡地区・富士地区では、健康診断結果・生活習慣データ・傷病休業などのデータを部場ごとに解析し、産業保健スタッフから、集団としての解析結果を各職場の責任者に報告しています。これは、各職場の責任者が、自分の職場の従業員の心身の集団としての状態を、客観的に理解、課題を把握し、職場ごとの改善策を講じることを目的としています。

がんへの取り組み

① がんに対するリテラシー向上のための教育を実施

従業員のがんに対する正しい知識の習得を促し、がんの予防につながる生活習慣の改善や早期発見・早期治療のためのがん検診受診率向上を図るため、グループ全従業員を対象に、「がん予防と両立支援」に関する全社e-ラーニングを実施しました。
また、女性の健康施策として、がん研有明病院 婦人科医師に、「女性のがん」をテーマに講演いただき、動画は社内向けウェブサイトに掲載しています。

② がん検診受診勧奨

定期健康診断・人間ドックにおいて、がん検診を奨励し、費用補助をしています。そのほか、がんに罹患した際、治療を支援する制度や復職時に働きやすい社内制度があり、周知しています。

喫煙率低下への取り組み

喫煙者の禁煙をサポートするとともに、従業員の望まない受動喫煙を防止することを基本的な考え方として掲げ、「旭化成グループ禁煙方針」に則り2024年4月から就業時間内全面禁煙、そして2025年4月より敷地内全面禁煙および宴席中禁煙とする予定です。
喫煙者の禁煙をサポートすべく、従来、旭化成健康保険組合が企画・実施している「禁煙チャレンジ」に加え、会社としても「禁煙プログラム」の企画や禁煙セミナーの開催など、各種サポートを充実させていきます。

  • 宴席中禁煙会食場所を離れて喫煙後に戻ることを禁止すること。

睡眠プログラムの実施およびトライアル

睡眠の質・量が、メンタルヘルス不調に続くプレゼンティーズムの大きな原因と考えられているため、睡眠対策確立プロジェクトを数年前に立ち上げました。
結果として、健康経営目標におけるKPIである「睡眠で休養が十分取れていない者の割合」は改善傾向にあります。

睡眠対策確立プロジェクトでは2021年から睡眠改善プログラムのトライアルを実施し、その結果、参加者の80%の方に改善が認められたことから、3年間継続実施してきました。
東京や大阪のオフィスワークが多い事業所での効果検証が進み、対策が確立しつつあるため、今後は工場地区においても更に睡眠対策を強化していきます。
特に交代勤務者の睡眠対策を課題と捉え、2024年度中に交代勤務者向けに動画を作成し、研修のカリキュラムに導入することを予定しています。
これまでトライアルで実施してきた地区を広げ、睡眠アンケートを2025年度より全社展開できるよう、準備を進めています。

健康経営に関する教育

当社グループでは、従業員の健康経営のための知識・スキル習得を支援するために、各層の業務役割を踏まえたさまざまな教育を実施しています。

研修 形態 目的 2023年度
受講者数
階層別研修 新入社員研修 e-ラーニング
対面研修
社会人としての健康に関する基本的な考え方の理解、心身のセルフコンディショニングへの取り組み、有害物を取り扱う際の注意点、および必要な社内ルールなどの習得 203名
新任管理職研修 e-ラーニング 仕事と健康の基本的な考え方、健康管理における会社および従業員の責務 321名
新任経営管理職研修 e-ラーニング 健康管理業務のうち、現場管理に必要な有害業務・職業性疾病予防、当社グループの健康経営の全体像および健康経営の重要性の理解 316名
課長環境安全教育 オンライン 製造現場における有害物取扱業務のマネジメント 91名
テーマ別研修 e-ラーニング ・メンタルヘルスセルフケア
・がん予防と両立支援
・喫煙対策
27,597名(95.4%
27,336名(95.7%
24,839名(94.1%
  • 受講対象者のうち、受講者数の割合(%)

世界的な健康課題に対する取り組み

海外勤務者への健康管理の対応

当社グループでは、グローバル展開に伴い増加する海外勤務者の健康管理を強化しています。
赴任前には、赴任前健康診断、予防接種の実施、新型インフルエンザのパンデミックなどに備えてのタミフル(抗インフルエンザ薬)事前処方、赴任前健康教育を行い、赴任中も年1回の健康診断、そして帰任後には、勤務者に加え希望される帯同家族にも帰任後健康診断を行っています。
赴任中は、産業医によるウェブ面談を実施しています。また、国内同様にストレスチェックの実施に加え、勤務者には、「健康調査票」を用いて自覚症状や現地での生活習慣、心身の健康状態、ワクチン接種状況に関するアンケート調査を行い、調査結果および健診結果などをもとに、必要に応じてウェブを用いた産業医および保健師面談を実施しています。
また、長時間労働が疑われる海外勤務者に対しては、問診票の回答結果に応じてウェブを用いた産業医面談を実施しています。
さらに、海外勤務者には「健康便り FROM 東京」を定期的に配信しており、エリア別にまとめた「海外勤務者 健康診断結果および生活習慣問診結果」「健康情報」などの情報提供を行っています。その他にも健康の悩みや困りごとに対して、健康相談を行っています。

外部機関による活動の評価・顕彰

当社グループでは、グループの健康経営の取り組み状況を客観的に把握し、活動のさらなるレベルアップを図ることを目的に、以下の外部機関で評価いただきました。

健康経営優良法人2024(大規模法人部門)ホワイト500に認定

経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)ホワイト500」に認定されました。健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している法人等を顕彰するものです。

がんアライアワード2023でシルバー賞を受賞

がん患者が治療をしながら生き生きと働ける職場や社会を目指すため、がんを治療しながら働く「がんと就労」問題に取り組む民間プロジェクト「がんアライ部」が主催する「がんアライアワード2023」において、シルバーを受賞しました。

スポーツエールカンパニー2024に認定

スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2024」に認定されました。この制度は、「働き盛り世代」のスポーツ実施を促進し、スポーツに対する社会的機運の醸成を図ることを目的として、従業員の健康増進のためにスポーツ活動の促進に積極的に取り組みを行っている企業を認定するものです。当社は、エクササイズ動画の配信、運動施設の提供、各事業所のウォーキングイベントの開催が評価されました。

東京都スポーツ推進企業2023に認定

東京都より「東京都スポーツ推進企業」に認定されました。この制度は、従業員のスポーツ活動を推進する取り組みや、スポーツ分野における社会貢献活動を実施している企業等を認定するものです。当社グループは、製造拠点ごとにウォーキングイベントやセミナーを実施し従業員の健康意識を向上させていることが評価されました。