生物多様性保全

方針

旭化成グループは、事業活動において生物多様性に配慮し、生物多様性に及ぼす影響を軽減し、生物資源の持続可能な利用に努めることを方針とし、具体的な取り組みを「生物多様性保全に関するガイドライン」に定めています。このガイドラインに基づき、2010年度より事業活動と生物多様性との関わりの把握に取り組んでいます。また、生物多様性に配慮した事業活動を行うよう、環境安全教育等を通じて従業員の意識啓発を図っています。

「生物多様性のための30by30アライアンス」への参加

30by30目標達成に向け、企業の緑地等で保全されてきたエリアをOECMとして認定する取り組みを進めるため、有志の企業・自治体・団体の方々によって2022年4月に設立された「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加し、認定実証事業に取り組んでいます。

30by30アライアンス

調達における生物多様性の関わり調査

当社グループの原材料の新規利用および変更に伴う事業活動と生物多様性の関わりについて、「事業活動と生物多様性との関わり調査票」を用いて、「原材料の原産国」「加工・製造業者」「一次ベンダー(商社等)」の調査を行い、問題がないことを確認しています。

グループにおける生物多様性保全の取り組み

  • 旭化成グループ 「まちもり」アクション

「まちもり」アクションとは

「まちもり」ポットをツールとして、当社グループ全体の事業所緑地を対象に、いきものたちの視点で価値の向上を図るとともに、当社グループ従業員の生物多様性保全に対する理解と認識を高める取り組みです。

「まちもり」ポットとは

旭化成ホームズが開発した新しい外構アイテムで、高木・中木・低木・地被植物の高さの違う4層の植物を組み合わせ、都市の住宅地に設置できるコンパクトさを持ちながら、緑の少ない人工的な環境でもいきものたちの利用空間を増やすことができます。さらに「まちもり」アクションでは、全国の事業所において、植物社会学的手法による地域区分を行い、地域植生に配慮した「まちもり」植栽を行っています。

  • 鳥やチョウがやってくる! 高木:高さ2m×1本 開花や紅葉で四季を感じる! 中木:高さ1m×1本 低木:高さ0.5m×2本 草木:8株
  • まちもり地域区分凡例 えぞ・むつ地域 関東地方 沿岸北部 内陸部 沿岸南部 フォッサマグナ地域 内陸部 沿岸部 日本海地域 東北部 南西部 美濃・三河地域 阿哲地域 ソハヤキ地域 瀬戸内東部 瀬戸内西部 紀伊 四国 九州北部 九州南部 ●は事業所の所在地

「まちもり」アクション 第1期(2019~2021年度)の目標と2021年度の実績

第1期(2019~2021年度)の目標 2021年度の実績
目標Ⅰ 旭化成グループの41事業所のすべてに「まちもり」ポットを設置する 2020年度までに41すべての事業所に「まちもり」ポットを設置し、目標を達成した
目標Ⅱ この期間の「まちもり」ポイント(MMP)の累計を2,600MMPとする MMPの2021年度までの累計は、企画での投稿によるMMPを含めて3,747ポイントとなり目標を達成した
  • 「まちもり」ポイント(MMP)とは 各事業所での取り組みを4つのステージに区分し、各取り組みに対して「まちもり」ポイントを付与し、旭化成グループ全体で集約します。
  • 目標 2019年度 400MMP 2020年度 1,800MMP 2021年度 2,600MMP、企画累計 2019年度 1,090MMP  2020年度 2,465MMP  2021年度 3,747MMP
    「まちもり」ポイント累計
ステージ 取り組み内容(例)
Stage1:設置する
  • 「まちもり」ポットを設置
  • 「まちもり」ポットの説明を掲載
  • 適切に管理する(枯らさない)
Stage2:観察する
  • 幹の太さと樹高を記録
  • 花や果実、紅葉等を記録・撮影
  • 「まちもり」ポットに来た動物を記録・撮影
  • 自然に芽生えた草木を記録・撮影
Stage3:発信する
  • 事業所内外に対して、動植物の観察記録や写真等を積極的に情報発信
    (HP・掲示板、地域とのコミュニケーションetc.)
Stage4:発展する
他の場所への取り組み
  • 他の場所への取り組み拡大
  • 他の事業所内外のイベント等とのコラボレーション
  • (2020年度に続き、2021年度もコロナ禍でイベント自粛)

2021年度企画:「まちもり」植物ウォッチングの開催

2021年度もコロナ禍に伴う在宅勤務が継続していたことから、「まちもり」ポットの周辺に加えて、自宅の庭や近所の公園、道端など観察する場を拡大し、植物の観察を通して、身近な環境問題について考える目的で、期間限定の企画を開催しました。
今回の取り組みでは、7月15日~9月22日の夏季、9月23日~11月15日の秋季に分け、“在来種”と“外来種”を意識しながら観察することで、植物の多様さや身近な自然の状態を記録しました。
取り組みの結果、投稿167件(1,032MMP)、合計58科98属119種類の植物を確認し、内在来種86種類、外来種24種類となりました。専門家の方からは、こうした取り組みを全社で行うことは、企業内の環境意識の向上だけでなく、地域の自然環境の基礎情報を記録することにもなり、大変ユニークで優れた活動と評価をいただきました。

「まちもり」アクション表彰

2019~2021年度(第1期)における、「まちもり」アクションの各地区・工場の優れた取り組みに対し、表彰を行いました。
評価基準として、各地区・工場の取り組み内容を、「まちもり」ポイントとしてステージごとに集計し、通常の投稿および2020、2021年度の企画の投稿の中から特徴的な取り組みを評価し、表彰対象地区・工場を選定しました。
「まちもり」ポイントの得点の多さではなく、工夫した取り組み、発展性のある取り組みを抽出して評価し、表彰名も評価した点を反映した内容にしました。

【表彰対象地区・工場と評価した点】

大分工場
『地域賞』・・・「まちもり」ポットでの観察を中心に事業所全体や地域にも目を向けることでより本質的な取り組みにつながることが期待される
水島製造所
『協働賞』・・・環境担当だけではなく周囲の従業員とうまく協働することで、効果的に環境学習や普及啓発を行っている
パックス小野工場
『持続賞』・・・小規模な事業所ながら毎年コンスタントに観察・投稿を行っている
守山製造所
『発展賞』・・・工場増設に伴う緑化の際に「まちもり」ポットを新たに植栽することで、他の場所でも取り組みを発展させている
旭化成住工滋賀工場
『創意工夫賞』・・・各ステージで豊富なアイデアによって多様性な取り組みを実践することで、生物多様性に貢献している

「まちもり」緑化ガイドラインの制定

2018~2021年度における「まちもり」アクションの取り組み結果から得られた知見をもとに、生物多様性の保全に貢献する緑化をグループ全体で推進するために、「まちもり」緑化ガイドラインを2022年8月に制定しました。

2021年度各地区の主な取り組み

守山地区の取り組み
絶滅のおそれがある淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動・企業ならびに地域と協働でのトンボの保全活動

守山製造所は、地下水をくみ上げ工業用水として利用しています。設備の間接冷却水として利用した地下水は水質監視を行い、排水として周辺の河川に放流しています。守山製造所の放流水は、農業用水としても利用され、地域の農業や水辺のいきものに欠かせない水となっています。
このような背景を踏まえ、生物多様性と事業活動が深く関係している「水」をテーマにした生物多様性保全活動を2010年度から開始しました。
2015年度からは、絶滅のおそれがある淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動を、2016年度からは滋賀県に事業所を持つ企業や地域と協働でのトンボの保全活動を開始しました。2021年度は、守山製造所内のビオトープ「もりビオ」で保護増殖に取り組んでいるハリヨの生息状況調査を行い、100匹以上の個体が生息していることを確認しました。また、自然界への放流の検討を行うにあたり、滋賀県立琵琶湖博物館の学芸員と協働で滋賀県能登川でのハリヨ調査を実施しました。加えて、守山市金森自治会の湧水公園のハリヨの保全として、アメリカザリガニの駆除、ハリヨの保護増殖用の囲いの設置などを実施しました。今後も、地域と連携しハリヨの保護増殖に取り組みます。
滋賀県内に事業所を持つ企業と連携(生物多様性びわ湖ネットワーク)して取り組む「トンボ100大作戦~滋賀のトンボを救え!」では、地域との協働で湿地に生息するトンボ「マイコアカネ」の生息状況調査ならびにコンテナビオトープを用いた保全に取り組んでいます。2021年度は、もりビオにて繁殖・羽化したマイコアカネを初確認できました。また、もりビオのいきもの調査では、希少種であるヨツボシトンボ、タイコウチやイチョウウキゴケなども確認でき、もりビオが地域の生物多様性の保全に欠かせない場所であることを実感できました。今後も多様な主体と連携し生物多様性保全活動に取り組みます。

  • 「もりビオ」で繁殖・羽化したマイコアカネ
  • もりビオに生息しているいきもの図鑑

旭化成住工の取り組み
森と水をつなぐ東近江の暮らし再発見プロジェクト

旭化成住工滋賀工場では、周辺のトンボ調査の結果から、近年、生息環境が悪化し絶滅のおそれがある滋賀県レッドデータ・重要種であるヨツボシトンボを対象(推しトンボ)として、滋賀工場敷地内に創出した「湯屋のヘーベルビオトープ」を中心に保全活動を行っています。
2021年5月、近隣生息地のヨツボシトンボから採取した卵75個を工場内に設置したコンテナによる簡易ビオトープに移植した結果、1年後に約25匹の羽化を確認、これに自然羽化した成虫を含め羽化数は前年とほぼ同じ約100匹となりました。
羽化した成虫には腹部背面にマーキングを施した後、滋賀工場敷地内の「湯屋のヘーベルビオトープ」に放流。後日、マークありを含む約50匹のヨツボシトンボが湯屋のヘーベルビオトープに飛来し、繁殖活動を行っていることを確認したため、5年間でほぼビオトープにヨツボシトンボが定着したと判断しています。
また、2021年9月には、ビオトープで羽化したヨツボシトンボが一定期間滞在、定着するための植栽構築の基礎調査およびビオトープの植物の状況確認を目的として、ビオトープ周辺の実生(みしょう)調査を実施しました。2022年度はこれら実生植物の育苗を計画しています。

  • 滋賀工場に創出した「湯屋のヘーベルビオトープ」
  • “推しトンボ”のヨツボシトンボ

鈴鹿地区の取り組み

鈴鹿製造所内には製造所を南北に横切る19号河川があり、この河川へ各機器の冷却に利用した冷却水等を、水質を管理しながら放流しています。19号河川は川幅が狭いにもかかわらず、多種の水生生物が確認されています。河川で見られる特徴的な水生生物としてスッポン(写真は雨の日、上陸した姿)等のほか、一昨年までは確認できなかったナマズも昨年確認されました。また、体調2~3cmの小型の淡水生のカニも両岸の石堤の石の隙間に見ることができ、他の水生生物の存在からも食物連鎖の一翼を担っているものと思われます。
法定等の排水基準を遵守する目的はもちろんのこと、いろいろな種類の水生生物が住んでいるこの19号河川の水辺環境を維持するためにも、放流水の水質管理を確実に行うことが重要です。今後も、各製造課で水質管理を行うとともに、統合して河川に流すゲート付近の水質も管理するなど、これらの水生生物が安心して住めるように環境保全に取り組んでいきます。

延岡・日向地区の取り組み

延岡支社では、2007年から、宮崎県が推進する「企業の森づくり」制度を活用し、宮崎県日之影町で20ha、高千穂町で20ha、五ヶ瀬町で1ha、延岡市北方町で3haの計44ha余りの山林を、スギ・ヒノキなどの人工林から、広葉樹を主体とした自然林に戻す植樹活動を進めてきました。

2020年度からは日之影町より約5haのフィールドをご提供いただいていますが、コロナ禍の影響もあり開催を見送っていた植樹を、2022年度は3年ぶりに参加者を募って行うことができました。従来なら400名規模の参加者のもと実施するイベントですが、今年度は参加人数を約150名に制限した上で約1haの土地に1,500本の植樹を行いました。

  • 植樹の様子
  • 植樹後の記念撮影

旭化成ホームズの取り組みは以下を参照ください。