生物多様性保全
方針
旭化成グループは、事業活動において生物多様性に配慮し、生物多様性に及ぼす影響を軽減し、生物資源の持続可能な利用に努めることを方針とし、具体的な取り組みを「生物多様性保全に関するガイドライン」に定めています。このガイドラインに基づき、2010年度より事業活動と生物多様性との関わりの把握に取り組んでいます。また、生物多様性に配慮した事業活動を行うよう、レスポンシブル・ケア(RC)教育等を通じて従業員の意識啓発を図っています。
調達における生物多様性の関わり調査
当社グループの原材料の新規利用および変更に伴う事業活動と生物多様性の関わりについて、「事業活動と生物多様性との関わり調査票」を用いて、「原材料の原産国」「加工・製造業者」「一次ベンダー(商社等)」の調査を行い、問題がないことを確認しています。
グループにおける生物多様性保全の取り組み
「まちもり」アクションとは
「まちもり」ポットをツールとして、当社グループ全体の事業所緑地を対象に、いきものたちの視点で価値の向上を図るとともに、当社グループ従業員の生物多様性保全に対する理解と認識を高める取り組みです。
「まちもり」ポットとは
旭化成ホームズが開発した新しい外構アイテムで、高木・中木・低木・地被植物の高さの違う4層の植物を組み合わせ、都市の住宅地に設置できるコンパクトさを持ちながら、緑の少ない人工的な環境でもいきものたちの利用空間を増やすことができます。さらに「まちもり」アクションでは、全国の事業所において、植物社会学的手法による地域区分を行い、地域植生に配慮した「まちもり」植栽を行っています。
「まちもり」アクション 第1期(2019~2021年度)の目標と2020年度の実績
第1期(2019~2021年度)の目標 | 2020年度の実績 | |
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目標Ⅰ | 旭化成グループの41事業所のすべてに「まちもり」ポットを設置する | 2020年度までに41すべての事業所に「まちもり」ポットを設置し、目標を達成した |
目標Ⅱ | この期間の「まちもり」ポイント(MMP)の累計を2,600MMPとする | MMPの2020年度までの累計は1,934ポイントとなり目標を達成した |
- ※「まちもり」ポイント(MMP)とは 各事業所での取り組みを4つのステージに区分し、各取り組みに対して「まちもり」ポイントを付与し、旭化成グループ全体で集約します。
ステージ | 取り組み内容(例) |
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Stage1:設置する |
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Stage2:観察する |
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Stage3:発信する |
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Stage4:発展する 他の場所への取り組み |
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2020年度企画:「まちもり」赤とんぼウォッチングの開催
2020年度はコロナ禍で在宅勤務が増えたことから、「まちもり」ポットの観察に加えて、自宅周辺や公園等、観察する場を拡大し、テーマを設けて期間限定の企画を開催しました。
これまでの投稿で観察数の多かったいきものが「トンボ」、季節が「秋」ということで、テーマを「赤とんぼ」とし、見分け方もPRしながら実施しました。
9月15日から11月16日までの約 2 カ月間で 11事業所から合計 96 投稿をいただき、22 種類のトンボを確認しました。投稿の約7割が赤とんぼで、投稿数ランキング第1位はアキアカネでした。専門家の方からは、日本の赤とんぼ全21種の半数以上の11種類を観察したこと、また特に、近年減少が著しいと言われるマイコアカネやミヤマアカネ、ナツアカネなどの記録は、とても貴重な地域の生物情報になると、評価をいただきました。
「まちもり」アクションNEWSの発行
2020年度は、「まちもり」赤とんぼウォッチングの企画に合わせて、開催前に企画の趣旨、赤とんぼの見分け方、開催後に結果の解説と専門家からのコメント、トンボに関するコラム、事業所の取り組み等を記載し発行しました。
2020年度各地区の主な取り組み
守山地区の取り組み
絶滅のおそれがある淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動・企業ならびに地域と協働でのトンボの保全活動
守山製造所は、地下水をくみ上げ工業用水として利用しています。設備の間接冷却水として利用した地下水は水質監視を行い、排水として周辺の河川に放流しています。守山製造所の放流水は、農業用水としても利用され、地域の農業や水辺のいきものに欠かせない水となっています。
このような背景を踏まえ、生物多様性と事業活動が深く関係している「水」をテーマにした生物多様性保全活動を2010年度から開始しました。
2015年度からは、絶滅のおそれがある淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動を、2016年度からは滋賀県に事業所を持つ企業や地域と協働でのトンボの保全活動を開始しました。2020年度は、新しく設置したビオトープ「もりビオ」にハリヨ15匹を放流、専門家による調査で600匹余りまで増加したことを確認しました。
滋賀県内に事業所を持つ企業と連携(生物多様性びわ湖ネットワーク)して取り組む「トンボ100大作戦~滋賀のトンボを救え!」では、地域との協働で湿地に生息するトンボ「マイコアカネ」の生息状況調査ならびにコンテナビオトープを用いた保全に取り組んでいます。また、保全活動の一環として、トンボを含む多様ないきものが生息する河畔林でのトンボ観察会なども開催しています。これら一連のトンボの保全活動の取り組みが評価され、当社が参画する生物多様性びわ湖ネットワークが日本自然保護大賞(教育普及部門)を受賞しました。今後も多様な主体と連携し保全活動に取り組みます。
- 「もりビオ」での専門家によるハリヨ調査
- 近隣の河畔林でのトンボ観察会
旭化成住工の取り組み
森と水をつなぐ東近江の暮らし再発見プロジェクト
旭化成住工・滋賀工場が立地する東近江市湯屋地区には、かつてため池や水田、雑木林など多様な里山環境が分布する豊かな水辺生態系と、水利や防災などため池を中心とした暮らし・文化がありました。このため池の一部を復元することで地域に生息するいきものを保全し、観察会などで地域住民にその大切さを伝え、工場イベント等を通じて、地域資源としての森林や農作物などを守るためのつながりの場を提供しています。
2020年度はコロナ禍のため一般参加の観察会の開催などは見送りましたが、2017年に水辺生態系に生息するいきものの保全を目的として工場敷地内に創出した「湯屋のヘーベルビオトープ」を活用し、近年生息数が減少しているといわれる希少種・ヨツボシトンボの保護・増殖を専門家の指導のもとで実施しました。
近隣の生息地調査の結果から、ビオトープ・ため池をヨツボシトンボが好む抽水植物が繁茂する環境に改善した結果、自然飛来~繁殖行動につながり、5月上旬にはビオトープ・ため池でのヨツボシトンボの自然羽化を確認しました。また、これと並行して雌からの採卵~移植を行い、55匹の羽化も確認しています。
- 塚こし溜で羽化したヨツボシトンボ
- 環境改善型コンテナビオトープで羽化したヨツボシトンボ
鈴鹿地区の取り組み
鈴鹿製造所では工業用水は木曽川水系を水源とし各機器の冷却などに利用し、製造所内を南北に流れる小河川に放流しています。この小河川はいくつかの河川と合流し最終的には伊勢湾に流れ込んでいます。
この小河川の水辺生態系はオイカワ、ハヤなどの小魚、それを捕食するスッポンが生息し、さらにはゴイサギなどの鳥類も小魚を狙って訪れるという一連の食物連鎖系を形成しています。また、トンボも数種類観察されています。その中の一種、アオモンイトトンボは水生植物が多いところが生育に適するという報告もされています。
このようなさまざまな生物が生息する水辺環境を維持するため、当該小河川が本来有している生物の生息環境と治水機能を両立させることを心がけ河川管理を行っています。例えば護岸はコンクリート補修を行うのではなく、従来の石積みの状態を保持し河畔の植物を残し植生に配慮する、また流れはキクモなどの水生植物の生育などで、自然環境を活かした、水際の変化に富んだ(ゆっくりの所はゆっくり)流速が保持できるよう配慮する等の管理を心がけています。水質に関しては河川に流入する工場排水の水質管理を強化しています。今後も多くの水辺生物と共存できる環境維持に努めていきたいと考えています。
- 河川風景
- キクモ
- ハヤ
延岡・日向地区の取り組み
延岡支社では、2007年から、宮崎県が推進する「企業の森づくり」制度を活用し、宮崎県日之影町で20ha、と高千穂町で20ha、五ヶ瀬町で1ha、延岡市北方町で3haの計44ha余りの山林を、スギ・ヒノキなどの人工林から、広葉樹を主体とした自然林に戻す植樹活動を進めてきました。
2021年度は、日之影町様よりご提供いただいたフィールド(約5ha)のうち、2haに3,000本の植樹を行いました。本来なら毎回約400人規模の参加者を募って実施するイベントですが、新型コロナウイルス感染拡大防止対策に伴い、日之影町、西臼杵森林組合、OB会、組合延岡支部、事務局関係者(15名)で、記念樹など約100本の植樹を行い、残りの植樹は森林組合様に委託となりました。