生物多様性保全

方針

旭化成グループは事業活動において、生物多様性に及ぼす影響を軽減すること、自然資本の持続可能な利用に努めることを方針としています。これらは、「脱炭素社会への取り組み」、「循環型社会への取り組み」の観点からも重要な課題として認識しています。そこで、環境安全教育などを通じて従業員の意識啓発を図るほか、さまざまな取り組みを進めています。

生物多様性保全に関するガイドライン

当社グループでは、生物多様性の取り組みの方針となる「生物多様性保全に関するガイドライン」を定めています。事業活動と生物多様性との関係の把握やその対応、法令の遵守、地域との連携や敷地内の緑化、従業員への生物多様性の教育などの内容で構成されています。本ガイドラインの改訂を適宜行い、社会の要請を踏まえた取り組みを展開していきます。

「自然共生サイト」の認定

当社グループは、30by30※1目標達成に向け、企業の緑地などで保全されてきたエリアをOECM※2として認定する取り組みを進めるため、2022年4月に設立された「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しています。2023年度前期に静岡県富士市の「あさひ・いのちの森」が、2025年度前期に滋賀県守山市の「もりビオ」が「自然共生サイト」※3に認定されました。

30by30アライアンス

  • 自然共生サイトに認定された「もりビオ」
  • 「もりビオ」に生息するハリヨ
  • ※130by30
    2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、 2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標。
  • ※2OECM
    OECM(Other Effective area-based Conservation Measures):保護地域以外で生物多様性保全に資する地域
  • ※3自然共生サイト
    環境省が2023年より開始した「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境大臣が認定する制度で、2025年度までに全国で「あさひ・いのちの森」を含む569カ所が認定されました。

当社グループにおける生物多様性保全の取り組み

  • 旭化成グループ 「まちもり」アクション

「まちもり」アクションとは

「まちもり」ポットをツールとして、当社グループ全体の事業所緑地を対象に、生きものたちの視点で価値の向上を図るとともに、当社グループ従業員の生物多様性保全に対する理解と認識を高める取り組みです。

「まちもり」ポットとは

旭化成ホームズが開発した新しい外構アイテムで、高木・中木・低木・地被植物の高さの違う4層の植物を組み合わせ、都市の住宅地に設置できるコンパクトさを持ちながら、緑の少ない人工的な環境でも生きものたちの利用空間を増やすことができます。さらに「まちもり」アクションでは、全国の事業所において、植物社会学的手法による地域区分を行い、地域植生に配慮した「まちもり」植栽を行っています。

  • 「まちもり」ポットのモデルを示しています。高さ2mの高木1本、高さ1mの中木1本、高さ0.5mの低木2本、草本8株を組み合わせた植栽構成となっています。高木には実がなり、中木や低木には花が咲いており、「開花や紅葉で四季を感じる」「鳥やチョウがやってくる」といった効果を表しています。
  • まちもり地域区分と事業所の所在地を示した地図です。まもり地域を、「えぞ・むつ地域」「関東地方」「フォッサマグナ地域」「日本海地域」「美濃・三河地域」「阿哲地域」「ソハヤキ地域」に区分し、それぞれをさらに沿岸部や内陸部などの地域区分に分類しています。地図上には旭化成グループの事業所所在地を示す点を配置しており、関東地方、フォッサマグナ地域、日本海地域、阿哲地域、ソハヤキ地域に全国各地へ事業所が分布していることを示しています。
ステージ 取り組み内容(例)
Stage1:設置する
  • 「まちもり」ポットを設置
  • 「まちもり」ポットの説明を掲載
  • 適切に管理する(枯らさない)
Stage2:観察する
  • 幹の太さと樹高を記録
  • 花や果実、紅葉などを記録・撮影
  • 「まちもり」ポットに来た動物を記録・撮影
  • 自然に芽生えた草木を記録・撮影
Stage3:発信する
  • 事業所内外に対して、動植物の観察記録や写真などを積極的に情報発信
    (ウェブサイト・掲示板、地域とのコミュニケーションなど)
Stage4:発展する
他の場所への取り組み
  • 他の場所への取り組み拡大
  • 他の事業所内外のイベントなどとのコラボレーション

生物多様性保全に向けたモニタリングと継続的改善

旭化成グループでは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が推奨するLEAPアプローチを活用し、自然資本関連の分析を行っています。分析対象とした拠点の中で、富士地区、守山地区について、保全対象となる生物種や生態系のモニタリング項目を設定し、定期的なモニタリングを実施しています。モニタリング結果および活動状況は定期的にレビューし、必要に応じて保全施策の見直しを行っています。

富士地区での取り組み

  • ①モニタリング対象
    →植物・植生、鳥類、昆虫
  • ②モニタリングの実施方法や頻度
    【植物・植生】
    実施方法:毎木調査、種組成調査、導入種調査、伐採木調査など
    頻度:いずれかの項目を1カ月に1度
    【鳥類】
    実施方法:ラインセンサス法、任意観察
    頻度:5年に1度
    【昆虫】
    実施方法:任意採集、ピットフォールトラップ、ライトトラップ、ハチミツ・粉チーズを利用したベイトトラップ、土ふるい法
    頻度:5年に1度
  • ③モニタリング結果の反映
    →旭化成ホームズの外構手法「まちもり」の価値訴求に活用

2025年度各地区の主な取り組み

富士地区の取り組み
富士市およびステークホルダーと取り組む生物多様性保全活動

富士支社敷地内に設置されたビオトープ「あさひ・いのちの森」は、下記の活動が評価され、2025年3月、公益財団法人 都市緑化機構が運営する「緑の認定制度」において、SEGES そだてる緑「Superlative Stage」※に認定されました。「あさひ・いのちの森」生物多様性保全活動は、富士市をはじめとする地域のステークホルダーとともに活動しています。

※『SEGES(シージェス:社会・環境貢献緑地評価システム)』
企業などによって創出された良好な緑地と日頃の活動、取り組みを評価し、社会環境に貢献している、良好に維持されている緑地であると認定する制度。
『そだてる緑』『都市のオアシス』『つくる緑』という3つのシリーズから構成され、今回は企業が所有する緑地(300m²以上)の優良な保全・創出活動を認定する『そだてる緑』での認定となります。Superlative Stageは、『そだてる緑』に設定されている5段階の認定ラベルの最上位です。

  • ①「常葉大学との共同研究」
    森を活用した地域への環境貢献を目的として、旭化成ホームズと旭化成富士支社は、常葉大学とともに、富士地区周辺域の自然林および里山林の減少傾向にある種の保全や、富士市が天然記念物に指定する湿地「浮島ヶ原」の保全管理手法の検討に関する産学共同研究に取り組んでいます。
    ここで得られた知見をもとに、旭化成ホームズでは住宅の限られた敷地条件の中でも緑を最大限に生かし、中高木・低木・地被植物を織り交ぜた階層構造の植栽を配置する「まちもり」という植栽メソッドを展開しています。これにより、鳥をはじめとする多様な生物を呼び込み、住宅の緑を起点としたエコロジカルネットワークの形成に貢献しています。
  • ②「トノサマガエル保護活動」
    富士支社と富士市環境保全課の共同事業です。富士市では、トノサマガエルは絶滅の危機に瀕していますが、「あさひ・いのちの森田圃」にて、保護を行っています。毎春、田圃に産卵された卵塊を外敵に捕食される前に保護し、大切に飼育します。一方で市内の沼地「浮島ヶ原自然公園」で、富士市民エコ活動団体と一緒に放流場所を整備して、幼体の放流会を開催しました。この事業は、市民団体・企業および行政が協力し、富士市の生物多様性を守る一歩として、好評を得ました。
  • ③「生物のモニタリング研修」
    GIS(地理情報システム)を用いて生物種や数量を登録管理する方法があります。富士支社ではGISを積極的に取り入れ、富士市役所、大学、市民エコ活動団体を招集して、活用方法の研修会を行い、地域貢献活動を行いました。GISを利用する生物保護活動家に「企業が行う生物多様性保全活動」として、「あさひ・いのちの森」を認知いただきました。
  • ④「令和6年度 静岡県生物多様性セミナー(現地見学会)」
    静岡県が主催するOECMセミナーの見学コースに選定されました。
    企業・団体関係者を中心に30名以上が参加し、ビオトープの地域貢献活動利用の説明に関心を寄せられました。
  • ⑤「富士支社ホタルまつり」
    2009年から継続している地域貢献活動です。支社内で飼育したゲンジホタル幼虫を「あさひ・いのちの森の水路」に放流し、飛翔させます。2024年は従業員とその家族、富士市機関、招待企業の方々に限定していますが750名参加され、大いに賑わいました。
    • トノサマガエル放流説明
      トノサマガエル放流説明
    • GISの体験会
      GISの体験会

    守山地区の取り組み
    絶滅のおそれがある淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動、ならびに企業・地域との協働によるトンボの保全活動

    守山製造所では、地下水をくみ上げて工業用水として利用しています。設備の間接冷却水として利用した地下水は、水質を監視したうえで排水として周辺河川に放流しています。守山製造所からの放流水は、農業用水としても利用されており、地域の農業や水辺の生きものにとって欠かせない水となっています。このような背景を踏まえ、生物多様性と事業活動が深く関係する「水」をテーマにした生物多様性保全活動を2010年度から開始しました。
    2015年度からは絶滅のおそれがある淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動を、2016年度からは滋賀県に事業所を持つ企業や地域と協働でトンボの保全活動を、それぞれ開始しました。
    2025年度、守山製造所のビオトープ「もりビオ」は、環境省の「自然共生サイト」に認定されました。これは、もりビオにおけるハリヨの生息域外保全やトンボの保全、地域・企業との連携による継続的な生物多様性保全活動が評価されたものです。今回の認定を契機に、守山製造所では、もりビオを地域の自然と事業活動をつなぐ重要な拠点として位置づけ、今後も生物多様性の向上に取り組んでいきます。
    また、毎年恒例となっているビオトープ(もりビオ)での観察会を、従業員とその家族を対象に実施しました。観察会では、専門家のサポートのもと、ビオトープに生息するハリヨやトンボを観察するとともに、トンボのコンテナビオトープ作りを行いました。参加者は、身近な自然に触れながら、生きものの生息環境や生物多様性保全の大切さについて楽しく学ぶことができました。

    滋賀県内に事業所を持つ企業4社を中心として生物多様性保全に取り組む「生物多様性びわ湖ネットワーク(BBN)」では、地域と協働でトンボの生息状況調査や保全活動に取り組んでいます。また、各企業が「推しトンボ」を決めて保全活動を進めており、旭化成は湿地に生息するトンボ「マイコアカネ」を推しトンボとして、敷地内のビオトープで保全しています。2025年度は、守山製造所内でヤゴを確認した一方で成虫の確認には至りませんでした。そのため次年度の生息確認と定着に向けて、コンテナビオトープの環境をリセットし、マイコアカネの卵を放流するなど、継続的な保全活動を進めました。
    BBNでの活動では、定期的に開催している琵琶湖博物館での展示イベントに加え、大阪・関西万博にも出展し、多くの方々に活動をPRするとともに、生物多様性保全の重要性を伝えることができました。

    もりビオでは、ハリヨやトンボを中心に、ビオトープ内の水辺環境や、そこに生息・飛来する生きものの状況を継続的に観察しています。観察は、日常管理時の確認に加え、専門家や関係者の協力を得ながら季節ごとに実施し、生息状況や水辺環境の変化を把握しています。得られた結果は、ビオトープの環境管理や保全活動の見直し、観察会などの環境教育活動に反映し、活動の継続的な充実につなげています。 また、BBNでの活動以外にも守山市と連携し、近隣の地球市民の森でトンボの保全活動や観察会を実施しています。引き続き、もりビオでの保全活動やBBNでの活動を通じて、生物多様性保全に取り組んでいきます。

    • 「もりビオ」での観察会の様子
      「もりビオ」での観察会の様子
    • 大阪・関西万博(BBNメンバー)
      大阪・関西万博(BBNメンバー)

    鈴鹿地区の取り組み

    鈴鹿製造所内には製造所を南北に縦断する19号河川が流れており、ここへ製造ラインで利用した冷却水などを水質管理し放流し、伊勢湾に流れています。この19号河川は川幅が狭いものの、古くからある石畳の護岸を大切に守りながら、水生植物や生物が生息しやすい環境を保持しています。この石畳の周辺や隙間にはキクモなどの植物が生え、カニが生息し、河川水にはオイカワをはじめさまざまな小魚が泳いでおり、水辺にはトンボや蝶もやってきます。人が少ない早朝には鴨やゴイサギ、シラサギなどの鳥類が飛来し羽を休める姿も見られます。

    古くから生息しているスッポンも増えて5匹となっており、時折手足を大きく動かして泳ぐ姿が見られます。多様な生きものを見つけるたびに、多くの水生生物などが生息しているこの19号河川の水辺環境を維持することの大切さを実感します。

    今後も放流水の水質管理を継続して確実に行い、これらの水生生物が生息できる環境の保全に取り組んでいきます。

    • 19号河川のキクモの側を泳ぐ鴨たち
      19号河川のキクモの側を泳ぐ鴨たち
    • 19号河川を泳ぐ親スッポン
      19号河川を泳ぐ親スッポン

    延岡・日向地区の取り組み

    「あさひの森」は、宮崎県の「企業の森林づくり」制度を活用し、当社が2007年から環境保全活動の一環として取り組んできたCSR活動です。延岡市、日之影町、高千穂町、五ヶ瀬町の林地において広葉樹の植樹を行い、旭化成グループの従業員とその家族、OB会、そして地域の皆様と力を合わせながら、約20年にわたり活動を続けてきました。
    本取り組みは、森林を育成することで水を蓄える力を高め、洪水や土砂災害の防止につなげることを目的としています。さらに、生きものたちのすみかを守ることで、生物多様性の保全にも貢献しています。2025年度には、延岡市北川町の山林(0.76ヘクタール)において、「ヤマグリ」や「ヤマザクラ」などの広葉樹1,500本を植樹しました。 今後も地域の皆様と連携しながら、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを継続していきます。

    【「あさひの森」植樹活動の実績表(2007年~2025年)】

    植樹祭名称 植樹面積(ha)
    「あさひの森 日之影Ⅰ」 10
    「あさひの森 日之影Ⅱ」 10
    「あさひの森 高千穂Ⅰ」 10
    「あさひの森 高千穂Ⅱ」 10
    「あさひの森 速日の峰」 3
    「あさひの森 五ヶ瀬」 1.02
    「あさひの森 日之影Ⅲ」 4.52
    「あさひの森 北川」 0.76
    • 植樹の様子
      植樹の様子
    • 植樹の様子
      植樹の様子
    • 植樹祭参加者全員での記念撮影
      植樹祭参加者全員での記念撮影

    旭化成ホームズの取り組みは以下をご参照ください。

    調達における生物多様性の取り組み

    当社グループでは、サプライヤーの事業活動における生物多様性保全の取り組みについて、サプライヤー行動規範に項目を定め、生態系に与える影響を把握し保全に努めることを求めているほか、毎年実施しているお取引先へのCSR調達アンケートにおいても、生物多様性に関する取り組みおよび是正する仕組みについて項目を設け、モニタリングしています。

自然資本に対する旭化成グループの認識

旭化成は1922年に琵琶湖の水を利用した繊維の製造、また、1923年には延岡での水力発電を動力源とした合成アンモニアの製造で事業を開始しました。水をはじめとした自然資本は当社グループのものづくりに欠かせない存在であり、当社グループは自然資本の恩恵を受けながら発展を遂げてきています。一方で、近年は気候変動や生物多様性の損失などが進行し、社会の課題認識も急速に高まっており、企業には自然資本の保全・回復に向けた積極的な姿勢と責任ある行動がこれまで以上に求められています。こうした背景を踏まえ、当社グループでは事業活動が自然資本にどのように依存しているのか、またどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることが重要であると考え、分析を進めてきました。この分析を通じて、原材料調達や製造などのバリューチェーン全体において、水資源をはじめとするさまざまな自然資本が当社グループの事業と密接に関係していることを認識しています。今後も本分析を通じて得られた知見を活かし、自然資本に配慮した経営を遂行するとともに、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の両立に向けた取り組みを一層推進していきます。

LEAPアプローチ※1に沿った分析

当社グループでは、自然資本への依存と影響を分析するにあたり、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)※2が推奨するLEAPアプローチを活用しています。

2025年度は、自然資本との関わりをより網羅的に把握することを目的として分析対象を拡大するとともに、事業活動における自然資本への依存および影響の把握に重点を置き、評価の深堀りを進めました。具体的には、当社グループの主要3領域(マテリアル、住宅、ヘルスケア)を対象とするとともに、バリューチェーンの観点を取り入れ、上流から直接操業までの分析を実施しました。

  • ※1LEAPアプローチTNFDが提唱する自然資本への依存・影響および関連する機会・リスクを「発見(Locate)」「診断(Evaluate)」「評価(Assess)」「準備・対応(Prepare)」の4段階で分析する手法。
  • ※2TNFDTaskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)の略称。自然資本などに関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するために2021年に設立された国際的組織。

事業活動に関する分析

事業活動に関する分析では、グローバル・キャノピー、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)が管理・運営するツール「ENCORE」※3を活用し、当社グループの事業における自然への依存と影響の度合いを整理しました。
さらに、分析結果が実態に即したものとなるよう、ENCOREの結果を踏まえつつ、当社グループの事業特性を考慮した調整を行っています。

  • ※3ENCORE「Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure」の略称。組織が自然関連リスクへのエクスポージャー(感応度)を調査し、自然への依存と影響を理解するためのツール。
  • マテリアル領域のENCORE分析結果※4

    生態系サービスに対する依存と影響の評価結果を示しています。上段は「依存」、下段は「影響」を表しており、上流の調達・加工・輸送および直接操業の製造段階について、ENCOREで定義された事業区分ごとに評価しています。評価対象には、原油、天然ガス、石油製品、繊維性作物、木材、石・砂・粘土、銅・アルミ鉱業、非鉄製造、船、飛行機、大型車、基礎化学品、樹脂・合成ゴム、その他化学品、化学繊維、繊維製品、樹脂製品、電子部品が含まれています。依存の評価では、生態系サービスを「供給」と「調整」に区分し、バイオマスの供給等、水資源(淡水)、土地と生態系の環境維持、洪水・暴風雨の緩和、気候の調整、廃棄物処理・騒音、大気汚染の緩和に対する依存度を示しています。特に、繊維性作物、木材、石・砂・粘土、銅・アルミ鉱業などの上流調達段階において、水資源や土地と生態系の環境維持機能への依存度が高いことを示しています。影響の評価では、生態系サービスへの影響を、「ビジネスのインプット」である水の利用、土地・バイオマス資源等の利用と、「ビジネスのアウトプット」である気候変動、汚染と浄化機能の阻害、外来種の侵入に区分して示しています。特に、原油、天然ガス、繊維性作物などの上流調達段階や、基礎化学品、化学繊維などの直接操業において、生態系サービスへの影響度が高い項目があることを示しています。色分けは評価レベルを表しており、赤色がHigh、ピンク色がMedium、薄いピンク色がLowを示しています。
  • 住宅領域のENCORE分析結果

    生態系サービスに対する依存と影響の評価結果を示しています。上段は「依存」、下段は「影響」を表しており、上流の調達・加工・輸送および直接操業の製造段階について、ENCOREで定義された事業区分ごとに評価しています。評価対象には、木材、石・砂・粘土、鉄鉱業、製鉄、樹脂・合成ゴム、ガラス、製材、船、大型車、コンクリート製品製造、構造金属製造、樹脂製造、建築、不動産が含まれています。依存の評価では、生態系サービスを「供給」と「調整」に区分し、バイオマスの供給等、水資源(淡水)、土地と生態系の環境維持、洪水・暴風雨の緩和、気候の調整、廃棄物処理・騒音、大気汚染の緩和に対する依存度を示しています。特に、木材、石・砂・粘土などの上流調達段階では、水資源(淡水)、土地と生態系の環境維持、洪水・暴風雨の緩和、気候の調整への依存度が高く、直接操業では建築分野において土地と生態系の環境維持および気候の調整機能への依存度が高いことを示しています。影響の評価では、生態系サービスへの影響を、「ビジネスのインプット」である水の利用、土地・バイオマス資源等の利用と、「ビジネスのアウトプット」である気候変動、汚染と浄化機能の阻害、外来種の侵入に区分して示しています。特に、木材、石・砂・粘土、鉄鉱業などの上流調達段階において土地・バイオマス資源等の利用による影響度が高く、製鉄、樹脂・合成ゴム、ガラス、船などでは気候変動や汚染と浄化機能の阻害による影響度が高いことを示しています。また、直接操業ではコンクリート製品製造において気候変動への影響度が高く、樹脂製造および建築では汚染と浄化機能の阻害による影響度が高いことを示しています。色分けは評価レベルを表しており、赤色がHigh、ピンク色がMedium、薄いピンク色がLowを示しています。
  • ヘルスケア領域のENCORE分析結果

    生態系サービスに対する依存と影響の評価結果を示しています。上段は「依存」、下段は「影響」を表しており、上流の調達・加工・輸送および直接操業の製造段階について、ENCOREで定義された事業区分ごとに評価しています。評価対象には、原油、天然ガス、石油製品、繊維性作物、木材、銅・アルミ鉱業、その他動物、非鉄製造、電子部品、基礎化学品、樹脂・合成ゴム、化学繊維、ガラス、船、飛行機、大型車、医療機器、医薬品が含まれています。依存の評価では、生態系サービスを「供給」と「調整」に区分し、バイオマスの供給等、水資源(淡水)、土地と生態系の環境維持、洪水・暴風雨の緩和、気候の調整、廃棄物処理・騒音、大気汚染の緩和に対する依存度を示しています。特に、繊維性作物、木材、銅・アルミ鉱業などの上流調達段階では、水資源(淡水)、土地と生態系の環境維持、洪水・暴風雨の緩和、気候の調整機能などへの依存度が高いことを示しています。また、直接操業では医療機器および医薬品において水資源(淡水)への依存度が高いことを示しています。影響の評価では、生態系サービスへの影響を、「ビジネスのインプット」である水の利用、土地・バイオマス資源等の利用と、「ビジネスのアウトプット」である気候変動、汚染と浄化機能の阻害、外来種の侵入に区分して示しています。特に、原油、天然ガス、繊維性作物、木材、銅・アルミ鉱業などの上流調達段階では、土地・バイオマス資源等の利用による影響度が高く、原油、天然ガス、基礎化学品、化学繊維、船、飛行機などでは、気候変動や汚染と浄化機能の阻害による影響度が高いことを示しています。また、直接操業では医薬品において汚染と浄化機能の阻害による影響度が高いことを示しています。色分けは評価レベルを表しており、赤色がHigh、ピンク色がMedium、薄いピンク色がLowを示しています。
  • 上記ENCORE分析のカテゴリ分類の説明
    上記分析結果では、ENCOREで定義される依存・影響項目を分類・整理しています。以下にその対応関係を示します。なお、「文化・景観」については、当社グループの事業活動との関連性が限定的であると評価したため、上記表では対象外としています。

    生態系サービスへの依存および影響の評価に用いたENCORE項目を示しています。依存カテゴリー分類では、「水資源(淡水)」を淡水供給、水流調整、水質浄化、「洪水・暴風雨の緩和」を洪水緩和、暴風雨緩和、「気候の調整」を降雨パターンの調整、世界的な気候の調整、地域の気候の調整、「大気汚染の緩和」を大気浄化、大気や生態系による希釈、「廃棄物処理・騒音」を固形廃棄物浄化、騒音軽減、「土地と生態系の環境維持」を土壌と土砂の保持、土質調整、生息地の個体数と生息環境の維持、遺伝物質、生態系防除、「バイオマスの供給等」をバイオマスの供給、その他の供給サービス、「文化・景観」を花粉媒介、教育・科学・研究サービス、視覚的アメニティサービス、精神的・芸術的・象徴的サービスに区分しています。影響カテゴリー分類では、「水の利用」を水利用量、「土地・バイオマス資源等の利用」をその他の生物資源の利用、その他の資源の利用、土地利用範囲、淡水利用地域、海底の利用、「気候変動」を温室効果ガスの排出、「汚染と浄化機能の阻害」を温室効果ガス以外の大気汚染、水域や土壌への有害汚染物質の排出、水域や土壌への栄養塩の排出、固形廃棄物浄化、生活妨害、「外来種の侵入」を外来種の侵入に区分しています。
  • ※4マテリアル領域のENCORE分析では、各事業を以下の5つに区分して評価を行っています。
    エッセンシャルケミカル+エナジー&インフラ、エッセンシャルケミカル+パフォーマンスケミカル、エッセンシャルケミカル+コンフォートライフ、カーインテリア、エレクトロニクス
    各事業の取り扱い製品・サービスは以下ページに掲載しています。

さらに、ENCOREにおいて依存・影響の程度が「High」と評価された項目を抽出し、当社グループにとって重要度の高い自然資本の項目との関係を整理しました。
分析の結果、自然資本への依存については、3領域に共通して上流工程において、特に水資源(淡水)、洪水・暴風雨の緩和機能、気候の調整機能などに依存していることが確認されました。また、直接操業においてマテリアル領域とヘルスケア領域では水資源(淡水)、住宅領域では土地と生態系の環境維持機能、気候の調整機能への依存が重要であることが明らかとなりました。

一方、自然資本への影響については、上流工程において、水の利用、土地・バイオマス資源の利用、気候変動、汚染と浄化機能の阻害、外来種の侵入への影響が確認され、直接操業においては、特に水の利用、気候変動、汚染と浄化機能の阻害に対する影響が大きいことがわかりました。

  • 重要度の高い自然資本の項目と事業活動との関係

    生態系サービスへの依存と影響の評価結果から、特に重要と判断した項目を示しています。上段は「依存」、下段は「影響」を表しており、上流の原料調達、加工、輸送および直接操業の製造段階ごとに評価しています。青色の四角はマテリアル領域、赤色の三角は住宅領域、緑色の円はヘルスケア領域でHighに該当した項目を示しています。依存の評価では、「水資源(淡水)」がマテリアル領域の直接操業において使用量や事業規模などから特に重要な項目としてハイライトされています。影響の評価では、「水の利用」「気候変動」「汚染と浄化機能の阻害」がマテリアル領域の直接操業において用量や事業規模などから特に重要な項目としてハイライトされています。

これまでの分析に加え、資源投入量や事業規模も踏まえて重要度を評価した結果、当社グループの事業活動において特に自然資本との関わりが大きい要素は、温室効果ガス(GHG)排出量、汚染、水の利用であると特定しました。
また、これらの分析結果に加え、事業活動と自然資本との関係を総量的・定量的な観点から把握するための補助的な手法として、実際の活動量を用いたエコロジカルフットプリントによる評価も試行的に実施しました。

エコロジカルフットプリント※5を用いた定量評価

エコロジカルフットプリント(EF)とは、事業活動と自然資本との関わりを、仮想的な土地面積として定量的に示す手法です。異なる環境負荷を同一の尺度で比較できることが特徴であり、当社グループでは、実際の原材料使用量やGHG排出量、排水量などのデータをもとに評価を行いました。
本評価により、事業活動に伴う環境負荷の大きさを定量的に把握するとともに、各環境負荷の相対的な重要性を比較しました。
結果として、当社グループの事業活動における環境負荷は、GHGの排出が大半を占め、次いで汚染廃棄物の排出や水の利用に関連する負荷が大きいことを確認しました。前述のENCORE分析とは異なる手法・視点から評価を実施した結果、GHGの排出、汚染、水の利用が重要な要素として抽出され、ENCORE分析と整合的な結果が得られました。

  • 事業活動が自然資本に与える依存・影響の構成比を、エコロジカルフットプリント(EF)評価に基づいて示しています。構成比は、GHGの排出が69%と最も大きく、次いで汚染廃棄物の排出が18%、水の利用が12%、その他が1%となっています。
    • ※5国や地域の違い、陸や海、耕地と牧草地の違いなどを考慮して数値を調整し、排出したCO2を吸収するためにどれだけの生態系や自然資本が必要かなどを、土地・水域の面積という形で算出し、Gha(グローバルヘクタール)という単位で表したもの。現在の生活水準を維持するには、地球1.7個分が必要と言われている。
  • エコロジカルフットプリント(EF)の考え方を示しています。エコロジカルフットプリントは、「人口 × 1人当たりの消費 × 生産・廃棄効率」で表される指標であり、人間の活動が自然環境に与える負荷を、生態系が持つ生産能力の観点から捉えるものです。図では、森林地、耕作地、牧草地、漁場、生産能力阻害地およびカーボン・フットプリントを構成要素として示しています。

特に依存・影響がある項目への対応

事業活動における自然資本への依存および影響の分析を踏まえ、当社グループでは特に関係性の大きい項目への対応を優先的に進めています。
ENCOREやエコロジカルフットプリントによる分析の結果、当社グループの事業活動において特に重要度が高いと特定されたGHGの排出、汚染、水の利用については、既存の環境保全の取り組みを基盤としながら、着実に対応の強化を図っています。 今後も、これらの重点項目に対する取り組みを継続的に推進するとともに、自然資本への依存と影響の適切な管理につなげていきます。

温室効果ガス(GHG)の排出への対応

当社グループでは、GHG排出量の削減に向け、目標の設定とともに、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの活用、資源循環の取り組みなどを進めています。また、製品・技術を通じて社会全体のGHG排出量削減にも貢献しており、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。

【当社でのGHG削減取り組み事例】:暮らしと事業をつなぐ太陽光エネルギー活用

当社グループでは、住宅で創出された再生可能エネルギーを事業活動やサプライチェーンで活用する循環モデルの構築を推進しています。戸建住宅「へーベルハウス」および賃貸住宅「へーベルメゾン」に設置された太陽光発電設備で発電した電力を、当社グループが運営する電力事業を通じて調達し、事業活動に利用することで、CO₂排出量の削減に取り組んでいます。さらに、この電力を住宅建材の製造を担うサプライヤーへ供給するなど、住宅で生み出された再生可能エネルギーを有効活用する仕組みを構築しています。これにより、住宅を起点としたエネルギー循環を促進するとともに、旭化成ホームズ株式会社のRE100※6達成に貢献しています。このように、当社グループでは気候変動の緩和に貢献しています。

  • ※6RE100:事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な企業イニシアチブ。

太陽光発電設備を設置した集合住宅の外観。住宅で創出した再生可能エネルギーを事業活動やサプライチェーンで活用する取り組みを示している。

【社会のGHG削減取り組み事例】:グリーン水素製造技術の開発・展開による脱炭素化への貢献

当社グループは、長年培ってきた電解技術を活かし、再生可能エネルギー由来の電力を用いて水から水素を製造する大型アルカリ水電解システム「Aqualyzer™(アクアライザー)」の開発・展開を進めています。再生可能エネルギーを活用したグリーン水素は、製造時のCO₂排出を抑えることができるため、脱炭素社会の実現に向けた重要なエネルギーとして期待されています。
また、当社グループは、グリーン水素の製造技術の確立に加え、再生可能エネルギー由来の水素を原料とするグリーンケミカルの実現に向けた取り組みを推進しています。

  • ※7正式事業名称:グリーンイノベーション基金事業/再エネなど由来の電力を活用した水電解による水素製造/水電解装置の大型化技術などの開発、Power-to-X大規模実証/大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発およびグリーンケミカルプラントの実証。

NEDO「グリーンイノベーション基金事業」により導入したAqualyzer™(アクアライザー)の設備。工場内に設置された大規模なアルカリ水電解システムを撮影しており、水素製造技術の実証・開発に向けた取り組みを示している。

NEDO「グリーンイノベーション基金事業※7」により導入

汚染への対応

当社グループでは、環境負荷の低減に向け、廃棄物の発生抑制および再資源化、化学物質管理の強化、大気および水質への排出管理の徹底に取り組んでいます。

【事例】:住宅事業での産業廃棄物の再資源化の推進

当社グループの旭化成ホームズでは、住宅建設現場で発生した産業廃棄物の分別回収や再資源化を推進しています。施工現場で25種類に分別された産業廃棄物は、自社の資源循環センターで60種類以上に細分別され、単純焼却や埋め立て処分をすることなく、再資源化率100%を実現しています。資源循環センターによる処理の対象は新築工事だけでなく、旭化成リフォームが施工するリフォーム工事や、旭化成不動産レジデンスが管理する賃貸物件の入退室工事から発生する産業廃棄物にも拡大しています。

新築住宅の廃棄物を100%再資源化する「新築産廃ゼロエミッション」の取り組みを示しています。新築施工現場では、廃棄物を25種類に分別し、種類ごとに袋詰めしたうえで、品目や職種を記入したタグを取り付けます。回収された廃棄物は資源循環センターに運ばれ、60種類以上に細かく分別されます。分別は知識を有した技能者が手作業で実施しています。その後、分別された廃棄物は再資源化され、廃棄物の再資源化率100%を実現しています。

水資源への対応

当社グループでは、水資源の持続可能な利用に向け、水使用量の削減、再利用の促進、排水管理の高度化に取り組んでいます。また、水資源という自然資本への依存を認識しながら、事業活動や製品・技術を通じてその価値を活用するとともに、将来にわたる持続可能な利用に取り組んでいます。法令遵守に加え、自主基準を設けることで、より厳格な管理を行っています。

【事例】:地域の水資源を活用した水力発電

当社グループでは、創業当初から豊富な水資源の恵みを活かした水力発電を展開し、それぞれの時代のニーズに応える製品を提供するための事業活動に利用してきました。水力発電は、水資源という自然資本に依存する一方で、発電設備の運営に伴い周辺環境への影響を及ぼす可能性があります。
発電効率を高める設備により資源利用の高度化を図るとともに、水域生態系や地域への影響低減に取り組んでいます。自然資本への依存と影響を適切に管理しながら、持続可能な活用を推進しています。

五ヶ瀬川水力発電所の写真

自然との共生に向けた取り組み

当社グループでは、事業活動における環境負荷の低減に加え、自然環境の保全・回復に向けた取り組みも推進しています。地域社会と連携した活動を通じて、生物多様性の保全と自然との共生を目指しています。

【事例】:富士支社「あさひ・いのちの森」

当社グループは、富士支社内の工場跡地に造成した約1haの人工の森「あさひ・いのちの森」における森林保全活動を推進しています。この森は富士市沿岸部の原風景(地域在来種による植生)の再生を目指した環境再生ゾーンです。森林の整備や下草刈り、適切な間伐などを通じて、生態系の健全性を維持するとともに、多様な生物が生息できる環境づくりに取り組んでいます。
さらに、地域と連携した活動として、ホタルの生息環境の保全や観察機会の提供などにも取り組んでいます。これらの活動を通じて、CO₂の吸収や水源涵養といった森林の持つ機能の維持・向上に加え、地域とともに自然の価値を共有する機会の創出にもつなげています。これらの活動が奏功し、2023年には、国際的な生物多様性保全目標30by30※8への取り組みとして環境省が推進している「自然共生サイト」に認定されました。

  • ※830by30:2030年までに自然の損失を反転させる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けて、陸域と海域の30%以上を効果的に保全・管理することを目指す目標。

富士支社内の工場跡地に造成した「あさひ・いのちの森」の写真

製造拠点に関する分析

LEAPアプローチに基づく分析の一環として、国際自然保護連合(IUCN)などが開発したIBAT※9などのツールを活用し、当社グループの製造拠点における自然資本との関係性を地理的観点から評価しました。
具体的には、当社グループの主要な製造拠点について、生物多様性の観点で重要性の高い地域や、水ストレスの高い地域などへの立地状況を分析しました。その結果、現時点では、分析対象とした拠点において以下のような立地は確認されていません。

  • 生態系にとってクリティカルな土地
  • 法律で特に厳格に保護されている区域
  • 水ストレスの高い地域

一方で、多くの製造拠点が自然環境に恵まれた地域に近接または立地しており、これらの地域の自然の恵みは適切に活用しつつ、環境規制の遵守を徹底していくことが不可欠であることを改めて認識しています。
今後は、事業活動に関する分析において依存および影響が大きいと特定されたGHGの排出、汚染、水の利用を中心に、拠点レベルでのリスク評価の深化を進め、より実態に即した把握に取り組んでいきます。

なお、下図に示す主要な製造拠点においては、その事業規模の大きさから自然資本への影響も一定程度大きいと想定されるため、各地域の特性に応じた生物多様性保全の取り組みを推進しています。

以下はIBATの評価結果の一部です。

  • 主要な製造拠点と保護区との位置関係を示しています。日本地図上に主要な製造拠点と保護区の分布を示すとともに、守山製造所、水島製造所、延岡地区、鈴鹿製造所、川崎製造所、富士支社周辺の詳細図を掲載しています。凡例では、オレンジ色を保護区、青色を主要な製造拠点、黄緑色を保護区と近接する拠点がある県、緑色を保護区と立地する拠点がある県として示しています。各詳細図では、製造拠点周辺に存在する保護区の位置関係を示しており、主要な製造拠点と保護区との近接状況を確認できる内容となっています。
  • ※9IBAT「Integrated Biodiversity Assessment Tool」の略称。事業活動や開発計画が生物多様性にどのような影響を及ぼすかを評価するためのツール。
  • ※10保護区自然環境や野生生物を守るために法的または制度的に保護された区域。国立公園や自然保護区などがあり、開発や利用が制限されている。

機会・リスク

当社グループは、自然資本に関連する機会とリスクを認識し、機会の創出とリスクの低減に向けた取り組みを進めています。

以下の図は、当社グループの事業活動における「上流(原材料の調達)」「直接操業(製造・開発)」「下流(製品使用・廃棄)」の各段階において、自然資本に関連する主な機会とリスクを整理したものです。これらはマテリアル領域の分析をベースとしていますが、マテリアル以外の事業領域(ヘルスケア、住宅)にも広く関連する内容を含んでいます。
今後は、事業活動における依存および影響の分析結果を踏まえ、重要度や影響度の評価を含めた機会・リスク分析の深化を進め、自然資本への対応を通じたリスク管理および新たな価値創出につなげていきます。

  • 自然資本に関するリスクと機会、およびそれに対する対応をバリューチェーンに沿って示しています。バリューチェーンは、上流の資源採掘、製造加工、原料調達から、旭化成グループによる製造、製品・サービスの提供、顧客による利用、廃棄・リサイクルまでで構成されています。機会として、自然災害対応や汚染対策によるレジリエンス向上、再生原料の確保に向けたサプライチェーン協働、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルによる再生材需要の取り込み、生物多様性への影響を軽減する環境貢献製品・ソリューションの展開、工場敷地内の生物多様性保全活動による評判向上を挙げています。これらに対し、BCP対策や環境保全関連設備への投資、リサイクル技術の開発と社会実装推進、環境貢献製品の展開、生物多様性に配慮した緑化や地域との協働による保全活動などを進めています。リスクとしては、上流における自然災害によるサプライチェーン寸断や再生原料需要の高まりによる原料調達難、直接操業における自然災害による操業停止、取水や汚染による生態系や保全重要地域への影響リスク、汚染や廃棄物に関する規制強化による操業コスト上昇、下流における樹脂汚染や資源循環に関する規制強化による化石由来バージン材需要の低下、および消費者意識の変化による需要低下を挙げています。これらのリスクに対し、調達先の分散や適正在庫の確保、再生材調達チームの構築、排水の再利用や雨水活用、排水・汚染物質排出の管理徹底と情報開示、廃棄物の再資源化推進、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル技術の開発と社会実装推進などの対応を実施していることを示しています。

対応実施例

対応 対応実施例
機会 ①BCP対策、環境保全関連設備への投資
②③マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル技術の開発、社会実装推進
④当社環境貢献製品をはじめとする環境保全に貢献する製品の展開推進
⑤生物多様性に配慮した緑化、地域との協働での保全活動、植樹活動
リスク ①調達先の分散、適正在庫の確保 BCP対策見直しの継続
②再生材調達スキームの構築 -
③排水の再利用、雨水の活用
④水資源の効率的使用、汚染物質排出の管理の徹底、対策に関する情報開示
⑤汚染物質排出の管理の徹底、廃棄物再資源化の推進
⑥⑦マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル技術の開発、社会実装推進

今後の方針

自然資本に対する社会での課題認識が一層高まる中、当社グループは、事業活動における自然資本への依存と影響を的確に把握し、適切に管理していくことが持続可能な企業価値の創出につながると考えています。
2025年度は、分析対象の拡大を通じて、当社グループの事業と自然資本との関係性について全体像の把握を進めました。今後は、拠点レベルでの実態把握を進め、当社グループの現状認識の精緻化に取り組んでいくとともに、分析で重要性が高いと特定された温室効果ガス(GHG)の排出、汚染、水の利用を中心に、既存の取り組みの着実な推進に加え、必要な対策の強化を図っていきます。
また、自然資本に関連するリスクおよび機会の評価についても段階的に検討を進め、自然との共生を図りながら、事業の持続的な発展につなげていきます。