旭化成柔道部、世界トップレベルの心技を次世代につなぐ「柔道教室」

2024年3月6日

「旭化成と言えば、柔道」。そんなイメージを抱いている人も多いのではないだろうか。名だたる国際大会において数多くのメダルを獲得し、トップ選手を輩出してきた。現役選手のみならず、現在旭化成柔道部の総監督を務める中村兼三さんをはじめ、コーチ陣も世界を舞台に活躍してきた柔道家たちだ。そんな彼らが今、全国各地で子どもたちを対象に「旭化成柔道教室」を開催している。旭化成、そして世界を究めた柔道家たちが、この活動に込めたものとは—。当社製造拠点のある岡山県倉敷市で行われた柔道教室の様子とともに、本活動に携わる人びとの想いに迫る。

日本の柔道界、そして地域に貢献できる活動がしたい

五輪の正式種目でもある柔道は、日本古来の武術である柔術をベースとした日本発祥のスポーツだ。現在、国際柔道連盟に加盟する国・地域は200を超え、柔道は世界中で愛されている。その中で日本は、世界の手本として、また強豪国として柔道界を牽引し続けてきた。しかし、近年では国内の競技人口は減少傾向にあり、柔道界には危機感も漂っている。

そんな状況をなんとかしたいと、当社柔道部が新たな活動をスタートした。これまで世界を舞台に活躍し、日本の柔道界を牽引してきた監督やコーチ陣を中心に、「旭化成柔道教室」を立ち上げたのだ。発起人の1人であり、現在当社柔道部の総監督を務める中村兼三さんは、本活動を始めたきっかけや想いをこう話す。
「世界トップレベルの選手を数多く輩出してきた旭化成柔道部として、競技人口が減少傾向にある日本の柔道界を盛り上げたいという想いがずっとありました。また、監督としても現役選手の指導・サポートだけではなく、競技を引退した部員やコーチ陣とも協力して柔道界と地域に貢献できるような活動がしたいと以前から考えていました。その双方を実現するために、柔道部の仲間たちとも相談して、当社の製造拠点がある地域の子どもたちを対象とした旭化成柔道教室の開催を決めたんです。」

  • 当社柔道部総監督 中村兼三さん

柔道の魅力、精神を次世代に伝える

厳しい稽古のイメージもある柔道だが、旭化成柔道教室では終始子どもたちの笑顔が絶えない。この点については、トップ選手への指導とは異なる工夫やスタンスがあるという。
「この柔道教室では、遊びに近い感覚で柔道に必要な動きを学んだり、講師たちによる世界トップレベルの迫力ある投げ技を目の前で見てもらったりと、楽しみながら柔道の魅力を感じてもらうことを大切にしています。また、柔道は1人では成立しない競技ですので、他者に感謝する心や、対戦する相手が何を考えているのかを察する力も養うことができます。このマインドは、社会に出ても存分に生かせる力です。子どもたちにはフィジカルの強さや技、勝ち負けだけでなく、こうした柔道の精神に触れ、人としても大きく成長してほしいと願っています。将来的には、この教室に参加した子どもたちが競技を続け、世界に羽ばたいてほしいですね。そして柔道の魅力が広く伝わり、競技人口の増加、柔道界の盛り上げに貢献できたら嬉しいです。」

スポーツの世界でよく使われる「心技体」という言葉は、柔道がルーツであるとも言われる。その3つが整っていなければ、本当の意味で強くはなれない。
柔道教室の最後、「皆さんが柔道をするためにサポートしてくれている親御さんへの感謝をいつまでも忘れないでください」と話す中村さんの言葉に、しっかりとうなずく子どもたちの姿はとても印象的だった。他者への思いやりや感謝の気持ちを大切にする柔道の精神が、子どもたちにも伝わったようだ。

  • 子どもたちに直接指導する中村さん
  • 中村三兄弟として共に世界で戦った、長男・佳央さん、次男・行成さんも協力
  • 簡単な動きで楽しみながら柔道を体験
  • 子どもたちの質問にも答え、柔道の魅力を伝える

一流の技を間近で見て学ぶ、子どもたちの糧に

旭化成柔道教室は高度な技術や特別な戦術を指導するわけではないが、講師たちによる世界トップレベルの技を間近で見ることができる。それは子どもたちにとって貴重な経験であり、柔道を続けていく上での大きな糧にもなったようだ。参加した親子も、柔道教室を振り返って嬉しそうに語ってくれた。
「今日はすごい先生が技を掛けるところを間近で見ることができて、とても勉強になりました。やっぱり世界で戦ってきた選手の技はすごく迫力がありました!私も大きい選手を投げられるように、得意の背負投げと小外刈りをもっと練習していきたいです。」
「地方である岡山県で、世界を舞台に活躍した方々が直接指導してくださる機会は滅多にないので、とても嬉しく思いました。今日教えていただいたこと、学んだことを胸に、娘にはこれからも長く柔道を楽しんでほしいです。」

岡山県では初の開催となった旭化成柔道教室。自ら柔道部に志願して開催に尽力したのは、当社水島製造所総務部長の鈴木さんだった。
「水島製造所では以前より、地元中学生へのスポーツ活動支援をはじめ、環境保全の大切さや化学の楽しさを伝える出前授業など、旭化成ならではの地域貢献を意識して取り組んできましたが、今回当社が誇る『柔道』をテーマに、また1つ新たな活動を実現することができました。特に印象的だったのは子どもたちが非常に積極的だったことで、これからの人生に生かせる何かを1つでも見つけて帰ってもらえたのであれば嬉しい限りです。」

  • 親子で参加、旭化成柔道教室は貴重な機会と話す
  • 開催に尽力した当社水島製造所総務部長 鈴木さん

海を越え、世界にも広がる

この活動が見据える先は、日本にとどまらない。旭化成柔道教室は、海を越えたドイツ・デュッセルドルフでも「Asahi Kasei Judo Workshop」という名で開催されている。2017年に初開催し、昨年6回目を迎えた。当社欧州市場拡大の重要拠点である旭化成ヨーロッパが、地域貢献活動の一環として始めたのだ。

昨年は当社柔道部から中村さんはじめとする監督・コーチ陣、また現役選手も講師として参加。地元の高校生や日本人学校の生徒ら約120名が集まり、大盛況だった。現地では今や毎年恒例の人気行事となっている。柔道の魅力、その精神を世界に広めながら、海外でも旭化成らしい次世代育成、地域に根差した活動に取り組んでいく。

  • 当社柔道部 羽賀龍之介選手(右)も技を披露
  • 柔道着を身に着けて参加した現地の子どもたち

きっかけを一つずつ、柔道教室を通じた旭化成の想い

日々の稽古を頑張ることはもちろんだが、柔道に励む子どもたちにとっては、普段とは違った特別な体験や学びを得ることが、より競技の楽しさを感じたり、さらに強くなるきっかけになることも多いだろう。地元にいながら世界トップレベルの技を見て学び、肌で感じることのできる旭化成柔道教室は、そんな子どもたちが楽しみながら大きく成長するきっかけとなることを目指して、今後もさまざまな地域で活動を続けていく。長い道のりかもしれないが、こうしたきっかけを一つずつ増やしていくことが、柔道の発展とともに、子どもたちのさらなる成長につながると信じて—。
私たち旭化成はこれからもスポーツを通じて社会に貢献し、地域と子どもたちの未来を想い続けます。

  • 肩書・記事内容は取材当時のものです。 

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