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国際舞台で渡り合う、医薬品提携エキスパートの聞く力

旭化成のヘルスケア領域は、グローバルな事業展開を加速させています。国内外の企業との提携で成果を上げるとともに、米国の裁判を戦い抜いた経験もある医薬品ライセンス提携のプロ、旭化成ファーマの横田和子に話を聞きました。

  • 肩書・記事内容は2022年2月時点のものです。

横田 和子

横田 和子KAZUKO YOKOTA

旭化成ファーマ 医薬事業統括本部 プリンシパルエキスパート
筑波大学応用生物化学科卒業、旭化成工業株式会社(現・旭化成)入社。医薬事業部海外事業推進部に配属。新製品企画室、ライセンシング部などを経験しながら医薬品のライセンシング業務を推進してきた。2015年旭化成ファーマのライセンシング部長、2018年から現職。医薬ライセンシング協会(JPLA)幹事。

相手の主張の中に見いだす、交渉成功のヒント

入社以来ずっと、医薬品のライセンス契約に関わる仕事をやってきました。交渉相手は海外企業のことが多く、英語で交渉します。競合他社も私たちと同じ市場を狙っているケースが多いので、競争は熾烈になります。どうすれば相手に選んでもらえるかがポイント。常に心がけていることは、誠実に相手の立場で物事を考えることです。まずは相手の主張を徹底的に聞く。こちらの主張を通すためには、相手の主張をとことん聞かなければなりません。

相手の話を聞いていると、いろいろなヒントをもらえます。相手が本当に期待していることは何かが見えてきます。互いの考えにどんなギャップがあるのか分かれば、一つひとつ課題をつぶしていくプロセスに移ることができます。相手を説得するには、こちらの主張を論理的に説明していくことが重要。チームプレーも大事です。提携チームだけでなく、法務、開発、販売などさまざまな部門が協力して相手との交渉を進めていきます。ドキドキの連続です。交渉が難航した時は辛い思いもしますが、競合他社に競り勝って提携が成立した時、チーム全員で味わう達成感は何とも言えません。

米国の陪審員裁判で証言、絶対に負けられない一発勝負

2007年から2014年にかけ、提携先の欧米企業の契約違反による国際仲裁、訴訟がありました。私はこのライセンス契約の担当者だったので、2009年に国際仲裁、2011年に米カリフォルニアの陪審員裁判でそれぞれ第一証人として証言台に立ちました。映画の裁判シーンのように、陪審員の前で宣誓して証言を始めました。自分の人生で実際にこんなことが起こるのかという不思議な感覚と同時に、緊張の極致を体験しました。一方で、証言する日の朝は、「やっと自分の知る事実を第三者に聞いてもらえる日が来た」という万感の思いもありました。裁判では、英語の聞き間違いを避けるため尋問には通訳を入れましたが、私からの証言は通訳を介さず英語で直接話しました。陪審員の方々は私の証言にじっと耳を傾け、理解しようとしてくれたと感じました。

絶対に負けられない試合、後で訂正はできない究極の一発勝負でしたが、大学時代、ESS(English Speaking Society)で英語劇の活動をしていた時と同じで、いざ人前に立ったら肝が据わりました。裁判で勝訴が確定した日は、自分の会社人生で永遠に記憶に残る日となりました。裁判所の静寂な空気の中で、陪審員が500億円を超える賠償金額を読み上げた瞬間は、それまで味わったことのない達成感に包まれました。

コロナ禍のオンライン交渉、「考えの見える化」で工夫

コロナ以前は、交渉前に雑談するなど打ち解け合う時間があり、そこで相手の人柄などいろいろ知ることができました。ところがコロナ禍のオンライン交渉ではそういう時間の余裕もなく、スクリーンを通していきなりやり取りが始まることもあります。かなり勝手が違います。相手にうまく伝わらないというか、もどかしい。マジックハンドで交渉しているみたいな気分になることもありました。でもどんな状況下でも、相手の考えを正確に理解し、こちらの考えを正確に伝えることが最も重要です。私たちはオンライン交渉において、できる限り「考えの見える化」をする独自の工夫を取り入れたことで、正確かつ誠実なコミュニケーションを実現できたと思います。

横田 和子

仕事には覚悟を持って臨み、簡単に諦めないことが大事

旭化成ファーマは、旭化成グループの一員として医薬事業を営んでいますが、グループ内の多様な事業部門はもちろん、法務、知財、経理、経営企画等といった管理部門に蓄積されたノウハウを共有できることはありがたい。非常に協力的で、異なる事業ナレッジを取り入れた活動ができる点は旭化成の強みだと思います。

これからの若い世代には、現在携わっている仕事にプロ意識を持って取り組んでほしいですね。仕事に対し覚悟を持って臨み、簡単に諦めない。私はこれまでの提携業務で、もうダメかもしれないと思った局面もたくさんありましたが、最後まで頑張って諦めなかった仕事は結果につながっています。常に未来を見据え、諦めず、やり抜けば、きっとうまくいくと思っています。