トップメッセージ

旭化成らしさを活かして、本質的なサステナビリティを追求する

社会課題の解決に貢献する

1922年の創業から約100年、旭化成グループは、世の中のニーズに応えるさまざまな事業・製品を生み出してきました。この間、社会は確実に進歩してきましたが、残念ながら今でも世の中には課題が山積しています。ウクライナ情勢やパレスチナ問題をはじめとした世界各地の地政学的リスクも懸念されます。また、金利・為替・資源価格など、経済情勢も先を見通すことが難しくなっています。社会・経済の先行きは不透明で予断を許すことはできません。
しかし、このような中においても、当社が目指すところは変わりません。グループミッション「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」のもと、「持続可能な社会への貢献」 と 「持続的な企業価値向上」を追求し、かつ、これら2つの持続可能性(サステナビリティ)を連動するものとして好循環させていくことで、当社は世の中のニーズを捉え、さまざまな社会課題の解決に貢献していきます。

本質を見極めながら取り組む

世界の最重要課題の一つが地球温暖化をはじめとする気候変動です。気候変動は課題認識されてきているものの、年々、深刻さを増しています。この課題に対し、当社グループは、「自社の事業活動におけるGHG(温室効果ガス)排出量の削減」と、「社会のGHG排出量削減への貢献」の2方向から取り組みを進めています。
「自社の事業活動におけるGHG排出量の削減」のためには、使用エネルギー削減・エネルギーの脱炭素化・生産プロセスの革新・事業ポートフォリオの見直しなどを進めています。特に当社のマテリアル領域は事業の特性上、相当量のGHGを事業活動において排出していますが、持続可能な社会に向け、当社は「2050年カーボンニュートラル」実現を目指します。
「社会のGHG排出量削減への貢献」として、当社は「環境貢献製品」を展開します。市場の標準的な製品に比べて、製品のライフサイクル全体でGHGをはじめとする環境負荷を低減する製品・サービスの展開です。それらの環境貢献製品によるGHG削減貢献量を、当社は2030年度に2020年度対比2倍以上にすることを目標としています。「削減貢献」の重要性は政府のGXに関する会議でも議論され始めているところですが、当社は先行的に取り組んできた企業として引き続き注力し、社会のGHG排出量削減に事業を通じて貢献していきます。GHG排出量削減の視点で既存製品の価値を掘り起こすことはもとより、新たな技術や製品の開発を積極的に進めます。

その際に大切なことは、「本質」を見極めて取り組むことだと考えています。サステナブルな社会に向けて、市場に価値あるものを生み出していく、という強い思いを持ちながら、何が本質的な課題なのかを見極めた上で取り組む、ということです。例えば、プラスチックは海洋プラスチックやマイクロプラスチックの点から問題になっていますが、一方で人びとの生活においてなくてはならない重要な役割を担っているという面もあります。また、その重要性も、物資が行きわたった先進国と、生活水準を引き上げていく必要のある新興国とでは、意味が異なっています。そのような中で、プラスチックというものを社会にどのように位置づけたら良いのか、海洋プラスチックやマイクロプラスチックの問題を解決するにはバリューチェーンのどこをどのように変えていけば良いのか、そして、素材メーカーとして貢献できることは何なのか。このようなことを見極めつつ、時間軸を定めて取り組んでいくことが大切と考えています。これからは一段とリサイクルやリデュースが行われる社会になります。つまり、2050年にプラスチックはどのようになっていなければならないか、そこからバックキャストで見たときにどのような時間軸で何をしていくか、など、本質を問い続けながら取り組む姿勢を大切にします。

旭化成らしさ、にこだわる

「本質」を見極めることと同時に大切なことがあります。「旭化成らしさ」です。当社では2050年に向けて目指す姿として「Care for People, Care for Earth(人と地球の未来を想う)」という旗印を掲げ、サステナビリティを追求していますが、例えば「Care for People」の視点に関して、住宅事業では現在、北米と豪州で新たな事業展開を積極的に図っており、これらは日本国内の請負住宅事業(へーベルハウス)で磨き上げたノウハウや強みをもとにしています。ヘルスケア事業においても、さまざまな成長戦略の選択肢がある中、医薬事業においては、既存の展開領域やビジネスモデルを踏まえ、比較的リスクの低い専門治療領域に特化することとしています。
「Care for Earth」における注力事業であるアルカリ水電解システム(水素の製造システム)では長年のイオン交換膜事業での知見を活かしており、また、CO2ケミストリー(化学品の原料としてCO2を活用)では石油化学事業で培った触媒技術を発展させています。つまり、課題が山積する社会において、多様な事業と技術を持つ当社には事業を通じた貢献のポテンシャルがさまざまにありつつも、当社は「旭化成らしさ」が最も発揮できる分野、事業、ビジネスモデルにこだわった展開をしていきます。「旭化成らしさ」というのは一言で表現できるものではなく、場面ごとに皆で考えていくことになりますが、それでも「旭化成らしさ」にこだわることで、当社は持続可能な社会の実現に向けた価値ある解決策を提案していくことができると考えています。

多様性を活かす

「旭化成らしさ」の一つに多様性があります。「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で多岐にわたる事業を世界で展開する当社は多様な人財で構成されています。「持続可能な社会の実現」に向けた知恵と行動の源泉は人財にほかなりませんから、多様性を単に当社の特徴としてではなく、強みに高めていくための取り組みが重要です。そこで、多様な人財が活躍するためのさまざまな制度を整備するとともに、個々の従業員が会話しやすく、相談しやすい環境や職場風土を作っていくことが大切と考えています。そして、同様に大切なのがチーム作りです。私は自分の経験から、個性の集団こそ、往々にして強いチームになり得ると思っています。メンバー一人ひとりの役割が明確で自分の居場所がはっきりしていること。加えて、メンバーが個性を発揮しつつ、切磋琢磨しながら、チームとして機能すること。そのためにはグループ全体の方針を踏まえた上で、マネージャーが考えをチーム内でしっかりと共有していくことが大切ですから、私は社内で常々、「マネージャーは自分の言葉で部下に語れ」と言っています。当社は多様性を強みとして発揮することで、価値を創出していきます。

持続可能な社会に向けてしっかりと歩みを進める

現在世界が抱えている社会課題には、一つとして一朝一夕に解決できるようなものはありません。したがって、中長期的な挑戦が必要不可欠であり、当社は野心的な意欲、健全な危機感、迅速果断、進取の気風など、DNAであるA-Spiritを発揮し、旭化成らしく、社会課題の解決に貢献していきます。「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」で構成され、「成長性」と「安定性」を両立させていく当社にはその挑戦が可能です。
当社は、創業以来の100年と同様、これからも常に社会課題に正面から向き合い、ステークホルダーの皆様の信頼をいただきながら、持続的に革新的な技術と事業を創出し続ける、社会に価値ある企業を目指します。

代表取締役社長
工藤 幸四郎