プレスリリース

第2回「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査について

2017年6月30日
旭化成建材株式会社
株式会社旭リサーチセンター

「冬季起床時の居間・食堂の室温が20℃を超える住まい」では、他の室温の住まいと比較して温熱環境に対する満足度が高く、防寒行動が少なくなることや、「住まいの温熱環境が良ければ、家族の気持ちや体に良い影響を与える」ことに共感する人が、女性を中心に約7割に上ることも判明。

旭化成建材株式会社(本社:東京都千代田区、社長:堺 正光、以下「旭化成建材」)快適空間研究所※1及び株式会社旭リサーチセンター(本社:東京都千代田区、社長:沢山 博史、以下「旭リサーチセンター」)は、「あたたかい暮らし研究会」※2として、2回目となる「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査(対象地域:北海道、宮城県、首都圏、中京圏、阪神圏、福岡県)を実施しましたので、その結果をお知らせします。

調査報告トピックス

1.住まいの総合満足度と比べて、温熱環境の満足度が低い。

  • 家全体の温熱環境(あたたかさ、涼しさ)に対する満足度は、住まいの総合的な満足度の比率と比較すると、20%も低く32.6%。夏の不満度の高いスペースは「台所」と「トイレ」、冬は「洗面所」、「浴室」、「トイレ」。
  • 「夏」「冬」の温熱環境満足度は「春」「秋」と比較して低く、不満度が約30%と高い。また、夏季暑くて使いたくないスペースがある人の比率は45.4%、冬季寒くて使いたくないスペースがある人は27.5%で夏の方が高い。

2.住まいの温熱環境の満足度は北海道が最も高い。

  • 地域別では、年間を通じての温熱環境の満足度は北海道が高く、特に、「たいへん満足」は20%で他地域と比べて10%以上高い。一方、「たいへん不満」、「やや不満」を合わせた不満度は阪神圏が最も高い。
  • 北海道の冬季における住まいの温熱環境に対する満足度は50%を超え、他エリアと比較して高い。冬季、北海道では、起床時の居間・食堂の室温21℃以上の割合が20%を超え、他地域と比べると高い比率。

3.冬季室温の高い住まいに暮らす人の方が、満足度が高く、防寒行動が少ない。

  • 冬季居間・食堂の起床時の室温が21℃以上(以下クラスA)と、同じく20℃以下の室温の住まいと比べると、冬季調査における「住まいの総合満足度」、「温熱環境の満足度」の「たいへん満足」の比率はクラスAの方が高い。
  • クラスAの住まいでは、冬季居間・食堂の起床時の室温が10℃以下(以下クラスD)の住まいよりも、日常生活で寒いと感じた時に「毛布やひざ掛けをかける」、「カーテン・雨戸を閉める」、「暖房をしている部屋のドアや間仕切りを閉める」等の行動が少ない。

4.男性よりも女性の方が、省エネ行動に関心が高い。

  • 2大省エネ行動は、夏季・冬季とも「エアコンの設定温度の上げ下げ」と「照明はこまめに消す」。2大省エネ行動を含め、多くの行動で、男性よりも女性の方が省エネ行動を行っている比率が高い。
  • 夏季居間・食堂にある冷房(涼房)器具は「エアコン」がトップで82.2%、次いで「扇風機」が61.1%となった。冬季の暖房器具は「エアコン」がトップで71.6%、「こたつ」、「石油ファンヒーター」、「床暖房」が続く。

5.「住まいの温熱環境が良ければ、家族の気持ちや身体に良い影響を与える」に共感する人が多い。

  • 「住まいの温熱環境が良ければ家族の気持ちや身体にいい影響を与えると思う」に共感する人が68.2%に上り、特に女性では76.9%と高い比率。また、「温熱環境が良くなると行動量が増えると思う」に共感する人も、女性が59.6%と高い比率。
  • 温熱環境の良い家にできなかった理由として、「温熱環境及び温熱環境の良い家について知らなかったから」を挙げた人は、築年数の浅い10年未満の人にも多く、35%を占める。また、20代、30代のその比率は比較的高く3割を超える。

1.調査の背景・目的

旭化成グループでは、2016年度より3カ年の中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」をスタートさせ「クリーンな環境エネルギー社会」「健康・快適で安心な長寿社会」の実現に取り組んでいます。その中で旭化成建材が属する住宅領域は、「人びとの健康で快適な生活に貢献し続ける」ことを目指しており、断熱材事業の拡大は重要な事業戦略の一つです。

旭化成建材では、健康管理や省エネの視点から、住宅を適温に保つ断熱性能が重視されていることなどから、高気密・高断熱住宅の普及のために、顧客である断熱材ユーザー様や施主様に向けて、以下のような活動を行ってまいりました。

2014年4月
「快適空間研究所」※1を設立し、室内の温熱環境の研究、マーケティング活動などを開始
2015年1月
建築、環境、生活者などの視点で、居住空間やそこでのライフスタイルの研究をさらに進化させるために、旭リサーチセンター及び首都大学東京 建築学域 須永研究室とともに「あたたかい暮らし研究会」※2を発足
2016年2月
「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査実施
2016年8月
第1回「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査報告実施
2016年8月
2016年度夏の「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査実施
2016年9月
初の生活者向け(女性限定)セミナーを実施
2017年1月
工務店様向け「快適空間ラボラトリー」※3をオープン
2017年2月
生活者向けワークショップ、快適空間体験ツアーを実施
2017年3月
2016年度冬の「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査実施

超高齢社会ともいえる今日、異常気象等の影響もあり、建物内でヒートショックや熱中症で亡くなる方が増加し、社会的課題の一つとなっています。一方、人生90年時代において人生を長生きするだけでなく、いかに生き生きと暮らしていくかという生活の質も問われる時代になっています。

今回の調査では、首都圏に加え、北海道、宮城県、中京圏、阪神圏、福岡県を追加し、夏季と冬季の2度に分けて室内の温熱環境とそれらの満足度の実態を調査するとともに、男女別、築年数別、季節別、部屋別の満足度と暮らし方などを分析し、温熱環境と生活者の実態を明らかにしました。

2.調査概要

(1)調査内容
第2回「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査
(2)調査目的
住まいの温熱環境の実態と満足度及び生活者の意識・行動の実態を調査することで断熱材事業におけるコンセプト開発・マーケティング活動の一助とする。
(3)調査対象
北海道、宮城県、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)、中京圏(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)、阪神圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)福岡県の一戸建持家居住者(夏季回収N値600、冬季回収N値637)
(4)調査期間
2016年8月24日~26日(夏季調査)、2017年3月3日~6日(冬季調査)
(5)調査方法
WEBアンケート調査

3.調査のまとめ(詳細は添付参照)

1)基本データ編

6つの地域(北海道、宮城県、首都圏、中京圏、阪神圏、福岡県)での住宅の総合的な満足度と家全体の温熱環境(あたたかさ、涼しさ)の満足度とを比較すると、温熱環境に満足している人の比率が20%低く32.6%となっていることが明らかになりました。

「夏」、「冬」の温熱環境の満足度は「春」、「秋」と比較して低く、不満度は約30%と高いことが分かりました。不満度の高いスペースは夏季では「台所」と「トイレ」、冬季では「洗面所」、「浴室」、「トイレ」でした。

住まいの温熱環境に満足している人の満足理由としては、夏季は「風通しがよい」、冬季は「日当たりが良い」がトップで、続いて夏季・冬季とも「冷暖房の効きが良い」となっています。一方、不満の人の不満理由は、「暖房しないと寒い(冷房しないと暑い)」が高く、「冷暖房部屋との温度差」、「1・2階の温度差」が続いています。

夏季の団らん時の室温で最も比率が高いのが「26~28℃」、起床時も「26~28℃」で、同じく冬季の団らん時が「16~20℃」、起床時は「6~10℃」であることから、夏季と比べて冬季の方が団らん時と起床時の温度差が大きいことが分かりました。

また、夏季暑くて使えないスペースのある比率は45.4%で、冬季に寒くて使えないスペースがある比率27.5%を大きく上回っています。具体的には夏季暑くて使えない部屋・スペースは、「寝室」がもっとも比率が高く、続いて「トイレ」、「納戸」の順。冬季は「洗面所」、「廊下」、「納戸」の順となっています。

2)地域データ編

6つの地域別にみると、住まいの温熱環境の満足度は北海道が最も高く、「たいへん満足」の比率が20%で、他地域と比較して10%以上高くなっています。「たいへん不満」と「やや不満」を合わせた不満度は阪神圏が最も高いことは分かりました。

また、北海道の冬季における住まいの温熱環境に対する満足度は50%を超え、他エリアと比較して高いことや、北海道の各部屋の温熱環境の満足度が他エリアと比較して高いこと、季節別に見ても、夏を除いて北海道の「たいへん満足」の比率が高いことも分かりました。

具体的には、団らん時の居間・食堂の室温(21~25℃)の比率が北海道で50%を超えていることや、他地域では、団らん時の居間・食堂の室温(16~20℃)の比率が高くなっていることの他、起床時の居間・食堂の室温21℃以上の割合が北海道では、20%を超えていること、同じく16℃未満の比率が宮城県、中京圏、阪神圏、福岡県では50%を超えていることが判明しました。

北海道では他の地域と比べて「石油(灯油)ストーブ」、「全館空調」の利用比率が高く、「エアコン」と「石油(灯油)ファンヒーター」、「こたつ」が少ないことや、温熱環境に満足している理由として「暖房している部屋とそれ以外の部屋で温度差がない」、「1・2階の温度差がない」を挙げる比率が他の地域と比較して25%以上高いことが分かりました。

3)室温別データ編

クラスAの住まいの「住まいの総合満足度」の「たいへん満足」は33.4%、「温熱環境の満足度」の「たいへん満足」は22.1%となっており他のクラスより高くなっています。「冬の温熱環境の満足度」においては、クラスAの住まいの満足度が約50%と他クラスと比較して高く、「部屋が寒くて使えない、あるいは使いたくない部屋やスペースがある」とする比率は他クラスと比較して15%以上低くなっています。

また、住まいの温熱環境の満足理由で、クラスAの住まいは「暖房している部屋とそれ以外の部屋で温度差がない」、「暖房している部屋における上下の温度差が小さい」の比率がクラスDの住まいと比較して高くなっていることや、日常生活において部屋で寒いと感じた時の行動を比較すると、「毛布やひざ掛けをかける」、「カーテン・雨戸を閉める」、「暖房をしている部屋のドアや間仕切りを閉める」などの防寒行動がクラスDよりもクラスAの住まいで少ないことが分かりました。

「居間・食堂にある暖房器具」の比率については、クラスAの方がクラスDよりも少ないこと、クラスDの住まいには、「石油(灯油)ファンヒーター」のある比率が高く、クラスAは「全館空調」の比率が高いことなどが分かりました。

4)暮らしデータ編

省エネ行動では、夏季・冬季とも「エアコンの設定温度の上げ下げ」、「照明はこまめに消す」が多いことや、男女別に見ると、女性の方が多くの省エネ行動を行っていることが分かりました。

夏季居間・食堂にある冷房(涼房)器具は「エアコン」がトップで82.2%、次いで「扇風機」が61.1%とでした。冬季の暖房器具も「エアコン」がトップで71.6%、続いて「こたつ」、「石油ファンヒーター」、「床暖房」となっています。

また、日常生活において寒いと感じた時の行動は「あたたかい飲み物を飲む」、「毛布やひざ掛けをかける」に次いで、「靴下をはく」、「服を重ね着する」といった衣類による調整が多いことも分かりました。

5)意識・知識データ編

「住まいの温熱環境が良ければ家族の気持ちや身体にいい影響がある」(当てはまる+やや当てはまる)とする人が68.2%に上り、特に女性では76.9%と高い比率でした。また、「温熱環境が良くなると行動量が増えると思う」も、女性が59.6%と高い比率となっています。

温熱環境に関する用語の認知度は全般的に低く、特に「ZEH」、「Q値」、「C値」、「UA値」については「知っている」、「なんとなく知っている」を合わせても10%以下という結果でした。

築年数別に見ると、築年数が古いほど温熱環境満足度が低く、不満度も高くなっています。また。築10年以内に建設した方でも温熱環境のいい家にできなかった理由として「温熱環境のいい家について知らなかったから」、「重視しなかったから」をあげる人が多く、それぞれ30%を超えています。同じく、20代、30代でのその比率は比較的高く30%を超えています。

4.今後の展開

今回の調査により、「温熱環境の良い住まい」に暮らす人の満足度が高いことの他、「温熱環境の改善は心身に良い影響を与える」と考えている人が女性を中心に多いことがわかりました。また、「温熱環境の良い住まい」を実現することが、夏季・冬季に利用したくない部屋を減らし、冬季の煩わしい防寒行動などを削減するなど「暮らしの質を変える」可能性があることが見えてきました。

これらの結果を踏まえ、「あたたかい暮らし研究会」では、今後も住まいの温熱環境に関する調査研究活動を行うとともに生活者を対象にしたフォーラムなど※4を開催し、「温熱環境の良い住まい」の啓発活動に努めてまいります。これらの活動により、働く女性などの忙しい方たちからニーズの高い効率的な生活行動の実現や「暮らしの質を変える」ことに寄与できるものと考えています。

また、「快適空間研究所」では、断熱材ユーザー様を対象に、温熱環境や断熱性能の重要性、素材の品質等を体験していただく「快適空間ラボラトリー」を1月にオープンしましたが、今夏も夏バージョンの体験会を開催し、夏季の温熱環境に優れた住まいを体験していただく予定にしています。

さらに、8月上旬にはあたたかい暮らしを目指す人々のためのライフスタイル誌「あたたか族第2号」を発行、ホームページもリニューアルするなど、断熱材ユーザー様だけでなく、生活者にも情報を展開する予定です。(あたたか族 快適空間研究所サイト

「快適空間研究所」及び「あたたかい暮らし研究会」では、今後も、生活者の住まいの温熱環境に関する意識、知識を高めていくための調査研究・情報発信の他、日本の住まいを省エネルギーでありながら、そこに住まう家族の体と心をあたたかくする住まいにすべく啓発活動を行っていく予定です。同時に旭化成建材は断熱材メーカーとして、より良い製品とサービスの提供を通じて、温熱環境に優れた空間やそこでの住まい方の提案に努めてまいります。

  • ※1快適空間研究所
    • 1)名称旭化成建材株式会社 快適空間研究所
    • 2)所在地東京都千代田区神田神保町1丁目105番地 神保町三井ビルディング
    • 3)設立2014年4月
    • 4)所長白石 真二
    • 5)目的快適な空間を実現するための情報収集と分析及びそれらの結果を踏まえたコンセプト開発、マーケティング活動
      ① 一戸建の温熱環境と生活実態の把握による居住空間での温熱環境ニーズの発掘
      ② 活動方針に共感いただける社外の関連企業、大学等の研究機関、行政、生活者等との共創
      ③ 研究成果の社会や生活者への情報発信と断熱材事業へのフィードバック
  • ※2あたたかい暮らし研究会
    • 1)発足2015年1月 快適空間研究所内に発足
    • 2)主な活動あたたかく生き生きと暮らすための居住空間とライフスタイルの研究
      ① 調査活動:住まいの温熱環境や生活者の暮らしに関するアンケート・訪問・実測調査等の実施
      ② 啓発活動:生活者の温熱環境に関するリテラシー向上のためのセミナー、ワークショップ等の実施
      ③ 情報発信活動:生活者に向けたHP、冊子等での情報発信など
    • 3)主なメンバー首都大学東京 建築学域 須永研究室、株式会社旭リサーチセンター ハビトゥス研究所、旭化成建材株式会社 快適空間研究所
  • ※3「快適空間ラボラトリー」
    • 1)名称旭化成建材 「快適空間ラボラトリー」
    • 2)所在地茨城県猿島郡境町陽光台(旭化成建材 ネオマフォーム工場近接地)
    • 3)敷地面積1451m2
    • 4)建物概要① 体験棟 木造2階建 延床面積130.1m2 ② 展示棟 木造2階建 延床面積225.8m2
    • 5)断熱性能(体験棟)UA値=0.20(W/m2・K)
    • 6)開設日2017年1月11日
  • ※4フォーラムなど
    • 1)7月22日(土)生活者向けフォーラムを開催予定
      テーマ「夏を涼しく、冬をあたたかく暮らす住まいづくり~住まいの温熱環境をよくすると暮らしが変わる~」(予定)
    • 2)8月26日(土)旭化成建材の「快適空間ラボラトリー」への「快適空間体験ツアー」を開催予定

以上