プレスリリース

ヨーロッパにおける「グリーン水素」実証プロジェクト本格始動

2018年5月7日
旭化成株式会社

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小堀 秀毅、以下「当社」)のヨーロッパ統括会社である旭化成ヨーロッパ(本社:ドイツ連邦共和国ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州デュッセルドルフ市、以下「AKEU」)は、2018年4月27日、ドイツ連邦共和国NRW州ヘルテン市にある水素関連技術開発拠点「h2herten※1」にて、風力模擬電源を使ってアルカリ水から水素を生成する「グリーン水素」の実証プロジェクトを開始しましたので、お知らせします。

  • 本年4月27日にヘルテン市にて行われたオープニングセレモニーでの様子。左から旭化成(株)上席執行役員兼研究・開発本部長の山岸秀之、ヘルテン市長のFred Toplak氏、NRW.INVESTアジア部長のAstrid Becker氏、NRW州経済エネルギー省立地マーケティング・開発局長のTobias Traupel博士、在デュッセルドルフ日本国総領事の水内龍太氏、旭化成ヨーロッパ社長の堤秀樹。

1.背景、目的

近年、水素はエネルギー貯蔵の分野だけでなく、自動車の代替燃料としても関心が高まっています。また、ヨーロッパ、特にドイツ連邦共和国では、2022年までに原子力エネルギーを廃絶するともに、変動する再生可能エネルギー源からの電力供給の高シェア化やCO2削減に対する意欲的な目標を掲げているため、信頼性の高い蓄電技術が強く求められています。

当社は、世界26カ国、126カ所の生産拠点で使用されている食塩電解システムのメインサプライヤーです。この技術をベースとして、再生可能エネルギーなどの変動電源に適したアルカリ水電解システムを開発しました。本システムは、エネルギー転換効率に優れ、10MWまでの大型化が可能であるため、単一装置で大量の水素を生産することができます。

当社は、第一弾として、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)による技術開発支援のもと、神奈川県横浜市において、10MW級の大型アルカリ水電解システムを想定した長時間の水素製造実証プロジェクトに成功しています。

2.概要

本プロジェクトは、ヨーロッパにおいて、再生可能エネルギー源から供給される電力を使用して「グリーン水素」を製造する、水素製造プロジェクトの第二弾となります。NRW.INVEST※2の協力のもと、水素関連技術開発拠点「h2herten」と共同で行い、大規模な「グリーン水素」製造のためのアルカリ水電解システムの開発に寄与するものです。

また、AKEUは、2017年11月14日に、「ALIGN-CCUSプロジェクト※3」に参加することを発表しています。当社のアルカリ水電解システムは、CO2を再利用する手法の1つであり、CO2排出量を削減できます。AKEUは、「ALIGN-CCUSプロジェクト」において産業界での一貫したCO2回収・転換プロジェクトの設計、建設、運用に重点を置くワーキングパッケージ4のメンバーであり、ヨーロッパのパートナー企業・機関と協力してCO2の再利用、排出量の削減に貢献していきます。

ヘルテン市長 Fred Toplak 氏のコメント

「水素関連技術の開発拠点「h2herten」は、アルカリ水電解システムを構築し統合するための理想的な環境です。AKEUとの協業は、未来のエネルギー問題解決に取り組む企業との素晴らしい事例であり、今後の「h2herten」のさらなる発展に繋がるものと考えています。」

AKEU社長 堤 秀樹のコメント

「新しい蓄電技術とクリーンエネルギーの生産システムに対する需要の高まりにともない、ヨーロッパのエネルギー業界は劇的に変化しています。当社グループのアルカリ水電解システムは、そのニーズに対応可能な技術です。私たちは強力な現地パートナーである「h2herten」と協力して、この課題解決に貢献できることを誇りに思います。」

  • ※1h2herten
    ドイツ連邦共和国NRW州ヘルテン市に設立された水素シティ。水素関連技術開発拠点の一つ。
  • ※2NRW.INVEST
    NRW州で投資や進出を計画するドイツ国内外の企業へ全工程でサポートサービスを提供しているNRW州経済振興公社。1960年に設立され、州都デュッセルドルフに本部を置く、NRW州政府単独出資(経済エネルギー省の所轄)による組織。
  • ※3 ALIGN-CCUSプロジェクトは、ヨーロッパにおける国際的な31の研究機関と企業とのパートナーシップで行う、CO2回収、利用および貯蔵(CCUS:Carbon Capture, Utilisation and Storage)に関するプロジェクトであり、EUと参加国(ノルウェー、イギリス、ルーマニア、ドイツ、オランダ)からの補助金を活用しています。2017年から2020年までの3年間で、6つのワーキングパッケージに分かれ、CO2回収技術の最適化・コスト削減、大規模CO2輸送、オフショアでの安全なCO2地下貯蔵、CO2活用技術の開発、CCUSの社会的啓蒙のサポートを検討している。

本実証を通じて、当社はアルカリ水電解システムの技術開発にさらに磨きをかけ、美しい地球環境を保つため、「クリーンな環境エネルギー社会」の実現を目指していきます。

以上