プレスリリース

非加熱・非加圧で液体を高度濃縮できる新規の膜システムを開発

~食品・医薬産業への膜による新たな価値提供を目指す~

2018年11月30日
旭化成株式会社

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小堀 秀毅、以下「当社」)は、液体を非加熱・非加圧で脱水し、成分を高濃度に濃縮することに適した、独自の膜システムを開発しましたので、お知らせします。

1.開発背景・目的

食品・飲料や医薬成分の濃縮は、香気・風味・その他有効成分の成分割合を高められ、輸送・保管コストの低減もできることから関心が高まっています。しかし、従来の濃縮技術である、蒸留法※1や逆浸透膜法※2では、加熱や加圧が必要であり、あるいは原理的に高度濃縮することが難しい液体が多いことが、有効成分等の品質を保持したまま高度濃縮をするうえで課題でした。

当社は、これまでウイルス除去膜や水処理膜などの膜サプライヤーとして蓄積してきた独自の膜技術を活かし、従来技術の課題であった「熱や圧力に弱い成分を含む液体の高度濃縮」に適した新規膜システムの開発を進めてきました。本システムは、逆浸透膜法を使う場合に比べて濃縮率が3倍程度に高められます。例えば、コーヒー液の濃縮では、10倍濃縮後においても液中の香味気成分を元の状態を保つことが可能であり、固形成分存在下でも運転が可能なことを確認しました。

  • ※1蒸留法
    沸点の差を利用してた成分を分離するプロセス。
  • ※2逆浸透膜法
    浸透圧差よりも強い圧力を高浸透圧側(高塩水側)より加えることで純水を製造したり、液体成分からの脱水を行ったりすることができるプロセス。
  • システム概要図

    本システムは膜を通して液体が濃度差によって移動する浸透現象を活用している。
    浸透圧の高いドロー液により膜モジュールを介して原液から水の分離を行っている。

2.本システムの性能概要

  • 逆浸透膜法の3倍の濃縮率を実現
  • 熱に弱い成分や固形成分を含む液も成分を保持したまま高度濃縮することが可能
  • 液の濃縮速度(脱水速度)は小型貸出機で200g/h,中型貸出機で15kg/h
  • 新規膜システムの貸出機(左から中型、小型)

3.今後の展望

現在、顧客への新規膜システムの貸出機を整備し、今後は食品加工メーカーや医薬品メーカーへの貸し出しを開始していく予定です。

従来の技術では困難であった熱に弱い成分を含む液体などを非加熱・非加圧で脱水し、高度濃縮できる特長を活かし、食品・医薬産業などへの幅広い用途展開を図ることで、2020年の実用化を目指します。

以上