「住宅の温熱性能と居住者の意識」調査結果
温熱性能の高い住まいに暮らす人ほど、「快適」、「健康」、「節約」を大切にする傾向に
2019年6月12日
旭化成建材株式会社
旭化成建材株式会社(本社:東京都千代田区、社長:堺 正光、以下「旭化成建材」)快適空間研究所※1は、できるだけ冷暖房設備にたよらない「あたたかい空間」での“心と体と懐があたたかくなるいきいきとした暮らし”を「あたたかい暮らし」と定め、その空間の普及のために情報発信、啓発活動を続けてきました。その活動の一環である「あたたかい暮らし研究会」※2では、首都大学東京 建築学域 須永研究室と共同で、「住宅の温熱性能と居住者の意識」について調査を実施しています。
2018年12月の調査結果において、温熱性能が高い住まいに暮らす人の方が、「快適な住環境で暮らす」、「心身ともに健康でいられる生活をすること」、「光熱費等の生活費を節約すること」を大切に考えている傾向があるということ、また、男性よりも女性においてその傾向が顕著であるという明快な結果を得ましたので、報告いたします。
Ⅰ.今回の調査結果のトピックス
- 1.温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「快適な住環境で暮らすこと」を大切にしている傾向にある。男女別に見ると、全ての温熱性能区分(「高」「中」「低」)において女性の方がその比率が高い。
- 2.温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「心身ともに健康でいられる生活をすること」を大切に考えている。また、健康診断を定期的に受けたり、食事のタイミングを規則正しくしたりする等、具体的に行動している傾向にある。
- 3.温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「光熱費等の生活費を節約すること」を大切にしている傾向にあり、男女別に見ると、全ての温熱性能区分において女性の方がその比率が高い。
Ⅱ.調査概要
- 1.調査目的
- 住まいの温熱環境の実態と、居住者の温熱環境に関する意識・行動、ライフスタイルや価値観を調査することで、社会への情報発信および断熱材事業におけるマーケティング活動の一助とする。
- 2.調査対象
- 関東(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の戸建住宅居住者
20代~70代(回答者数:295名) - 3.調査期間
- 2018年12月
- 4.調査方法
- WEBアンケート調査
- ※温熱性能別の比較について
アンケートで住宅の断熱性能を回答してもらうのは難しいため、本調査では、住まいの温熱性能別の比較をするために、窓ガラスの種類について選択してもらい、その結果を分類し解析。温熱性能「低」:シングルガラス、温熱性能「中」:ペアガラス、温熱性能「高」:Low-Eペアガラスまたはトリプルガラスと回答した人。なお、この分類は、実際の住宅全体の断熱性能と高い相関があることが確認されています。- *参考食野遼 須永修通 大塚弘樹;住宅の断熱性能とライフスタイルの関係に関する研究、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、pp1145-1146、2016.8
Ⅲ.調査結果
1.温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「快適な住環境で暮らすこと」を大切にしている傾向。男女別にみると、すべての温熱性能区分において女性の方がその比率は高い。
普段の生活を送る上で、「快適な住環境で暮らすこと」を大切にしたいと思う比率は、温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど高く、「かなりそう思う」と回答した比率は、温熱性能「高」は51.5%と、「低」の人よりも約20%も比率が高くなっていることがわかりました。
Q.普段の生活を送る上で、「快適な住環境で暮らすこと」を大切にしたいと思うか
また、それぞれの温熱性能区分で男女別に違いをみてみると、すべての区分において、女性の方が大切に思っている比率が高くなっています。また、「かなりそう思う」と「少しそう思う」の合計比率をみてみると、温熱性能「高」の男性は、温熱性能「低」「中」の女性の比率よりも高くなっています。このことから、男女の違いだけでなく、住まいの温熱性能の違いも「快適な住環境で暮らすこと」を大切にする意識に影響を与えていることが推察されます。
Q.普段の生活を送る上で、「快適な住環境で暮らすこと」を大切にしたいと思うか
2.温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「心身ともに健康でいられる生活をすること」を大切に考えている。また、健康診断を定期的に受けたり、食事のタイミングを規則正しくしたりする等、具体的な行動を行っている傾向にある。
普段の生活を送る上で、「心身ともに健康でいられる生活をすること」を大切に考えている比率についても、温熱性能が高い住まいに暮らす人の方が高く、温熱性能「高」は60.4%が「かなりそう思う」と回答しています。
Q.普段の生活を送る上で、「心身ともに健康でいられる生活をすること」を大切にしたいと思うか
男女別にみてみると、すべての温熱性能の区分において女性の方が高い比率になっています。
Q.普段の生活を送る上で、「心身ともに健康でいられる生活をすること」を大切にしたいと思うか
また、健康意識への指標としてよく取り上げられる「定期的に健康診断を受けている」「食事の時間・タイミングを規則正しくしている」「朝食は毎日しっかりとっている」という3つの質問については、「かなり当てはまる」と回答した比率についても、温熱性能が高い住まいに暮らしている人の方が高くなっています。
3.温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「光熱費等の生活費を節約すること」を大切にしている傾向。男女別にみると、全ての温熱性能区分において女性の方がその比率が高い。
普段の生活を送る上で、「光熱費等の生活費を節約すること」を大切に考えている比率についても、同様の傾向が見られました。温熱性能の高い住まいに暮らす人の方が「かなりそう思う」比率は高く、温熱性能「低」よりも14.4%高くなっています。
Q.普段の生活を送る上で「光熱費等の生活費を節約すること」を大切にしたいと思うか
男女別にみてみると、すべての温熱性能の区分において女性の方が高い比率になっています。また、男女共に、温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、大切に思っている比率が高くなっています。
Q.普段の生活を送るうえで「光熱費等の生活費を節約すること」を大切にしたいと思うか
Ⅳ.まとめ
以上、「温熱性能が高い住まいに暮らす人」ほど、「快適な住環境で暮らすこと」、「心身ともに健康でいられる生活をすること」、「光熱費等の生活費を節約すること」を大切に考えている傾向があり、特に女性の方がその傾向が顕著であることがわかりました。また、健康につながる定期健診や、食事をしっかり管理している傾向もあることから、「温熱性能が高い住まいに暮らす人」ほど、「あたたかい暮らし」の実現のために、「自分や家族の日々の暮らしをマネジメントして暮らしている」のではないかと推察されます。
快適空間研究所では、2016年より、住まいの温熱環境の実態と居住者の満足度について調査し、昨年10月には「温熱性能が高い住まいの生活価値」について発表しました。近年、住宅業界では、高断熱住宅が注目され、快適性のみならず、居住者の健康への影響などに多くの関心が集まっています。弊研究所では、今後、さらに、住まいの温熱性能の違いが居住者の暮らし(心と体と懐)にどのような影響を与えるのか等、居住者にとっての生活価値に焦点をあてて調査研究を深掘りしていきたいと考えています。また、住宅の高断熱化を促進するため、その価値を多くの方に理解・共感して頂けるよう、幅広く情報発信していく活動を実施してまいります。
- ※1快適空間研究所
- 1)名称旭化成建材株式会社 快適空間研究所
- 2)所在地東京都千代田区神田神保町1丁目105番地 神保町三井ビルディング
- 3)設立2014年4月
- 4)所長白石 真二
- 5)目的快適な空間を実現するための情報収集と分析及びそれらの結果を踏まえたコンセプト開発、マーケティング活動。
①一戸建の温熱環境と生活実態の把握による居住空間での温熱環境ニーズの発掘
②活動方針に共感いただける社外の関連企業、大学等の研究機関、行政、生活者等との共創
③研究成果の社会や生活者への情報発信と断熱材事業へのフィードバック
- ※2あたたかい暮らし研究会
- 1)発足2015年1月 快適空間研究所内に発足
- 2)主な活動あたたかく生き生きと暮らすための居住空間とライフスタイルの研究
①調査活動:住まいの温熱環境や生活者の暮らしに関するアンケート・訪問・実測調査等の実施
②啓発活動:生活者の温熱環境に関するリテラシー向上のためのセミナー、ワークショップ等の実施
③情報発信活動:生活者に向けたHP、冊子等での情報発信など - 3)主なメンバー旭化成建材株式会社 快適空間研究所、株式会社旭リサーチセンター ハビトゥス研究所、首都大学東京 建築学域 須永研究室、駒沢女子大学 住空間デザイン学類 橘田特任教授
以上