• プレスリリース

「住まいの温熱環境(あたたかさ、涼しさ)とアンチエイジング意識・満足度」調査結果について

温熱性能が高い住まいに暮らす女性ほど、肌の乾燥・みずみずしさに満足している割合は高く87.9% 温熱性能が低い住まいに暮らす女性と比較して約3割高い

2020年10月21日
旭化成建材株式会社

旭化成建材株式会社(本社:東京都千代田区、社長:山越 保正)快適空間研究所※1(以下、「快適空間研究所」)は、できるだけ冷暖房設備にたよらない「あたたかい空間」での“心と体と懐があたたかくなるいきいきとした暮らし”を「あたたかい暮らし」と定め、その空間の普及のために情報発信、啓発活動を続けています。
超高齢社会の日本では、人生100年時代をいきいきと充実した日々を送りたいと考える人が増え、生活の質が一層問われるようになっています。また、ワーク&ライフバランス志向の高まりに加え、コロナ禍で在宅時間が増加したことにより、心も身体も健康に暮らすための住空間へのニーズはより高まっているといえます。
このたび、快適空間研究所では、“肉体的・精神的な老化を少しでも抑え、心も身体も健康で、若さ・若々しさを保つこととそのための取り組み”を「アンチエイジング」と定義し、住まいの温熱環境(あたたかさ、涼しさ)と居住者の「アンチエイジング」意識・満足度の関係性に着目し、アンケート調査を実施しましたので、その結果をご報告いたします。

Ⅰ. 調査結果のトピックス

1. 「アンチエイジング」への興味と心がけ

  • 女性がアンチエイジングで最も興味があるのは、「肌の若々しさ」で56.9%。
  • 「肌の若々しさ」に影響するとされている※2部屋の「温度・湿度の管理」を、「アンチエイジング」のために心掛けている人は、「規則正しい生活・食事」などと比較して圧倒的に少ない。(「規則正しい生活・食事」55.5%、「部屋の温度管理」12.6%、「部屋の湿度管理」6.7%)

2. 住まいの温熱環境と女性の「肌」の関係について

  • 温熱性能が高い住まい※3に暮らす女性ほど、「肌の状況(乾燥・みずみすしさ)」に満足している割合が高く、温熱性能が低い住まいに暮らす女性と約3割の差がある。(「温熱性能の高い住まい」87.9%、「温熱性能の低い住まい」60.6%)
  • 温熱性能が高い住まいに暮らす女性ほど、「肌の張り・ツヤや潤い」に関して、同年代の中で良い方だと感じている割合が高い。(「温熱性能の高い住まい」75.8%、「温熱性能の低い住まい」57.4%) 
  • 住まいの温度や湿度に満足している人は、自身の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に満足している割合が9割を超える。

Ⅱ. 調査概要

1. 調査目的
住まいの温熱環境の実態と、居住者の住まいの温熱環境に関する意識、行動、ライフスタイルや価値観を調査し、社会への情報発信および弊社事業におけるマーケティング活動の一助とする。
2. 調査時期
2020年2月28日~3月4日
3. 調査対象
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
戸建持家居住者 30歳~74歳 男女 (回答者数:1123名)
4. 調査方法
WEBアンケート調査

Ⅲ. 調査結果

1. 「アンチエイジング」への興味と心がけ

  • (1)女性は「肌の若々しさ」(56.9%)、男性は「体力の維持」(48.1%)に最も興味がある

    「アンチエイジング」に興味がある項目について見てみると、女性では、1位「肌の若々しさ」56.9%、 2位「体力の維持」52.8%、3位「気持ちの若々しさ」44.3%と続いた一方、男性は「体力の維持」48.1%が1位、2位「足腰の力の維持」39.6%、3位「脳の力(考える力)の維持」28.7%でした。
    「アンチエイジングに興味はない」を除くすべての項目において、男性よりも女性が上回っていますが、女性では、肌や気持ちに関するアンチエイジングへの興味が高いのに対して、男性は見た目の若々しさよりも身体や脳に関する能力への興味が高い傾向にあります。

  • (2)男女ともに年代が高いほど、身体能力に関する興味が高くなっている

    興味がある内容として上位に挙がった項目について、年代別にみてみます。
    女性では、「肌の若々しさ」については30代~60代で50%を超え、70-74歳も46.8%と半数近くになっています。「肌の若々しさ」への興味はすべての年代で高くなっていることがわかりました。一方で、「気持ちの若々しさ」については、60代以上で割合が高くなっており、年齢を重ねても、若々しい気持ちでありたいと思う方が多いことがわかります。また、「体力の維持」、「足腰の力の維持」、「脳の力(考える力)の維持」、「認知症の予防」といった、身体や脳に関する能力への興味についても、年代が上がるほど高くなっています。

続いて、男性で年代別に見てみると、「肌の若々しさ」への興味は30代が30.3%で、最も高くなっていました。一方で、「気持ちの若々しさ」、「体力の維持」、「足腰の力の維持」、「脳の力(考える力)の維持」、「認知症の予防」など、身体や脳の能力に関する項目に興味がある割合は、年代が高くなるほど高くなっていました。

  • (3)アンチエイジングのために心掛けていることで最も多いのは「規則正しい生活・食事」。「肌の若々しさ」に影響するとされている部屋の「温度・湿度の管理」を心掛けている人は少ない。

    アンチエイジングのために心掛けていることは、男女ともに「規則正しい生活・食事」が最も高くなっています。他に高い項目は「食事の栄養バランス」「適度な運動」「良質な睡眠」と続き、仕事とボランティアを除くすべての項目において女性の方が高くなっています。
    女性がアンチエイジングで最も興味のある「肌の若々しさ」を保つことについては、室内環境と皮膚水分量の関係についての既往研究※2で、室内の絶対湿度、相対湿度および室温が高いほど、皮膚の水分量が多くなるという結果報告があり、また、一般的にも、保湿をすることが大切だということは知られています。しかし、「規則正しい生活・食事」と比べて「部屋の温度管理」、「部屋間の温度差をなくす」「部屋の湿度管理」を心掛けている人は、少なくなっており、「肌の若々しさ」のために、室内の温度・湿度管理まで意識が及んでいる人は少数であることが分かりました。

2. 住まいの温熱環境と、女性の「肌」の関係について

  • (1)温熱性能が高い住まい※3に暮らす女性ほど、「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に満足している割合が高く、温熱性能の低い住まいに暮らす女性と約3割の差がある。

    室内の温熱環境と女性の「肌の状況」の関係をみるため、住まいの温熱性能別に、女性の冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に満足している割合を比較してみます。
    温熱性能が高い住まいに暮らす女性では、「肌の状況」に満足している人は87.9%と、温熱性能が低い住まいに暮らす人(60.6%)よりも、27.3%高くなっています。

参考

上記結果において、年代による影響がどの程度あるかを調べるため、30代のみで、住まいの温熱性能別に比較をしたところ、温熱性能が高いほど肌の状況に対する満足度が高くなっていました。他の年代も同様に、温熱性能が高いほど肌の状況の満足度が高くなっていました。(母数が少ないため参考データとしてご紹介。)

  • (2)温熱性能が高い住まいに暮らす女性ほど、「肌の張り・ツヤや潤い」に関して、同年代の中で良い方だと感じている割合が高い。

    「同年代の中で、肌の張り・ツヤや潤いは良い方だと思う」かについても、温熱性能が高い住まいに暮らす女性は、そう思う(かなりそう思う+そう思う+どちらかといえばそう思う)割合が75.8%と高く、温熱性能が低い住まいに暮らす人(57.4%)よりも、18.4%高くなっています。
    (1)(2)ともに、温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、肌の状況(乾燥・みずみずしさ、張り・ツヤや潤い)に満足している傾向にあり、既往研究※2の「室内の絶対湿度、相対湿度および室温が高いほど、皮膚の水分量が多くなるという結果報告」と類似の傾向を示すアンケート結果といえそうです。

  • (3)住まいの温度や湿度に満足(たいへん満足+満足)している人は、自身の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に満足している割合が9割を超える

    室内の温度・湿度に対する満足度別に、女性の冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に満足している割合を比較してみます。
    「室内の温度」に「たいへん満足」と回答したすべて(100.0%)の人が、「肌の状況」に満足(たいへん満足+満足)し、「室内の温度」に「満足」と回答している人では、90.2%もの人が「肌の状況」に満足(たいへん満足+満足+どちらかといえば満足)しています。「室内の温度」に不満(どちらかといえば不満+不満+たいへん不満)と回答した人の「肌の状況」に満足している割合(46.0%)と比べると、44.2%も高くなっています。
    「室内の湿度」に対する満足度別でみても、同様に、湿度に「たいへん満足」と回答したすべて(100.0%)の人が、肌の状況に満足(たいへん満足+満足)し、「室内の湿度」に「満足」と回答している人では、92.0%が「肌の状況」に満足(たいへん満足+満足+どちらかといえば満足)しています。 また、「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」と室内の温度・湿度の「満足度」との相関係数は、「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」と「室内の温度の満足度」が0.623、同じく「室内の湿度の満足度」とは0.705で相関関係※4にあることが分かりました。

Ⅳ. まとめ

今回の調査から、女性がアンチエイジングで最も興味があるのは、「肌の若々しさ」で、その「肌の若々しさ」に影響があるとされている部屋の「温度・湿度管理」を心掛けている人が少ないことがわかりました。また、温熱性能が高い住まいに暮らす女性ほど、肌の状況(乾燥・みずみずしさ)に満足している人が多いという実態も明らかになりました。
人々の在宅時間は、コロナ禍で増加し、いきいきと健康に暮らせる住空間へのニーズはより高まっていると言えます。快適空間研究所では、生活者の「あたたかい暮らし」の実現に貢献するため、「温熱性能の高い住まいにおける居住者の家事や活動量、空間における生活価値」を伝えてきましたが、合わせて、温熱性能と「アンチエイジング」の関係について、明らかにするための研究を続けてまいります。

  • ※1快適空間研究所
    • 1)名称旭化成建材株式会社 快適空間研究所
    • 2)所在地東京都千代田区神田神保町1丁目105番地 神保町三井ビルディング
    • 3)設立2014年4月
    • 4)所長白石 真二
    • 5)目的快適な空間を実現するための情報収集と分析及びそれらの結果を踏まえたコンセプト開発、マーケティング活動。
      ①一戸建の温熱環境と生活実態の把握による居住空間での温熱環境ニーズの発掘
      ②活動方針に共感いただける社外の関連企業、大学等の研究機関、行政、生活者等との共創
      ③研究成果の社会や生活者への情報発信と断熱材事業へのフィードバック
  • ※2(参照)既往研究について
    • 開原典子、高田暁;室内滞在時の皮膚含水率と温湿度関係についての実態調査、日本建築学会環境系論文集 第82巻 第734号、337-345、2017年4月
    • 櫻井柚夏、廣瀬文郁、松前和則、村上礼雄、田辺新一;暖房時の室内温熱環境が皮膚水分量と熱的快適性に与える影響、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2014.9.3 〜 5(秋田)}
    • 岩城朱美、秋元孝之、岩前篤;アンチエイジングから見た居住環境の有り様に関する研究-睡眠の室内環境要因の影響、定量化に関する基礎実験、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2015.9.16 〜 18(大阪)}
  • ※3温熱性能別の比較について

    アンケートで住宅の断熱性能を回答してもらうのは難しいため、本調査では、住まいの温熱性能別の比較をするために、窓ガラスの種類について選択してもらい、その結果を分類し解析している。
    温熱性能「低」:シングルガラス、温熱性能「中」:ペアガラス、温熱性能「高」:Low-Eペアガラスまたはトリプルガラスと回答した人。なお、この分類は、実際の住宅全体の断熱性能と高い相関があることが確認されています。
    ※参考:食野遼 須永修通 大塚弘樹;住宅の断熱性能とライフスタイルの関係に関する研究、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、pp1145-1146、2016.8

  • ※4相関関係について

    相関係数とは2変数間の「関係の強さ」を表現する指標。一般的に、相関係数の目安は以下のように解釈されます。
    「-1.0~-0.7:強い負の相関がある。-0.7~-0.4:やや強い負の相関がある。-0.4~-0.2:弱い負の相関がある。-0.2~0.2:ほとんど相関がない(0.0は無相関)。0.2~0.4:弱い正の相関がある。0.4~0.7:やや強い正の相関がある。0.7~1.0:強い正の相関がある。」 本調査において、「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」との相関係数は、それぞれ「室内の温度の満足度」は0.623でやや強い正の相関、「室内の湿度の満足度」は0.705で強い相関があります。

以上