CSR調達
方針
旭化成グループでは、「すべてのお取引先は、旭化成グループにとって大切なパートナーである」との考えに立ち、お取引先に対して誠実な対応を行うことを方針としています。
そのために、当社グループは、目指すべき理念と日々の行動のよりどころとなる「購買ミッション(使命)」と「ビジョン(目指す姿)」を制定し、「購買方針」の遵守に努め、CSRを重視した購買活動を推進します。
この方針には、環境側面では、お取引先におけるエネルギー使用や気候変動、生物多様性、汚染・廃棄物の削減、資源の効率的利用といった環境負荷低減等の項目を、社会側面では、差別禁止や機会均等、結社の自由、過度の労働時間の削減や最低賃金に関する現地法の遵守の項目を含めています。
法令を遵守し、地球環境や人権に配慮し、公正かつ透明性を重視した購買活動を通じて、お取引先との信頼関係を構築していきます。
旭化成グループの購買理念
サプライヤー行動規範
当社グループは、世界のさまざまな国や地域で事業活動を展開していますが、気候変動対策や人権尊重など持続可能な社会実現に向けた社会課題への対応は、当社グループのみならずサプライチェーン全体で推進することが求められています。
そこで、購買方針、サステナビリティ基本方針、人権方針、品質方針等に基づきCSR調達を推進するためのツールとして、2021年に「サプライヤーガイドライン」を策定しました。2024年度においては、旭化成ホームズ、旭化成メディカル、旭化成エレクトロニクス等の調達担当と最新動向を共有の上、グループとしての活動の方向性、各項目に記載する内容についての検討会を行い、新たに「旭化成グループサプライヤー行動規範」としてまとめました。お取引先に当社グループの方針へのご理解・ご同意をいただくため、購買方針と併せてウェブサイト上へ公開するとともに、お取引先にはこの行動規範への同意書への署名・提出のお願いを開始しています。今後もお取引先のCSR評価を通じて遵守状況をモニタリングし、共に改善を進めていきます。
マネジメント体制
当社グループの購買方針は購買・物流統括部が管轄し、サステナビリティ推進部との連携のもとで、グループ各社と共有しています。
2022年度からは購買・物流統括部内でのサステナビリティ推進担当部署を明確化し、購買・物流部門におけるCSR調達活動を強化しています。また、昨今の調達環境の変化を踏まえ、サプライチェーンマネジメントに関しては、以下の体制にて活動を推進しています。
- サプライチェーンマネジメント体制図
「パートナーシップ構築宣言」制度への参加
旭化成は、2022年に内閣府や中小企業庁などが推進する「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、「パートナーシップ構築宣言」を公表しました。
当社は、宣言にあたり、以下の個別項目を明示しています。
- 当社は、「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同の上、自主行動宣言のもと、お取引先や物流事業者等の関係者との相互理解と協力に基づく物流の改善に取り組んでいます。
- 当社は、「サプライヤー行動規範」を制定し、人権・労働、安全衛生と健康、環境、倫理等サプライヤー企業の皆様にも理解と取り組みの推進を展開しています。
- 「下請代金支払遅延等防止法」の社内教育を継続的に実施しています。
当社は、今後もサプライチェーンのお取引先との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップの構築を目指していきます。
なお、旭化成グループでは当社のほかに、旭化成エレクトロニクス、旭化成ホームズ、旭化成建材、旭化成ファーマの各社も「パートナーシップ構築宣言」を公表しています。
購買方針およびサプライヤー行動規範の浸透
お取引先に購買方針およびサプライヤー行動規範を浸透させるべく、当該ウェブサイトでの開示およびCSR調達アンケート依頼の際に周知に努めています。2024年度は、CSR調達アンケート実施時に、対象となった国内お取引先約350社を対象としたオンライン説明会を開催し、その中で購買方針、サプライヤー行動規範に関する説明も行いました。
お取引先のCSR評価
当社グループは、持続可能なサプライチェーンの構築を目的に、お取引先の皆様と共にCSR調達の推進に取り組んでいます。
CSR調達におけるお取引先調査は、①新規取引開始時の評価、②継続お取引先の評価の2つの観点で実施しています。
新規お取引先への対応
新規お取引先との取引開始時には、購買方針に基づく事前審査でCSRの観点を含む評価を行った上で、取引可否を判断しています。
- 新規お取引先への対応フロー
事前審査の結果、重大な問題が検出された場合は、お取引先に早期の改善を促します。その後の再審査で問題の是正が確認されなかった場合は、取引不可となる可能性があります。
継続のお取引先への対応
継続のお取引先には、CSRを意識した事業活動を実践していただくため、2012年からCSR調達アンケート調査を開始し、毎年実施しています。さらに2021年より、国連グローバル・コンパクト「CSR調達セルフ・アセスメント・ツール・セット」最新版を活用した改訂を行い、設問数、選択肢を国際基準のESGの視点で見直しました。毎回必要に応じて対象先を追加した上で調査を実施し、結果の開示を行っています。これにより、お取引先と協力してCSRのレベル向上を図るとともに、お取引先の活動理解と対話を通じてモニタリングの仕組みを強化し、サプライチェーンにおける環境・社会側面のリスクの把握と対策、持続可能なサプライチェーンの構築につなげています。
設問項目
- 1.CSRにかかわるコーポレート・ガバナンス
- 2.人権
- 3.労働
- 4.環境
- 5.公正な企業活動(倫理・コンプライアンス)
- 6.品質・安全性
- 7.情報セキュリティ
- 8.サプライチェーン
- 9.地域社会との共生
2024年度CSR調達アンケート
2024年度は、主要なお取引先564社にアンケートを依頼し、563社より回答をいただきました。対象お取引先には、購買・物流統括部との取引のうち契約金額上位85%を占める資材お取引先に加え、サプライチェーン管理の重要性を踏まえて一部グループ会社のお取引先も加えています。
CSR調達アンケート 回答お取引先数と評価
評価 | 原料お取引先 | 資材お取引先 | 物流お取引先 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
2021年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2024年度 (グループ会社取引先含む) |
2023年度 | ||
A | 79社(78%) | 164社(76%) | 119社(56%) | 317社(56%) | 13社(65%) | |
B | 17社(17%) | 40社(19%) | 60社(28%) | 181社(32%) | 4社(20%) | |
C | 3社(3%) | 10社(4%) | 28社(13%) | 56社(10%) | 3社(15%) | |
D | 2社(2%) | 1社(1%) | 7社(3%) | 9社(2%) | 0社(0%) | |
計 | 101社 | 215社 | 214社 | 563社 | 20社 |
項目別にみると、「労働」「公正な企業活動」「品質・安全性」「情報セキュリティ」が高い一方、「環境」「サプライチェーン」「地域社会との共生」が相対的に低い結果となりました。
- CSR調達アンケート結果(2024年度)
当社グループでは、CSR調達アンケートにご回答いただいたお取引先に対してフィードバックシートの発信を行っています。またC、D評価となったお取引先については、実際にお取引先を訪問、もしくはウェブ面談を実施して状況を確認し、改善支援を行っています。
面談の結果、重大な問題が検出された場合は、お取引先と意見交換等を行い、早期の改善を促しています。その後のフォローアップ審査で問題の是正が確認されなかった場合は、取引の中断および見直しを検討する可能性があります。
また上記フォローアップに加え、前回実施アンケート比較で大幅に評価を上げられたお取引先との面談も行い、CSR推進活動のベストプラクティスに関するヒアリングも進めています。
お取引先のCSR調達アンケート評価の改善支援
2024年度には、2023年度アンケート(原料・物流お取引先)でC、D評価となったお取引先14社のうち、12社と面談を実施しましたが、2024年度は、「重大な問題」が検出されたお取引先はありませんでした。また、2021年度アンケートより大幅に評価を上げられたお取引先4社とも面談を実施し、CSR推進活動のベストプラクティスに関するヒアリングを行いました。
2024年度アンケートにおいてC、D評価であったお取引先65社についても個別にすべての回答内容とサプライチェーンに及ぼすリスクの評価・分析を行い、当社グループのフィードバックに対する改善対応について、必要に応じてコミュニケーションをとっていきます。
- 継続のお取引先への対応フロー
サプライヤーの環境に関する認証
CSR調達アンケ―トでは、国際規格のISO14001認証等の第三者認証制度の取得による環境マネジメント体制の状況も調査しています。2023年度アンケートにおいては主要原料お取引先のうち約8割(母数215社)、2024年度アンケートにおいては主要お取引先のうち約7.5割(母数563社)が環境保全を推進する体制や仕組みを定めていることを確認しています。
紛争鉱物への対応
コンゴ民主共和国およびその隣接国から産出される鉱物の一部が非人道的な武装勢力の資金源となっており、2010年に米国で成立した金融規制改革法をはじめとして、そうした紛争鉱物の使用を排除していく取り組みが世界的に広がっています。
当社グループは、紛争鉱物の問題を重く捉え、紛争および非人道的活動に加担しないように、サプライチェーンの透明性を図り、責任ある鉱物調達を実践していきます。
2024年度の取り組み
CSR調達アンケートに加え、紛争鉱物の使用による人権に対する負の影響への加担を防止するため、紛争鉱物に関する個別調査を定期的に実施しています。2024年度は紛争鉱物(タンタル、錫、タングステン、金、コバルト、およびマイカ)に該当する可能性がある調達原料全9品目についてお取引先へ調査依頼を発信し、全原料において紛争鉱物の使用に該当しないことを確認しました。また本調査活動にはRMI(Responsible Minerals Initiative)が発行しているCMRT(紛争鉱物調査票)およびEMRT(拡張鉱物調査票)を活用しています。
持続可能な物流への貢献
旭化成グループは、主に荷主の立場から、持続可能な物流への貢献に取り組んでいます。トラック運転者の不足が深刻な状況の中、トラック輸送の生産性向上・物流の効率化・運転者の労働環境改善を目指して、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動に関する自主行動宣言を2019年に発表し、改善の取り組みを行っています。
2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用され、長距離輸送を中心に輸送手段確保が難しくなった「2024年問題」に対応するため、モーダルシフトや荷待ち・荷役等時間の短縮、ドライバーが行う付帯作業の適正化などを推進しています。
また、当社も参画する経済産業省・国土交通省主導の「フィジカルインターネット実現会議」内に設置されている「化学品ワーキンググループ」は、物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画を2023年12月に発表しました。この自主行動計画に基づき、当社はお客様や物流事業者と連携し商慣行の改革などの取り組みを推進していきます。
自社従業員に対する教育
全社購買会議
当社グループでは毎年、各事業、グループ会社の購買担当者が一同に会する全社購買会議を開催しています。当会においては購買方針やミッション・ビジョンの共有を図るとともに、外部講師を招聘しての講演会やグループディスカッションを通じた購買組織間の交流、ノウハウや知識の共有を行っています。今後も本活動を通じて、持続可能なサプライチェーン構築に向けた購買機能の強化を進めていきます。
- 2024年度全社購買会議の様子
研修を通じた教育活動
当社グループでは、持続可能な調達を推進するため、購買・物流統括部がサステナビリティ推進部、グループ会社の調達部門と連携して、調達関連部門の従業員に対する教育を継続的に行っています。2024年度の教育活動実施状況は以下の通りです。
研修 | 内容 | 実施概要 |
---|---|---|
購買担当者研修① | 下請法について | 対象:原料担当者 参加者数:24名 |
購買担当者研修② | サプライチェーンリスクマネジメントに関わる動向について | 対象:原料担当者 参加者数:24名 |
購買担当者研修③ | 石油化学産業の再編について | 対象:原料担当者、資材担当者 参加者数:139名 |
上記に加え、サプライチェーンのサステナビリティ活動に関するeラーニングを社内で作成し、各契約担当者が自主的に受講しています。
2024年度の取り組み
上記の教育活動に加え、2023年度より一部の資材担当者で構成する「サステナアンバサダー制度」を開始し、2024年度も継続的に部内のサステナビリティリテラシー向上に努めています。
具体的には、「CSR調達アンケートのフォロー活動高度化に向けたディスカッション」「サステナビリティに関わる業界動向の勉強会」「サプライヤーエンゲージメント活動強化に向けたディスカッション」を実施しました。
お取引先とのコミュニケーション
取引先懇談会
2024年度より主要な資材お取引先を対象とした取引先懇談会を開始し、2024年度は第1回を延岡地区で開催しました。本会には延岡地区のお取引先55社にご参加いただき、旭化成グループの購買理念やサプライヤー行動規範、CSR活動の進め方に関する説明を行うとともに、お取引先によるCSR活動の事例紹介も実施しました。
2025年度以降は他工場地区での実施等、会の開催拡大を図っていく方針です。
- 2024年度取引先懇談会の様子
その他お取引先とのコミュニケーション
当社グループの各生産地区では、事故・災害防止を目的に「安全協議会」を開催し、お取引先との情報交換を定期的に行っています。
さらにサステナビリティ関連の動向紹介や推進活動、意見交換など実際に複数のお取引先を訪問、もしくはご来社いただくことにより、丁寧なコミュニケーションに積極的に取り組んでいます。今後も引き続きお互いにより良いコミュニケーションをとり、安全性の向上を図るとともにサステナビリティ調達を推進していきます。
また、当社グループのコンプライアンスホットラインは、お取引先からの通報・相談も受け付けています。