汚染防止と資源循環

方針

旭化成グループでは、地球環境対策に関する方針の中に「循環型社会の構築」を、またマテリアリティにおいても「循環型社会への取り組み」を掲げ、ライフサイクル全体を通して効率的な資源・エネルギー利用と環境負荷低減を目指しています。産業廃棄物削減、化学物質の負荷低減、大気汚染・水質汚濁防止、資源の有効活用等の各取り組みを通じて、循環型社会の構築に向けて取り組んできました。
また、「中期経営計画 2027 ~Trailblaze Together ~」(2025-2027年度)においても、2030年に目指す姿の実現に向けて取り組む課題の一つに位置づけ、循環型経済社会の構築に貢献していきます。

産業廃棄物の発生抑制と再資源化推進

当社グループでは、産業廃棄物の3R―抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)に加えてRenewableに取り組んでいます。

当社グループ(国内、海外)の2024年度の産業廃棄物発生量は559.1千トンで、うち特別管理産業廃棄物は19.9千トンでした。また、産業廃棄物の再資源化率※1は72.5%、非再資源化率※2は27.5%(うち熱回収は20.6%)でした。今後も再資源化を推進していくために、廃棄物の分別、再資源化可能な処理先の模索等の取り組みを進めていきます。
また、廃プラスチックの排出抑制、再資源化率向上の取り組みを推進しています。2024年度の国内廃プラスチック排出量は19.4千トン(前年度比4.9%減少)、再資源化率は45.1%(前年度から1.8%減少)でした。排出抑制として、原単位向上(不要端材の排出抑制)の取り組みや排出プラスチック有価化(原料化等)の取り組みを進めています。再資源化の取り組みとして、廃プラスチックのマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル処理可能なリサイクラーへの処理委託を進めています。今後も廃プラスチックの排出抑制、再資源化の取り組みを進めていきます。
当社グループではこれまで国内廃プラスチックの埋め立てをゼロにする目標※3に向けて取り組んできました。2024年度は一過性の建設廃棄物を有効利用できなかったことから、廃プラスチック埋め立て量は4.5トンとなり、目標を達成できませんでした。引き続き廃プラスチック埋め立てゼロへの取り組みを進めていきます。
PCB※4廃棄物についても、適正に管理し処分期間内での処分を計画的に進めています。
また、産業廃棄物管理票(マニフェスト)による日常管理に関して、電子マニフェスト化を進め、管理の強化を行っています。さらに産業廃棄物収集・運搬業者および処理業者が適正な処分を行っているか、定期的に現地を訪問して、その処理状況を確認しています。

  • ※1再資源化率ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクルの割合
  • ※2非再資源化率熱回収、減量化、埋め立て処分の割合
  • ※3廃プラスチックの埋め立てをゼロにする目標住宅事業で発生する廃プラスチックを除く
  • ※4PCB(ポリ塩化ビフェニル)“Polychlorinated Biphenyl”の略で、難分解性かつ、人の健康および生活環境に被害を及ぼす恐れがあるため、日本では製造・使用が実質的に禁止されています。
  • 廃棄物発生量(千t):国内525.8、海外33.3、合計559.1、割合100% 再資源化量(千t):国内36.2、海外0.1、合計36.3、割合6.5% 非再資源化量(千t):国内36.0、海外16.6、合計52.6、割合9.4% 外部排出量(千t):国内453.5、海外16.6、合計470.1、割合84.1% 再資源化量(千t):国内361.1、海外7.9、合計369.0、割合66.0% 非再資源化量(千t):国内92.5、海外8.7、合計101.2、割合18.1%
    廃棄物処理フロー(2024年度実績)
  • 2020年度から2024年度までの国内および海外における産業廃棄物発生量(単位:千t)を示した棒グラフです。2020年度は571千t(国内542千t、海外29千t)、2021年度は577千t(国内530千t、海外47千t)、2022年度は601千t(国内556千t、海外45千t)、2023年度は514千t(国内477千t、海外37千t)、2024年度は559千t(国内526千t、海外33千t)であることを表しています。
    産業廃棄物発生量の推移
  • 2020年度から2024年度までの再資源化および非再資源化の割合(単位:%)を示した棒グラフです。2020年度は再資源化73%、非再資源化27%、2021年度は再資源化71%、非再資源化29%、2022年度は再資源化75%、非再資源化25%、2023年度は再資源化72%、非再資源化28%、2024年度も再資源化72%、非再資源化28%であることを表しています。
    再資源化割合の推移
    • 2020年度~2021年度は固形燃料化、原燃料化を再資源化(マテリアルリサイクル)にカウント
      2022年度以降は非再資源化(熱回収)としてカウント

建材・住宅事業の産業廃棄物の削減

建材事業においては、旭化成建材の広域認定制度※1により販売したヘーベル(ALC)パネルを回収し、自社工場でリサイクルしています。また、旭化成ホームズ※2では、住宅建設現場の廃棄物の発生量の削減、廃棄物の分別回収に取り組んでおり、新築建設現場では、最終処分量ゼロを継続しています。

  • 建設現場→へーベル廃材→旭化成建材広域認定工場 穂積工場/境工場→へーベル、建設現場→へーベル廃材→委託工場(関東)外部委託→セメント原料・軽量人工土壌
    「ヘーベル(ALC)パネル廃材」リサイクルの仕組み
  • ※1広域認定制度環境大臣が産業廃棄物の再資源化に資する広域的な処理を行う者を認定し、関係する地方公共団体ごとの許可を不要とする特例制度のこと。産業廃棄物の再資源化をより一層促進させるために創設されました。
  • ※2旭化成ホームズの循環型社会への取り組みについては、こちらをご覧ください。

化学物質の負荷低減

当社グループでは、PRTR※1法対象物質や自主的に定めた化学物質に関して、有害性の高いものや排出量の多いものから優先的に削減に取り組んでいます。下記のグラフに示すように、PRTR法対象物質の排出量およびVOC※2排出量は、2000年度対比それぞれ91%、92%削減しました。今後も運転管理、設備管理を強化し、不測の排出を削減していきます。

  • PRTR対象物質の大気および水域への排出量(単位:t)を示しています。2000年度は4,890t、2020年度は300t、2021年度は290t、2022年度は440t、2023年度は600t、2024年度は450tです。なお、2023年度からは法改正によりPRTR法対象物質が変更されています。
    PRTR法対象物質排出量の推移
  • 2000年度から2024年度までのVOC排出量(単位:t)を示した棒グラフです。2000年度には10,400tの排出が記録されており、その後の期間において排出量は減少しています。2020年度には920t、2021年度には1,000t、2022年度には1,200t、2023年度には1,000t、そして2024年度には870tとなっています。
    VOC排出量の推移
  • ※1PRTR制度 “Pollutant Release and Transfer Register”の略で、有害性のある化学物質を取り扱う工場や事業所が、化学物質ごとに環境への排出量や、廃棄物としての移動量を把握・報告(登録)し、その結果を国が公表する制度です。
  • ※2VOC “Volatile Organic Compounds”の略で、揮発性有機化学物質のことです。排出されたときに気体状の物質すべてを指します。ただし、メタンおよび一部フロン類は、オキシダントを形成しないことからVOC規制から外れています。

フロン排出抑制の取り組み

当社グループではフロン排出抑制法に基づき法対象機器、設備の適切な維持管理、フロン漏えいの対策に取り組んでいます。当社グループでは冷媒管理システム(RaMS)の導入を進めており、法対象機器の簡易点検、定期点検等の適正管理に努めています。当社単体の2024年度フロン類算定漏えい量は972.3t-CO2でした。また、当社グループのフロン類算定漏えい量は1602.7t-CO2でした。
今後も継続してフロン漏えいの対策に取り組んでいきます。

  • フロン類算定漏えい量機器の整備時にフロン類の充塡回収をした場合に、充塡・回収証明書に基づき算出したフロン類の漏えい量。
  • 2021年度から2024年度までのフロン類算定漏えい量の推移(単位:千t-CO₂)の推移を示した棒グラフです。2021年度は1.72千t-CO₂、2022年度は1.33千t-CO₂、2023年度は0.62千t-CO₂、2024年度は1.60千t-CO₂となっています。
    旭化成グループ(国内)フロン類算定漏えい量の推移

大気汚染防止

当社グループでは、大気、水域および土壌や地下水を汚染しないよう、排出管理、漏えい防止対策を実施しています。また、臭気対策としての排ガス吸収設備の導入や、排水処理施設の能力増強等、設備対応も実施しています。土壌汚染に対しては、土壌汚染対策法および関係条例に則り、調査・措置を実施しています。大気汚染防止法に関わる物質については、継続して規制基準内で管理しています。

  • 2020年度から2024年度までの各拠点(延岡、川崎、水島、守山、富士、大仁、鈴鹿、その他)におけるSOx排出量(単位:t)の推移を示した棒グラフです。2020年度は約5,200t、2021年度には約6,800t、2022年度は約3,700t、2023年度は2,000t、2024年度は2,000tとなっています。
    SOx排出量の推移
  • 2020年度から2024年度までの各拠点(延岡、川崎、水島、守山、鈴鹿、富士、大仁、その他)におけるNOx排出量(単位:t)の合計を示した棒グラフです。2020年度は3,600t、2021年度は3,500t、2022年度は2,600t、2023年度には1,700t、2024年は1,900tとなっています。
    NOx排出量の推移
  • 2020年度から2024年度までの各拠点(延岡、水島、守山、富士、大仁、川崎、鈴鹿、その他)における排出量(単位:t)の合計を示した棒グラフです。2020年度は110t、2021年度は140t、2022年度は90t、2023年度は70t、2024年度は70tとなっています。
    ばいじん排出量の推移

方針

旭化成グループは、循環型社会構築のため、事業活動において、ライフサイクル全体を通して使う資源・エネルギーを効率よく使用し、環境負荷を低減することを推進します。
具体的には、3R(Reduce, Reuse, Recycle)の推進とともに、低環境負荷な資源・エネルギーや再生可能な資源・エネルギーの使用割合を高めることを推進します。

当社グループの取り組み

当社グループは、使用済みプラスチックのリサイクル、バイオマス原料の使用、製品の長寿命化やリサイクル性の向上などに取り組んでいます。

  • 当社の主な貢献機会 易リサイクル素材 長寿命化 中古品流通 業界/行政との協働 リサイクル技術 基礎化学品創出 デジタルインフラ 持続可能な資源利用 再生可能原材料→素材製造(従来の貢献)→最終製品化→使用→リユース→回収→分別→資源化

資源循環に関する目標

当社グループは以下の目標を設定し、経済産業省が設置し、管理・運営するサーキュラーパートナーズ(CPs)にて登録、開示を行っています。

項目 数値 単位 達成時期
①イオン交換膜法の食塩電解セルレンタルサービス採用社数 10 2027年度
②戸建住宅「ヘーベルハウス」、低層集合住宅「へーベルメゾン」における長期定期点検実施率 70 2025年度

<概要>
①これまで、当社の食塩電解プロセスのお客様は、自身が所有する電解セルを補修するために遊休資産化しやすい予備品を所有しメンテナンスしていました。電解セルレンタルサービスを利用することで、お客様ごとに予備品を持つのではなく、複数のお客様でReuseされ、域内で電解セルが有効活用されます。電解セルに使用される貴金属について、3R(Reduce、Reuse、Recycle)を実現可能とします。

②ホームズでは事業創成期より耐震・耐火・耐久性を重視した戸建住宅「ヘーベルハウス」および低層集合住宅 「ヘーベルメゾン」を提供し、さらに1998年にはロングライフ住宅の実現、 2020年にはALL for LONGLIFEの思想を通じて、永く住み続けられる住まいを追求してきました。築後30~60年の間に5年ごとの定期点検が確実に実施されることを指標管理することで、サーキュラーエコノミーの原点である製品の長期使用の推進を図るとともに成果を確認することとしています。

取り組み事例

イオン交換膜法食塩電解事業

基礎化学品である苛性ソーダと塩素を製造するプロセスを販売するイオン交換膜法食塩電解事業においては、上記の通り、資源利用効率の向上と貴金属などの有効活用につながる電解セルレンタルサービスに取り組んでいます。また、顧客の電解プロセス運転状況のモニタリングも進めており、従来のモノ売りからソリューション型事業への転換を進めるなど、サーキュラーエコノミーに適合した事業への展開を図っています。

  • 従来のモノ売りからソリューション型事業へと変化≫ 従来のモノ売り 電解槽、交換膜の開発・製造・販売・サービス≫ 新たなサービスの提供R2のモニタリングシステムと当社の 製品開発技術、サポート力を融合し、予兆保全・ 最適運転提案 イオン交換膜法 食塩電解槽 販売(R2 管理プラットフォーム:モニタリングシステム⇔資產管理 データベース⇔クラウド管理 適切な運転管理)(4年)交換膜 | 更新→(8年)交換膜 / 電極 更新→(12年)交換膜 | 更新→(16年)交換膜 / 電極 更新

住宅事業

サーキュラーエコノミーの実現に資する長寿命な住宅(商品・サービス)を提供しています。LONGLIFEを体現するために、住宅のライフサイクルを考えた仕様開発、邸別設計・施工、60年無料点検に代表されるアフターサービス、ストックの高付加価値化、改修や相続時のコンサルティング等で全体システムを構築しており、当システムをお客様およびパートナー企業とともに機能させることで、世代を超えた住宅の循環利用を可能としています。

  • 製品設計⇒部材製造⇒個別設計⇒施工⇒居住⇒長寿命化⇒次の世代居住 LONGLIFEを目指したハード・ソフト・サービスの展開 廃棄物のデータ分析・削減提案
    旭化成ホームズグループにおけるサーキュラーエコノミーの全体像

他にも、当社はさまざまな観点からサーキュラーエコノミーの実現に向けて取り組んでおり、大学、研究機関、企業各社など多様なステークホルダーとの連携、国家戦略との連動も重視しています。そこで、それらの共創の場として、サステナブルポリマーの提供を可能にする社会システムの早期実現を目指した「旭化成-産総研 サステナブルポリマー連携研究ラボ」を設立しました。詳細は以下をご参照ください。

ISCC PLUS認証取得状況

当社は持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証を以下の製品で取得しています。今後も循環型社会の構築を目指してサステナビリティ特性を有する製品・サービスの提供を進めることで、社会や顧客からの期待に応えていきます。

  • ISCC(International Sustainability and Carbon Certification、国際持続可能性カーボン認証) PLUS認証
    ISCC認証は持続可能性および炭素に関する国際認証であり、その中でISCC PLUSは全世界に販売される主にバイオベースや再生由来等の原料や製品について、サプライチェーン上で管理・担保する認証制度です。
製品 製品名
アクリロニトリル(AN)
スチレンモノマー(SM)
シクロヘキサノール
シクロヘキサン
AH塩
アジピン酸
ヘキサメチレンジアミン
スチレンブタジエンゴム(SBR) 溶液重合スチレン・ブタジエンゴム 「タフデン™」
溶液重合スチレン・ブタジエンゴム 「アサプレン®」
ブタジエンゴム(BR) ポリブタジエンゴム 「ジエン™」
ポリブタジエンゴム 「アサプレン®」
熱可塑性エラストマー(TPE) スチレン系熱可塑性エラストマー 「タフプレン®」「アサプレン®T」
水添スチレン系熱可塑性エラストマー 「タフテック®」
水添スチレン系熱可塑性エラストマー 「S.O.E.®」
ポリエチレン(PE) 超高分子量ポリエチレン 「サンファイン™」
低密度ポリエチレン 「サンテックTM-LD」
エチレン-酢酸ビニル共重合体 「サンテックTM-EVA」
高密度ポリエチレン 「サンテックTM-HD」「クレオレックスTM」
ポリオキシメチレン(POM) ポリアセタール樹脂 「テナック™」
ポリフェニレンエーテル(PPE) PPE樹脂「ザイロン™」
ポリ塩化ビニリデン(PVDC) 食品包装用ラップフィルム「サランラップ®」