労働安全衛生および健康経営

方針

企業の活動がグローバルに展開されるようになる一方、社会の構造は大きく変化しています。高齢化の進展や雇用や働き方における大きな変化などです。こうした変化の中では、従業員の一人ひとりが満足感を持って能力や可能性を最大限に発揮できるよう、安全で快適な職場環境を作る取り組みが必要です。
旭化成グループでは従業員をかけがえのない存在と考えており、職場や作業現場における安全衛生の維持管理について、「あらゆる事業活動において、健康、保安防災、労働安全衛生、品質保証および環境保全を、経営の最重要課題と認識し、開発から廃棄に至る製品ライフサイクルすべてにわたり配慮する」との会社方針のもと、従業員との協働を通じた全社的な環境の整備に努めています。

労働災害防止活動

当社グループでは2020年度より、重篤労働災害の撲滅を図るため、「旭化成ライフセービング・アクション(LSA)」を定めて、グループ全体で展開を開始しました。守らないと命を失うおそれがある下記の4つの行動を「禁止行動」として制定し、事業活動のあらゆる局面で守ることの徹底を推進しています。

  • 可動部への近接作業の禁止 吊荷の下は立入禁止 安全帯なしでの高所作業は禁止 スピード違反禁止 運転中の携帯・スマホ禁止 シートベルト非着用での乗車禁止
    LSAの4つの禁止行動

また、従来の安全衛生活動※1にリスクアセスメント、PDCAマネジメントを導入した労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS※2)の運用により、労働災害防止活動を継続して推進しています。

  • 従来の安全衛生活動 リスクアセスメント PDCAマネジメント OHSMS 労働安全衛生マネジメントシステム
    安全活動との関連
  • ※1 従来の安全衛生活動 3S(整理・整頓・清掃)、HHK(ヒヤリ・ハット・気がかり)、危険予知、パトロール、事例検討等
  • ※2 OHSMS Occupational Health & Safety Management System

労働災害防止の進め方

1.潜在危険性の抽出

有効な労働災害防止対策を実施するには、職場の潜在危険性を漏れなく挙げることが必要です。そのためには、安全衛生活動に強制発想(トラブル想定)の視点を入れて、モノの不安全な状態(設備、有害物、騒音等物理的有害環境など)や人の不安全な作業行動、さらに、その組み合わせで発生する危険事象に対する災害想定を幅広く実施することが重要です。

2.リスク評価

抽出された職場の潜在危険性について、災害の重篤性と災害に遭遇する頻度との組み合わせから、リスク点数を算出し、優先順位を付けます。リスク点数の高い重大リスクから低減対策を実施します。

モノの不安全な状態 人の不安全な行動 強制発想 トラブル想定 従来の安全活動 3S、HHK、危険予知、パトロール、事例検討等→潜在危険性の抽出(災害想定)→リスク評価(重篤性・頻度によるリスク算出と優先順位付け)→重大リスク低減対策→本質安全化 安全防護→管理の手法 安全作業基準遵守活動労働災害防止の全体像

3.重大リスク低減対策

重大リスク低減対策としては、モノの不安全な状態を安全化する本質安全化(危険作業排除、自動化、トラブルゼロ化、安全な物質への転換など)と安全防護が極めて有効とされています。右表はその原則を示したものです(文献より引用)。
当社グループでは特に重大な災害に至りやすい、機械への挟まれ・巻き込まれ型災害の対策として、機械設備等の本質安全化と安全防護(隔離と停止)による対策を重点的に推進しています。

安全対策 安全性の達成度 1 本質安全化 100% 2 安全防護 80% 3 管理の手法 表示・警告等 20% 4 管理の手法 マニュアル・許可制等 20% 出典 : 中央労働災害防止協会(1999) 「職場のリスクアセスメントの実際」p.26安全対策構築の原則

本質安全化・安全防護対策

安全対策構築の原則に則って、設備の新設・変更・既存設備見直し・事故発生時の対策等として本質安全化と安全防護による対策を推進しています。

安全作業基準遵守活動

当社グループでは、安全作業基準の遵守活動にて安全の確保に努めています。具体的には、日々の業務での安全作業基準遵守状況をチェックするなど、工夫して実行しています。また、設備等の改善が難しい作業に関しては、特別管理作業と位置づけて作業者の力量確保や計画に基づく事前許可など厳重な管理のもとに作業を行っています。

  • 安全作業基準個別作業ではなく類似した複数の作業に共通する基本的事項を定めた安全原則。例えば、機械への挟まれ・巻き込まれ防止対策として運転中の露出部には手を出さないなど

労働災害情報の共有と活用

労働災害が発生した事業所では原因究明と再発防止対策を行います。当社グループ内ではすべての労働災害情報をデータベース化して共有し、安全教育や事例検討、類似災害防止などに活用しています。

労働災害発生状況

2021年度は国内グループ従業員では22件の休業災害が発生しました。発生した災害を事故の型で分類すると、近年、前述のライフセービング・アクション活動の対象である「墜落・転落」「挟まれ・巻き込まれ」「交通事故(道路)」の占める割合が減ってきている傾向があります。重大事故につながりやすい他の事故の型の労働災害の防止活動も推進していきます。

  • 休業災害22件 転倒40.9% 動作の反動・無理動作13.6% 有害物等との接触9.1% 激突9.1% 爆発4.5% 飛来・落下4.5% 墜落・転落4.5% 切れ・こすれ4.5% 高温・低温の物との接触4.5% 挟まれ・巻き込まれ4.5%
    休業災害事故の型(2021年度 国内)
  • 休業災害169件 転倒30.2% 交通事故(道路)14.2% 動作の反動・無理動作12.4% 墜落・転落8.3% 高温・低温の物との接触7.7% 機械挟まれ・巻き込まれ4.1% 挟まれ・巻き込まれ3.6% 激突4.7% 交通事故(その他)2.4% 飛来・落下3.0% 事故の型その他2.4% 分類不能1.8% 有害物等との接触2.4% 激突され0.6% 切れ・こすれ0.6% 火災・爆発1.8%
    休業災害事故の型(2012~2021年度 国内)
  • 旭化成グループ ’12年度0.16、’13年度0.40、’14年度0.20、’15年度0.30、’16年度0.35、’17年度0.30、’18年度0.41、’19年度0.44、’20年度0.21、’21年度0.38 化学工業 ’12年度0.85、’13年度0.82、’14年度0.76、’15年度0.81、’16年度0.88、’17年度0.81、’18年度0.90、’19年度0.94、’20年度0.93、’21年度1.07 製造業 ’12年度1.00、’13年度0.94、’14年度1.06、’15年度1.06、’16年度1.15、’17年度1.02、’18年度1.20、’19年度1.20、’20年度1.21、’21年度1.31、 ※ 旭化成グループは年度、化学工業と製造業は暦年 ※カバレッジ100%
    グループ休業度数率※1
  • 旭化成グループ ’12年度0.153、’13年度0.013、’14年度0.005、’15年度0.005、’16年度0.024、’17年度0.005、’18年度0.008、’19年度0.074、’20年度0.006、’21年度0.1333 化学工業 ’12年度0.12、’13年度0.12、’14年度0.17、’15年度0.04、’16年度0.03、’17年度0.09、’18年度0.06、’19年度0.02、’20年度0.03、’21年度0.02 製造業 ’12年度0.10、’13年度0.10、’14年度0.09、’15年度0.06、’16年度0.07、’17年度0.08、’18年度0.10、’19年度0.10、’20年度0.07 ’21年度0.06※ 旭化成グループは年度、化学工業と製造業は暦年 ※2012年度は転倒による後遺症災害、2019年度は機械巻き込まれによる後遺症災害、2021年度は爆発に伴う死亡災害が各1件発生し、強度率が高くなった。※カバレッジ100%
    グループ強度率※2
  • ※1 休業度数率 労働災害の発生率を表す安全指標の一つで、次の式で算出されます。[休業度数率=休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間]
    休業度数率0.1以下というのは、例えば、工場の従業員が100名であれば、50年間に1名しか休業災害を起こさないという、大変高い目標です。
  • ※2 強度率 労働災害の軽重を表す安全指標の一つで、次の式で算出されます。[強度率=労働損失日数÷延べ労働時間×1,000時間]

快適職場形成の改善活動

化学物質などの管理として、有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則・粉じん障害防止規則などが適用される単位作業場では、作業環境測定法に基づく測定を毎年実施しています。さらに、化学物質取り扱いにおけるリスクアセスメントも行い、化学物質に起因するリスクの把握と低減にも取り組んでいます。
また、騒音ならびに暑熱に関しては、作業環境測定データをベースに作業管理を行い、個人への負荷を下げる管理を実施しています。引き続き、設備改善対策や作業見直しなど快適な職場環境に向けた改善を進めています。

旭化成ホームズ 安全衛生活動

1. はじめに

旭化成ホームズは、LSA(ライフセービング・アクション)による重大災害の撲滅と安全意識の向上を目的とし、そのための「安全・快適現場の実現」に向けて、以下の4つの取り組みを行っています。

2‐1.吊り荷の下に入らない ~TSH活動~

ヘーベルハウスでは、鉄骨建て方工事の際にクレーンを使用します。トラックから鉄骨やヘーベル版を吊り上げて、敷地および足場内部へ搬入する際に、万が一の吊り荷落下に備え、『吊り荷の下には絶対に入らない(入らせない)』という活動です。

●無線機で作業者間のコミュニケーションを図る
通常はクレーンオペレーターと合図者(躯体工)のみが無線機を使用しますが、ドライバーや合図者以外の躯体工にも無線機(子機)を持たせ、円滑なコミュニケーションが図れるように改善し、吊り荷位置の認識を向上させました。

●「吊り荷進入!」の声掛けにより退避行動をとる
吊り荷が足場内に入る際に、オペレーター ⇒ 躯体工合図者(職長)が「吊り荷進入!」の声掛けをし、その時は作業員・ドライバー全員が一旦手を止めて吊り荷の経路を確認し、退避行動の徹底をしています。

  • 普段使いの無線 オペレーター 躯体工 ドライバー
  • 吊り荷入ります! カゴ返します! 了解!吊り荷来るよ! 退避します!

2‐2.熱中症撲滅への取り組み

近年、夏場の猛暑により熱中症対策は年々重要になってきています。熱中症は重症化すると非常に危険な災害となるため、3年前から、少しでも症状が出たらためらうことなく救急車を呼ぶように指導を行ってきました。
外部作業者への空調服支給や全現場にエアコンを設置するなど、具体的な対策に対して大きな投資を行った結果、下記グラフの示すように熱中症による災害が大きく減少しています。
また、高齢者のガードマンの熱中症が多く発生しているので、予防のため、必要人数に対して1名増員し、30分ごとに確実に休憩ができるように改善しました。

  • 2019年度31名、2020年度9名、2021年度4名
    熱中症発生数の推移(新築工事)
  • スポット冷暖房エアコン

    ・内部作業者の「作業環境整備」
    ・外部作業者の「休息所」

  • ◆空調服の支給

    ・外部作業者の「作業環境整備」
    ・着用義務化

2‐3.危険予知の強化 ~墜転落の撲滅~

一昨年、脚立からの墜転落事故が多く発生しましたが、再発防止に向け過去の発生事例を分析し、最も効果的な動き方を『脚立昇降時は体を手で支える』という合言葉とともに資料化し共有し、意識づけおよび確認・指導を行いました。その効果として昨年下期以降、脚立からの墜転落は0件となっています。他の課題においても同様の活動を開始し、確認・指導を行っています。

2‐4.リモートKY(危険予知) ~IT活用~

コロナ禍での現場管理の工夫点として、現場においてもタブレット等を活用してKYに参加できるようにしました。工事担当者が現場以外の場所からでも直接職方と対話し、現場状況に即した指示をすることが可能となりました。
先に紹介した、TSH活動や危険予知強化活動でも、このリモートKYをフル活用し、限られた時間の中で効果的に普及させる活動を行いました。

  • リモートKY

アスベスト問題への対応

当社ではアスベスト問題に対して、以下のように対応いたしました。

具体的な対応
工場を含む当社グループ所有建物の対応 当社グループが所有する工場を含む所有建物のアスベスト調査を実施し、「石綿障害予防規則」に基づいた除去、封じ込め、あるいは囲い込み等の対応を計画的に実施しました。
工場におけるジョイントシート類のアスベスト代替化 アスベストが使用されているジョイントシート類は、点検・整備等で開放するタイミングで順次、非アスベストタイプの部材への取り換えを行っています。
当社グループを退職された方の健康面への対応 当社グループでは石綿障害予防規則が適用される「アスベストを製造し、または取り扱う作業」はありませんが、当社グループの在職中に保全等で臨時的に石綿を取り扱った経験がある退職者の方から申し出があった場合は健康診断を受けていただくとともに、その後のフォローをしています。

旭化成グループ退職者の皆様へ

方針および推進体制

昨今、就労年齢の上昇、経営・社会環境の変化によるストレスの増加など、従業員の健康を巡る状況は大きく変わってきています。他方、旭化成グループが社会に向け、事業を通して価値提供をしていくためには、従業員の創造性と生産性が一段と発揮されることが必要となっています。
そこで、当社グループでは、これまでの環境安全・品質保証活動における健康管理を発展させ、健康に関する取り組みを全社経営課題と位置づけた「健康経営」を展開しています。「健康管理活動を基盤に、従業員の心身の健康保持増進への取り組みを推進・サポートし、個人の活力向上、組織の活性化による組織風土の改善を図る」ことを、健康経営方針として掲げました。
これまで、2020年1月に健康経営推進室を設置、同年4月付で健康経営担当役員・同補佐を設置し、同年10月に、「健康経営宣言」を発出しました。企業価値を持続的に向上させていく上で、従業員が心身共に健康で活躍できる環境を、会社として整備することがますます重要になってきています。同宣言において掲げた、「グループ健康経営ビジョン」に基づき、「健康経営」をさらに推進していきます。
2021年4月には、東京本社、支社のある宮崎県延岡市や静岡県富士市等、国内9つの主要拠点の産業保健スタッフが所属する健康管理センター等を、健康経営推進室の傘下とし、健康に関わる業務の標準化、全体最適化、拠点間の連携を強化しグループ共通課題に迅速に対応できる体制に移行し、これらの拠点において、健康経営をスタートしました。さらに、2022年4月からは、国内小規模事業所および関係会社においても、健康経営をスタートしました。
また、2024年までに健康経営をグローバル展開できるよう、準備を進めています。さらに、女性の健康保持・増進のための取り組みを強化するとともに、健康経営施策の効果発現やパフォーマンス向上の実感を得ることによる心身の健康だけでなく、次のステップとして、従業員が身体的、精神的、そして社会的にも良好で幸福な状態を目指す「ウェルビーイング経営」を推進していきます。

  • 「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

【健康経営宣言】

旭化成グループは、私たちの強みである「多様性と変革力」を武器に「持続可能な社会」の実現に貢献し、「企業価値の持続的向上」を追求しています。この実現には、「人財」がすべてだと考えます。
従業員が心身共に健康で、皆が活躍できる環境を会社として整備することが今後、ますます重要になっていきます。これまで展開してきた健康保持・増進の取り組みをさらに発展させた「健康経営」を、「グループ健康経営ビジョン」を掲げて推進することを宣言します。

2020年10月 旭化成株式会社 代表取締役社長

【グループ健康経営ビジョン】

旭化成グループは、「一人ひとりの活躍・成長」と「グループの生産性向上・発展」を通じて、さらに「持続可能な社会」の実現に貢献します。そのため会社は、従業員と家族が心身共に健康で、従業員の働きがいと生きがいを高めていきます。

健康経営の全体像

近年、当社グループでは、従業員の総休業日数の増加傾向等により、医療費や労働損失が増加しています。旭化成健康保険組合の保険給付費については、2017年度76億円から、やや増加し、2021年度は86億円でした。また、傷病等に起因する従業員の総休業日数については、2017年度に比べ、2021年度は18%の増加となりました。

当社グループでは、「従業員と家族の心身の健康保持・増進」を、健康経営の基盤と考えており、従業員の休業日数増加の原因となっているメンタルヘルス不調、がん、生活習慣病関連疾患等への対策を進めています。

2017年度76.1億円、2018年度75.9億円、2019年度81.3億円、2020年度76.0億円、2021年度86.2億円旭化成健康保険組合の保険給付費の推移

健康経営の目的である「一人ひとりの活躍・成長」「働きがい・生きがい向上」「活気あふれる強い組織風土づくり」に向けて、各施策・活動を進めることで、「グループの生産性向上・発展」を行い、“持続可能な社会への貢献” と “持続的な企業価値向上” の2つの「サステナビリティ」の好循環の実現に取り組んでいきます。

持続可能な社会への貢献・持続的な企業価値向上←(一人ひとりの活躍・成長←→働きがい・生きがい向上←→活気あふれる強い組織風土→グループ生産性向上・発展)←従業員と家族の心身健康保持・増進健康経営の全体像

健康経営目標

健康経営の目的達成のためには、「従業員の活躍・成長機会等の創出」「個人・組織活性化」が重要であると考えています。
「従業員の活躍・成長機会等の創出」のために、従業員の休業日数の削減を進めます。さらに、休業日数の削減だけでは、健康経営を進める上で不十分であると考え、「個人・組織活性化」を進めていきます。
また、生産性向上の観点からプレゼンティーズム※1の多くを占めていると言われている「睡眠」の質・量の向上にも取り組みます。
このようなことから、当社グループでは、①従業員の活躍・成長機会等の創出(休業率の改善=メンタルヘルス不調、生活習慣病重症者、メタボリックシンドローム該当者、がん、禁煙への対策)、②個人・組織活性化(ワーク・エンゲージメント※2の向上)、③睡眠の質・量向上を、主要な健康経営目標の項目に設定しました。

  • ※1プレゼンティーズム : 出勤しているが、心身の健康上の問題でパフォーマンスが上がらない状態。従業員の生産性を測るWHO-HPQを用いた経済産業省の研究等において、プレゼンティーズムが健康関連総コストの6~8割を占めるとの報告がある。
  • ※2ワーク・エンゲージメント : 仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、熱意・没頭・活力の3つの構成要素からなる。

①従業員の活躍・成長機会等の創出(休業率の改善)

2019年度
実績
2020年度
実績
2021年度
実績
2022年度
目標
2024年度
目標
(対2019年度実績)
メンタルヘルス不調による休業者率※1 0.91% 0.98% 1.00% 0.80% 0.64%
(30%低減)
生活習慣病重症者率※2 11.0% 11.0% 10.7% 9.9% 7.7%
(30%低減)
メタボリックシンドローム該当者率 11.1% 11.4% 11.0% 9.9% 7.8%
(30%低減)
がん1件あたりの休業日数 79.2日 68.1日 87.5日 67.3日 67.3日
(15%低減)
喫煙率 25.8% 24.7% 23.5% 20.7% 15.5%
(40%低減)
睡眠で休養が十分取れていない者の割合 32.4% 28.5% 27.2% 27.4% 22.7%
(30%低減)
  • ※1年度内で連続30日以上休業している人数の割合
  • ※2自社基準に基づき選定

②個人・組織活性化(ワーク・エンゲージメントの向上)

当社グループでは、毎年7月に、心の健康支援システム「e診断:職業性ストレス簡易診断システム(富士通株式会社)」を用いて、メンタル面の診断を実施しています。これは、従業員自身のストレス状況について気付きを促し、メンタルヘルス不調のリスクを低減させるために実施する、1次予防を目的とした取り組みです。また、職場に起因するストレス要因そのものを低減させていくことを目的に、「e診断」結果を職場単位で分析し、職場単位でストレス状況やその要因を把握し、職場環境改善活動も進めています。
さらに、設問が広範囲であった従業員意識調査よりも、各職場の「ワーク・エンゲージメント『熱意』『没頭』『活力』」の状況を、より詳細に分析、可視化することができる「KSA(活力と成長アセスメント)」を、2020年度に導入しました。「KSA」の分析結果を活用し、各職場の従業員同士が対話を行うことで、さらなるワーク・エンゲージメントの向上を目指していきます。
また、今後、各職場の「さらなる個人と組織の活性化」に向けた支援ツールとして、「e診断」と「KSA」の調査結果を総合的に活用できる仕組みを構築していきます。

③睡眠の質・量向上

プレゼンティーズムは、一般的に、健康関連総コストの 6 ~8 割を占め、医療費の数倍にもなっていると言われています。睡眠の質・量が、メンタルヘルス不調に続くプレゼンティーズムの大きな原因と考えられており、その改善のための施策を推進していきます。
具体的には、①睡眠の評価方法の確立、②十分に睡眠が取れていない従業員への対応方法の検討、③睡眠リテラシー向上に向けた教育研修を進めていきます。
また、「睡眠で休養が十分取れていない者の割合の低減」を、2022年度から健康経営目標における睡眠のKPIとして新たに設定しました。

具体的な取り組み

メンタルヘルスケアの推進

当社グループでは「メンタルヘルスケア・ガイドライン」に基づき、メンタルヘルスの「4つのケア」を充実させることにより、メンタルヘルス不調による休業者率低減に取り組んでいます。

  • ①「セルフケア」

    メンタルヘルス不調による休業要因は、多岐にわたり、かつ一つに特定できないことが多く、対応は簡単ではありません。その中で、休業要因が、どこにあるとしてもまず、従業員一人ひとりが、自らストレスの状態を把握、認識し、ストレスの予防、軽減策を講じることを支援していくことが、1次予防策として、重要であると考えています。
    ストレスやメンタルヘルスへの対処方法等への理解を促すため、新入社員、キャリア採用者を皮切りに、メンタルヘルスに関する研修を実施・強化していきます。今後は、広く従業員に教育を提供する必要があると考え、2022年度からはe-ラーニングを全国展開し、約1万名の従業員が受講しました。

  • ②「産業保健スタッフなどによるケア」

    心の健康支援システム「e診断」を運用し、個人のストレス調査と併せて、職場のストレス分析「健康いきいき判定」も行っています。
    また、東京本社および東京・大阪地区営業所において、異動者に対して、異動等による環境の変化があった後の生活や仕事への適応状況を確認し、不調の兆候がある従業員に対して早期に対応することで、重症化を予防することを目的に、「異動者健康アンケート」を開始しました。今後は、この取り組みを国内の主要製造拠点においても広く実施するために必要なマニュアルやツール等を整備し、全社へ展開を図ることで、異動に伴うメンタルヘルス不調の予防を推進していきます。

  • ③「ラインによるケア」

    「ラインによるケア」の一環として、健康いきいき判定シートの活用(延岡地区)、MIRRORを活用した職場改善(富士地区)等、各地区で職場環境の改善につなげています。また、水島地区にて、人事部門、産業保健スタッフ、労働組合とも連携しながら、「e診断」と「KSA」を総合活用したワークショップを2020年度に引き続き2021年度も実施しました。

    • MIRROR:職場環境改善ツール。望ましい職場の姿に関するチェックとディスカッションを行う。
  • ④「専門機関によるケア」

    メンタル疾患およびそれ以外の傷病により休業した人が、その後円滑に職場復帰できるように「リハビリ勤務制度」を設置しています。さらに各地区・事業所では、外部講師による研修やカウンセリングの導入などの「専門機関によるケア」の活動も実施しています。

  • ⑤メンタルヘルス不調休業者の直接要因および背景事象の分析

    メンタルヘルス不調による休業者数の低減を目的に、「休業者ストレス分類ツール」を活用して、休業に至った原因を産業保健スタッフの視点で、面談結果から直接の要因や背景について寄与割合を同ツールに入力し、その傾向や特徴を地区ごとに分析しています。また、各地区の結果を全社で集計し、職種や職階など多様な視点で分析し、全社で共有し、対策を講じています。

生活習慣病重症者、メタボリックシンドローム該当者への取り組み

当社グループでは、従業員の健康保持・増進のため、生活習慣病の予防および対策を推進しています。従来実施している特定保健指導「Asahiヘルスアッププログラム」の運用に加えて、従来よりも若年層から介入し、生活習慣病の発症、さらには重症化、合併症の発生を抑制することを目的に、2021年度から「スリムアップチャレンジ」企画をスタートさせ、特定保健指導よりも対象層を広げることにより、従来ではリーチの届かなかった層にも関与していくことで、生活習慣病の予防に役立てようとしています。

喫煙率低下への取り組み

従来、旭化成健康保険組合が企画、実施している禁煙参加企画「禁煙チャレンジ」に加え、それぞれの拠点ごとに、喫煙者に対する禁煙セミナー等のイベントを開催しています。さらに、受動喫煙問題に対応するため、喫煙所の削減や屋外化、就業時間内の全面禁煙などへ向けた取り組みを進めています。

健康経営戦略マップ

健康経営で解決したい経営上の課題に対して、健康経営の投資や施策により期待する効果や具体的な取り組みのつながりを把握し、健康経営を推進しています。これらの関係性を図解したものを整理しました。

<トピックス>

ウォーキングアプリ「&well」を活用した運動習慣の定着

生活習慣病重症者、メタボリックシンドローム該当者の低減に向け、定期的な運動習慣の定着を目的として、当社グループの東京本社および東京・大阪地区営業所においてウォーキングアプリ「&well」を、2020年度にトライアルで実施し、2021年度より正式導入しました。2020年度の参加者数は639名でしたが、2021年度には約2.7倍の1,725名までに増加しました。2021年10月に実施したチーム対抗戦後のアンケートにおいて、①回答者の92%が1日の平均歩数が増え、そのうち39%が1日あたり5,000歩以上増えた。②回答者の38%が「同僚・家族とのコミュニケーションが増えた」、「運動習慣がついた」と回答しています。このように、昨今の在宅勤務下においても、参加者の行動変容・健康意識の向上、コミュニケーションの活性化が確認でき、参加者の多くが好意的に捉えていることを踏まえ、2022年度からは2021年度にトライアルを実施していた主要製造拠点である富士地区、守山地区、水島地区にも導入しました。

  • 三井不動産が企画・運営

産業保健スタッフから、職場ごとに従業員の心身の状態を集団として可視化し、部場長に報告

当社グループの主要製造拠点である延岡地区、富士地区では、健康診断結果、生活習慣データ、傷病休業等のデータ等を、部場ごとに解析し、産業保健スタッフから、集団としての解析結果を、各職場の責任者に報告しています。これは、各職場の責任者が、自分の職場の従業員の心身の集団としての状態を、客観的に理解、課題を把握し、職場ごとの改善策を講じることを目的としています。

  • 新型コロナウイルス感染拡大前の取り組みの模様

睡眠プログラムのトライアル

当社グループの東京本社および東京・大阪地区営業所では、睡眠の質を改善し、仕事、普段の生活レベルの向上を目的に、睡眠プログラムのトライアルを実施しました。まず、東京本社および東京・⼤阪地区営業所の約5,000名に睡眠アンケートを実施し、その中から不眠の重症者を抽出し、面談を経て約80名が睡眠改善プログラムに参加しました。現在はそのプログラムの効果検証を行っており、2022年度の東京本社および東京・大阪地区営業所の活動計画策定、ならびに主要製造拠点でのトライアルおよび交代勤務者の睡眠状況の分析への展開を検討しています。また、睡眠に関する情報提供としてオンラインセミナーを開催しました。

健康管理・健康経営に関する教育について

当社グループでは、従業員の健康管理・健康経営のための知識・スキル習得を支援するために、各層の業務役割を踏まえたさまざまな教育を実施しています。

名称 形態 目的 2021年度
受講者数
(名)
新入社員研修 オンライン研修 社会人としての健康に関する基本的な考え方の理解、および必要な社内ルール等の習得 283
新任係長基礎研修 e-ラーニング 管理者としての健康管理の基本的な考え方の全体像および行動枠組み、ならびに責務の理解 305
技術系新任係長教育 オンライン研修 グループ内の安全現状の理解、および現場での安全の見つめ直し、ならびにグループ内での事故の教訓の継承 224
課長安全教育 オンライン研修 グループ内の安全現状の理解、および現場での安全の見つめ直し、ならびにグループ内での事故の教訓の継承 128
経営管理職研修 e-ラーニング 経営管理職として当社グループの健康経営の全体像および健康経営の重要性の習得 329

世界的な健康課題に対する取り組み

COVID-19の世界的感染拡大に伴う人工呼吸器の増産について

当社グループのZOLL Medical Corporation(以下「ZOLL社」)は、COVID-19の世界的感染拡大により、米国でも感染者の拡大を受けて人工呼吸器が不足するとの懸念が広がっていたこと、また、米政府の要請もあったことから、生産を増やして病院に迅速に届ける必要性が高いと判断し、生産数を現在の約25倍に相当する1万台/月にするために、自動体外式除細動器(AED)の生産ラインを一部人工呼吸器向けに転用することで、2020年3月より増産を開始しました。
ZOLL社の人工呼吸器は携帯型で、集中治療室(ICU)や救急車両などで使われており、最高クラスの性能を有する特殊フィルターがウイルスの拡散を防ぐため、患者さんのみならず治療する医療従事者などへの感染リスクの低減が期待できます。

新型コロナウイルスワクチンの職域接種の取り組みについて

当社グループは、パンデミックの早期収束を目指し、ワクチン接種の機会を提供するために、職域接種のプログラムを立ち上げ、ワクチン接種を希望する従業員・派遣社員およびその家族に対し、2021年8月から2021年10月において、初回および2回目を合わせて延べ約7,000名に対して、ワクチン接種を無料で実施しました。
さらに、初回、2回目、および3回目のワクチン接種について、外部業者に委託し、2021年7月から2022年5月において、ワクチン接種を希望する当社グループ従業員・派遣社員とその家族延べ約19,000名に対して、ワクチン接種を無料で実施しました。

職域接種会場

海外勤務者への健康管理の対応

当社グループではグローバル展開に伴う海外勤務者の増加に対し、健康管理を強化しています。
赴任期間により健康管理の状況は若干異なりますが、赴任前には、赴任前健康診断、予防接種の実施、新型インフルエンザのバンデミック等に備えてのタミフル(抗インフルエンザ薬)事前処方、赴任前健康教育を行い、赴任中も年1回健康診断、そして帰任後には、帰任後健康診断を行っています。
赴任中は、赴任半年後に産業医によるウェブ面談を実施しています。また、国内同様にe診断(ストレスチェック)の実施に加え、勤務者および希望される家族の方には、「健康調査票」を用いて自覚症状や現地での生活習慣、心身の健康状態、そして2020年に続いてCOVID-19の流行、ワクチン接種状況に関するアンケート調査を行い、調査結果および健診結果等をもとに、必要に応じてウェブを用いた産業医および保健師面談を実施しています。
また、パソコンへのアクセス時間をもとに長時間労働が疑われる海外勤務者に対しては、問診票の回答結果に応じてウェブを用いた産業医面談を実施しています。
さらに、海外勤務者には「健康便り FROM 東京」を定期的に配信しており、エリア別にまとめた「海外勤務者 健康診断結果および生活習慣問診結果」「健康情報」「駐在員へのインタビュー」などの情報提供を行っています。その他にも医療アシスタンス会社と連携し、現地医療機関への受診サポートや健康の悩みや困りごとに対して、健康相談を行っています。