佐川
就職活動で接した会社の中で、旭化成の社員が一番楽しそうに仕事をしていたのが印象的でした。学生時代から特許や知財に関わりたいと思っていたのですが、旭化成は当時の化学メーカーの中では珍しく、知財の専門職採用をしていたことが決め手になりました。
旭化成で活躍する若き開拓者たち(Trailblazers)の姿を紹介します。「知財とDX(デジタルトランスフォーメーション)の共創プロジェクト」を立ち上げ、自社のコア技術と世の中のエマージング技術をマッチングすることで新事業創出に貢献する3人に話を聞きました。
佐川
就職活動で接した会社の中で、旭化成の社員が一番楽しそうに仕事をしていたのが印象的でした。学生時代から特許や知財に関わりたいと思っていたのですが、旭化成は当時の化学メーカーの中では珍しく、知財の専門職採用をしていたことが決め手になりました。
笠井
最初は何をやっている会社か分かりにくいと思っていたものの、企業研究を進めるにつれて、おおらかな風土の中で、多様な技術を基に多岐にわたる事業を生み出している会社だと理解できました。この会社なら幅広い事業に携わって、何か面白いことができそうだという可能性を感じました。
高須
大学ではリチウムイオン二次電池の電極材料の研究をしていました。リチウムイオン二次電池といえば、2019年にノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰さん。教科書の1ページ目に登場するような憧れの研究者だったので、旭化成を志望しました。最終的には採用担当者と意気投合し、この会社だったら楽しく自分のやりたいことを実現できそうだと思えたので入社しました。
佐川
私は知財一筋のつもりだったのですが、新事業企画という全く違う部署を一度経験しました。東南アジアなど新興国でのビジネスの立ち上げです。それまでは研究現場で、個性あふれる研究者たちから特許になり得る発明や情報を聞き出すことに面白みを感じていましたが、新事業企画の仕事を通じて、新たな事業を起こすことの醍醐味も味わうことができました。
笠井
私の初任配属はエレクトロニクス部門です。開発・マーケティングを担当したことで、製品をつくってお客さまに届けるという一連のプロセスを経験しました。そして昨年、知財部門へ異動。これまで、一つの事業部門の中で働いていたのが、今は俯瞰的な視点を持ってさまざまな事業部門の人たちと関わることになり、新たなやりがいを感じています。
高須
最初は三重県鈴鹿市にある工場に配属になり、製造や研究開発を経験しました。新しい樹脂製品の開発に携わった際、入社3年目だった私にリーダーを任せてもらえたことが印象に残っています。今は全社のDXを推進する専門部署で、デジタルを活用した経営基盤強化や、サステナビリティー推進を担当しています。
佐川
このプロジェクトでは、旭化成のコア技術と世の中でこれから大きく立ち上がるであろう「エマージング技術」を、効率的にマッチングするシステムの開発に取り組んでいます。新事業創出を知財の視点から何かサポートできないかと、昨年基本コンセプトを考えました。上司や組織からの指示ではなく自分で手を挙げた企画なのですが、上司にも「それ、いいんじゃない」と背中を押してもらい、デジタル共創本部から「Garage(ガレージ)」を使ってみては、とアドバイスをもらったのがプロジェクト誕生のきっかけです。春ごろにはシステムの試行版をリリースする計画です。
高須
「Garage」とは、デジタル変革を加速させるための価値創出のアプローチです。もともとはIBMが開発したアプローチで、顧客が抱えている課題を洗い出して解決策を探る「デザイン思考」と、解決策を短期間で形にし改善を繰り返していく「アジャイル開発」が二本柱になっています。
笠井
最初は、私たちが求めるシステムの意義について、共通理解を得るのに時間がかかりました。作り手である知財部門の強い思いがあり、そこにデジタル部門の人たちにユーザー視点で客観的なメスを入れてもらったのですが、意見が食い違うことも少なくありませんでした。でも今は、同じベクトルで進めるようになったので、スムーズに進んでいると感じています。
高須
この新システムがきっかけとなり、将来の旭化成の柱となる事業が生まれる瞬間に立ち会うことができたら、開発者冥利に尽きますね。過去からの延長線上にある事業の成長だけではなく、飛び地的な事業を生み出せる可能性が、このシステムにはあると思います。
佐川
旭化成という会社は、多角化した事業の中で、それぞれの人がそれぞれの思いを持ち、さまざまな仕事に取り組んでいます。これはいいところでもありますが、ともすれば知らないうちに重複した進め方をしていることもあるかもしれません。開発中のシステムでは、何万もの人が同時にアクセスできる「見える化」されたデジタルプラットフォーム上で、議論ができるようになります。非効率を無くし、新しいものを生み出しやすくなるのです。
高須
旭化成は、中期経営計画で具体的なデジタル部門の数値目標を示し、いかに利益貢献につながるかを考えています。今はデジタル創造期。知財に代表される無形資産の価値化を目指します。私個人もいずれ事業部門に戻り、デジタルの知見を生かして、より直接的に利益につながる仕事をしていきたいと思っています。
笠井
知財情報の活用をより広義に捉えながら、今回のプロジェクトのように、自分からどんどん仕事を見いだしていくことがますます重要になってくるでしょう。将来的にはどの部門に行っても、知財の知見を生かし自分なりの貢献を模索していきたいですね。
高須
先が読めない世の中をデジタルの力で何か見通せるようにできないか——。そういった内容の相談が、事業部門からよくあります。例えば営業・生産活動のデータから今期の営業損益をあらかじめ予測するなど、蓄積されているデータとAI(人工知能)を活用して、経営を変革する仕事をしてみたいです。
笠井
開発中のシステムを将来どう進化させるか、挑戦し続けたいと思っています。新事業が生み出しやすくなるように企業風土から変革していくという、壮大な挑戦になるかもしれません。
佐川
今、日本企業は元気がないと言われますが、知財を含む、目に見えない資産の活用がもっと進めば、変わっていけるのではないかと考えています。そういった無形資産の活用でも旭化成が先陣を切れるように、今回のプロジェクトをはじめ足元で着実に結果を積み重ねていきたいです。
高須
風通しが良く、社長や役員も「さん付け」で呼ぶ文化に代表されるように、上下の壁がないことが一つの特徴だと思います。加えて最近は、各部署を横断する横の風通しもどんどん良くなっていると感じます。
佐川
まさにこのプロジェクトも横の風を通していこうとするものですね。
笠井
やりたい仕事を本気で主張すれば認めてもらえる土壌があるので、主体的にやりたいことを見いだして進んでいきたいと考えている人には、チャンスが多いですね。
高須
私は色々な事業部門で仕事をしたいと思っているので、社内転職のように、さまざまな事業や職種に挑戦できる旭化成の事業領域ならではの良さを感じています。
佐川
旭化成は、知財情報の活用で日本のトップランナーだと自負しています。同時に、デジタル領域の進化もスピード感を持って進んでいる。この二つの融合が、私たちのプロジェクトです。まさに旭化成のグループバリューの一つ、「挑戦」を体現しています。会社の変革に貢献することを目指していますので、ぜひ結果にも注目してください。